近年、子どもの視力低下が問題となっています。スマートフォンやタブレットを見る時間の増加、外遊びの減少など、生活環境の変化が視力低下に関係すると言われています。
本記事では、子どもの視力が低下する原因や家庭でできる対策について解説します。子どもの視力低下を防ぎたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
まずは、子どもの視力低下の現状を見ていきましょう。
文部科学省の「令和7年度学校保健統計」によると、視力1.0未満の小中学生の割合は過去最多となっています。令和7年度では小学生が36.07%、中学生は59.35%となっており、小学生では約3人に1人以上、中学生では半数を超える高い水準です。
また、高校生では71.51%に達しており、学校段階が進むにつれて視力1.0未満の割合が高くなる傾向が見られます。
この結果から、子どもの視力低下は幅広い年代で深刻化していることが分かります。
近年は学校でもタブレット学習が広まり、授業中に画面を見ながら調べ学習や撮影を行う機会が増えています。
背景には、2020年度から本格的に始まった国主導の教育改革である「GIGAスクール構想」があります。
GIGAスクール構想では、以下のような目的を掲げています。
1人1台端末や高速大容量の通信ネットワーク等の学校ICT環境を整備・活用することによって、教育の質を向上させ、全ての子供たちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現することを目的としております。
※引用:文部科学省「GIGAスクール構想について」
ですがその半面、学習のデジタル化に伴う「視力への影響」が課題となっています。
文部科学省の「デジタル教科書・教材活用における課題と対応」によると、教科書を見る際の距離が約31cmだったのに対し、iPadで調べ学習をする際は約24cm、動画を撮影する際は約20cmでした。タブレットを使用する授業では、教科書を使うときよりも目と画面の距離が近くなる傾向が示されています。
手元などの近い距離を長時間見続ける作業のことを「近業」と言い、近視の発症や進行の要因になります。学校でタブレットを使う機会が増えたことで「近業」の割合が増加し、子どもの目に負担がかかる場面が増えていると考えられます。

次に、子どもの視力が低下する主な原因を紹介します。
前述した通りスマホやタブレットは「近業」になりやすいツールです。加えて動画視聴やゲームは区切りをつけにくく、近業の時間が長くなりがちです。
多くの家庭で「1日〇時間まで」などの対策が行われています。
しかし、親が常に見続けることは現実的に困難です。ルールを作っても徹底しきれない「家庭での管理の限界」が、子どもの視力低下に拍車をかけています。
外遊びの減少も、子どもの視力低下の原因の一つです。屋外で過ごす時間が短い子どもは、近視を発症する可能性が高いとされています。
近視になる主な原因は「目のピントを合わせる機能が崩れ、眼球が前後に伸びてしまうこと」にあります。
屋外は、明るい光を目に取り込むことが可能な環境であり、この環境には、先ほどお伝えした「眼球の伸び」を抑える働きがあります。
こういった理由から、外遊びが近視予防につながると考えられています。
また、慶應義塾大学医学部眼科の研究によると、太陽光には近視の進行抑制に関わるとされる「バイオレットライト」と呼ばれる波長360〜400nmの光も含まれており、この光を浴びることで眼球の伸びを抑えられる可能性が報告されています。
逆に、屋内の窓ガラスの多くはUVカット加工によってこの光を通しにくいため、日当たりの良い室内にいても、十分なバイオレットライトを浴びることができません。
そのため、近視予防には「屋外に出て直接光を浴びること」そのものが重要とされています。
読書や勉強中に姿勢が悪くなると、本やノートと目の距離が短くなります。この「近距離を見続ける状態」が、近視を進行させる要因になります。
子どもの姿勢が悪くなる主な要因として、以下のような環境が挙げられます。
・机や椅子の高さが子どもの体格に合っていない
・手元の明るさが足りない
・長時間の学習による疲れ
こうした要因を放置してしまうと、近い場所にピントを合わせる時間が長くなります。
結果として、子どもの視力低下に影響を及ぼす可能性があります。
近視は学力や運動能力に影響することがあります。ここからは、近視の進行が子どもにもたらす悪影響を紹介します。
近視が進むと、教室の黒板やスクリーンに映された文字が見えづらくなります。結果、無理に見ようとして目を細めたり前のめりになったりします。ですが、こうした不自然な姿勢は、目の疲れや頭痛を引き起こすだけでなく、「板書の書き写しが遅れる」「問題を読み間違える」といった学習面でのマイナスにも直結します。
見えないストレスは授業への集中力にも悪影響を及ぼし、学力低下の要因になり得ます。
