探究学習とは、子どもが自分で課題を見つけ、調べた情報を整理して、自分なりの考えを表現する教育方法です。主体性や問題解決力をはじめ、様々な力を育む効果が期待されています。
この記事では、探究学習の意味や子どもに身につく力、学習を進める4つのステップを紹介します。子どもの学習のサポートに、ぜひご活用ください。
まずは、探究学習の意味と目的を確認していきましょう。
・意味:自ら課題を見つけて解決する学習方法
探究学習とは、実生活や社会の中から課題を見つけ、情報を集めて考え、自分なりの答えを見つけて発表する学びです。
小中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」を中心に、探究学習が導入されています。
・予測困難な社会を生き抜く「生きる力」を育む(目的)
学校で探究学習が重視されている目的は、「正解のない問題に対し、自分で考えて解決する力」を育てることです。
変化の激しい現代社会において、暗記中心の受け身の学びではなく、「自分で考えて論理的に伝える力」を身につけることが狙いとされています。
<探究学習の例>
子どもが「なぜ、セミの種類によって鳴き方が違うの?」と疑問を持った場合
調べる方法や、集めた情報を整理する過程にも、多くの学びがあります。これにより、社会に出てからも役立つ力を得ることに繋がるでしょう。

探究学習が教育現場で注目される背景には、「学習指導要領の改訂」と、「将来を予測しにくい社会への変化」があります。
現在の学習指導要領では、小・中学校に「総合的な学習の時間」が設けられています。高校では「総合的な探究の時間」となり、すべての生徒が履修する扱いです。
学習指導要領では、変化の多い社会情勢を踏まえて、知識に加えて、思考力・判断力・表現力などを育てる教育が重視されています。
「総合的な学習(探究)の時間」以外にも、国語や数学などの授業に探究学習が取り入れられています。
上記のように、子どもが自ら問いを立てて学ぶ探究学習への関心は高まっていると言えます。
現代は、情報化やグローバル化が進み、社会の変化も速くなっています。また、新型コロナウイルスが流行した時のように、生活や常識が大きく変わる場合もあります。
今後も上記のような予測不能な変化は起こりえます。このような、将来を見通しにくい状況を表す言葉が「VUCA(ブーカ)」です。
VUCAは、次の4つの英単語の頭文字からつくられています。
予測が難しい社会において、「AI」は情報を整理し、答えを示してくれる心強い味方です。ですが、VUCAで表されるような複雑な社会課題では、正解が一つとは限りません。
決まった正解がない課題に対して、「何を課題として捉え」「異なる意見をどうまとめるか」は、人が考える必要があります。
探究学習では、自分で問いを立て、情報を見極めながら協力して解決策を考えます。変化に合わせて柔軟に考え、行動する力を育てるうえでも期待されています。
ここでは、探究学習を通じて身につく代表的な力を3つ紹介します。
探究学習では「なぜ?」「どうして?」と感じた疑問から、自分で考えて行動する主体性が育まれます。
<主体性が働く場面>
上記の例を見ればわかるように、うまくいかなかった経験にも意味があります。結果を踏まえて柔軟に対応しようとすることで、次の行動を自分で考える練習になるでしょう。
探究学習では、集めた情報から、「課題の解決に役立つ情報」を取捨選択し、整理する力も身につきます。
<情報を分析するときの取り組み>
「情報は多く集めれば良い」というわけではなく、課題に関係する情報を選び、事実と意見を分けながら考える視点が大切です。
複数の情報を比べることで、自分の仮説が合っているかを確かめたり、新しい可能性に気づいたりできます。こうした経験が、根拠をもとに課題の解決方法を考える力につながります。
探究学習では、調べた内容と自分の考えを、相手に伝わる形へ整える表現力も養われます。
<表現するときの取り組み>
例えば、数字の変化はグラフ、場所の違いは地図で示すと、調査結果が伝わりやすくなります。
また、発表後の質問や感想は、自分の考えを見直すきっかけにもなります。人前で発表する経験を通して、どうしたら相手に伝わりやすいかを考える機会にもつながります。

ここからは、探究学習を進める4つのステップを、それぞれ解説します。
まずは、子どもの興味や気づきから、探究する課題を決めます。身近な疑問をそのまま課題にしてもよいですが、テーマが広すぎる場合は、対象や条件を絞ると調べやすくなります。
課題を設定するときは、次の順番で整理してみましょう。
例えば以下のようになります。
① 分野の確認:昆虫について知りたい
②:不思議のピックアップ:あれ?こっちには向こうと違う虫がいる
③:問いへの変換:同じ公園でも、場所によって見つかる昆虫が違うのはなぜ?