遠くが見えにくい状態は、運動にも悪い影響があります。例えば、サッカーや野球などの球技では、飛んでくるボールに気づくのが遅れたり、チームメンバーとの距離を判断しにくくなったりすることがあります。
日常生活においても、不便なシーンが多く、ケガのリスクも考えられます。
例えば、以下のようなシーンがあります。
・段差や障害物に気づけない
・壁掛け時計の時間が読めない
・探し物をすぐに見つけられない
また、子どもは目が悪くなったことを自分から伝えないケースがある点にも、注意が必要です。
例えば小さい子どもは、自分の見え方が悪くなっていることに気づかない場合があります。
ぼやけた状態を普通と思い込んでいて、何も言い出さないため発見が遅れてしまいます。
近視そのものが必ずケガにつながるわけではありませんが、見えにくい状態のまま放置するのはNGです。
日頃から見えづらそうにしていないか観察し、気づいてあげることが大切です 。
子どもの近視の多くは、眼球が前後方向に伸びることで起こります。この眼球の伸びが過剰に進行し、眼球が著しく変形してしまった状態を「病的近視」と呼びます。
一般的な近視なら、メガネやコンタクトレンズで視力を補うことができます。しかし、病的近視になると、メガネをかけても十分な視力が出せなくなってしまいます。
また、網膜や視神経に負担がかかり、将来さまざまな眼疾患を発症するリスクも高まります。
日本眼科医会「気をつけよう!子どもの近視」によると、近視がない場合と比較すると、弱い近視でも緑内障のリスクは約4倍、網膜剥離のリスクは約3倍になるとされています。近視の程度が強くなるほど、緑内障や網膜剥離、近視性黄斑症などのリスクもさらに高まります。
なお、一般的な近視が進行しても、必ず病的近視になるわけではありません。ですが、「メガネで補えるから問題ない」と楽観視するのはNGです。目の健康を守るために、近視の進行(眼球の変形)を食い止めるケアが不可欠です。

最後に、家庭でできる視力低下への対策を紹介します。
子どもの近視を予防するには、外で過ごす時間を増やすことが大切です。屋外活動には近視の発症を予防する効果があり、1日2時間程度確保することが望ましいとされています。
登下校や休み時間、公園遊び、散歩などを組み合わせ、1日の合計で2時間を目指しましょう。運動が苦手な子どもでも、庭やベランダで過ごしたりすることで屋外時間を増やせます。
また、近視予防のために強い直射日光を浴びる必要はなく、木陰や建物の影で問題ありません。日差しが強い時期は、熱中症や紫外線にも配慮するようにしましょう。
スマートフォンやタブレットについて、文部科学省は近視を防ぐために、以下のような対策を進めています。
・端末の画面を長時間見続けない
・30分に1回は20秒以上画面から目を離す
・できるだけ遠くを見る
連続して使用する時間を短くすることで、近くにピントを合わせ続ける状態を減らせます。子どもだけに使用を制限するのではなく、家族で共通のルールを設けましょう。
例えば、以下のようなルールになります。
・食事中は使わない
・〇時以降は使わない
・ベッドや布団の中には持ち込まない
動画やゲームは区切りをつけにくいため、タイマーの活用がおすすめです。
無理にハードルを上げず、「これならうちでもできそう」 と思ったものから取り入れてみてください。
読書や勉強、タブレット学習をするときは、部屋と手元の明るさを十分に確保しましょう。周囲が暗いと文字や画面が見えにくくなり、視力低下の原因になります。
既存の照明だけでは手元が暗い場合は、デスクライトを併用しましょう。照明でタブレットの画面が見にくい場合は、画面の角度や机の位置で調整してみてください。
また、明るい画面を暗い部屋で見ると、周囲との明るさの差が大きくなります。画面の明るさは、使用する部屋の明るさに合わせて調整し、目への刺激を抑えてあげましょう。
本やノート、デジタル端末を見るときは、目との間を30cm以上離すようにしましょう。距離が近いほど目への負担は大きくなります。
タブレットは手に持ったまま使用すると距離が近くなりやすいため、机やスタンドを使って、適切な距離を保ってください。文字が小さくて見えにくい場合は、顔を近づけるのではなく、画面の文字サイズを大きくしましょう。
また、机や椅子が子どもの体格に合っていないと、前かがみになりやすく、本や画面との距離も近くなります。成長に合わせて机と椅子の高さを調整し、無理なく正しい姿勢を保てる環境を整えることが重要です。
子どもの視力低下には、教育の在り方や、外遊びの減少といった事象が関係しています。
近視が進むと授業や運動に影響するだけでなく、将来の眼疾患リスクが高まる可能性もありますので、兆候がないか観察してあげましょう。
対策はシンプルで、外で過ごす時間を増やし、デジタル端末の使用時間や休憩のルールを決めることが大切です。机や椅子、照明などに配慮し、子どもの目に負担にならないような環境を整えていきましょう。