上記のように具体化すると、調べる内容が見えやすくなります。
課題が思いつかないときは、子どもの好きな遊びや、登下校中に見かけるものから広げてみましょう。毎日の生活で感じた小さな疑問も、探究学習の入り口になります。
課題が決まったら、まずは自分なりの予想(仮説)を立ててみましょう。
そのうえで、答えを確かめるために必要な情報を集めていきます。
主な情報源は、次の通りです。
観察や質問で自分が直接集めた情報と、本やインターネットなどから得た情報を組み合わせることで、「自分で確かめた事実」と、「広く知られている知識」を結びつけて考えやすくなります。
集めた情報は、課題との関係が見えるように整理し、共通点や違いを分析します。
情報を整理・分析する方法の例は、次の通りです。
もし、予想と異なる結果が出ても、なぜ違ったかを考えるようにしましょう。
新しい問いや、追加で調べたい内容の発見につながります。
最後は、問いに対する自分なりの答えをまとめて伝えます。
その際、ただ結論を伝えるのではなく、結論に至った根拠・調べた方法・まだ分からない点といった情報をあわせて示しましょう。
「自ら課題を見つけて解決する」という一連の探究学習が形になり、子どもにとって確かな学びになります。
伝える際の表現方法は、発表の方法や内容に合わせて選びましょう。主な表現方法と向いている場面は、次の通りです。
発表後に受けた質問や感想は、まとめて記録しておきましょう。説明が足りない部分や別の見方に気づく場合もあります。そこで生まれた疑問を新しい課題にすると、次の探究へつながっていきます。
ここからは、家庭で取り入れやすいサポート方法を紹介します。
子どもが口にする「なぜ?」は、探究学習のきっかけになります。興味を持った内容を一緒に調べたり、身近な物を使って簡単な実験をしたりすると、理解を深めやすくなります。
「どうしてそう思ったの?」「どうやって調べられそうかな?」と問いかけるのもおすすめです。子どもの考えを否定せずに聞くと、次に試してみたい方法を思いつく場合があります。
興味の持ち方や集中できる時間は、子どもによって異なります。途中でやめても責めず、また気になったときに再開するくらいの気持ちで見守るとよいでしょう。
子どもに質問されたときは、すぐに答えを伝えず、考える時間をつくってみましょう。
ただ、「自分で考えて」と任せるだけでは、どこから考えればよいのか迷う場合があります。「どこを見たら違いが分かりそう?」「本で調べる?観察してみる?」など声をかけて、考える視点や選択肢を示すと、子どもが次の行動を選びやすくなります。
子どもが困っているときは、答えの一部をヒントとして伝えても問題ありません。様子を見ながら手助けする方法も、探究学習を支える大切な関わりです。
また、「面白い考えだね」「自分で考えられたね」など、自分で考える過程を認めることで、間違えることへの不安が和らぎやすくなります。
自分で問いを立てて分析から表現までを行う探究学習は、変化が激しい昨今において、必要なスキルを育てることに適しています。
単なる学校のカリキュラムではなく、AIには代われない「思考力」や「主体性」を育むためにも重要なプロセスと言えるでしょう。
家庭でも、子どもの「なぜ?」のサインを見逃さず、一緒に考え、サポートしてあげましょう。
無理に大人の答えへ導かず、子どもの興味や学ぶペースを尊重し、その子に合った方法で一緒に探究を楽しみながら、成長を支えていきましょう。