絶対音感とは、聞こえた音の高さを、他の音と比べずに「ド」「レ」「ミ」などの音名で判断できる能力です。訓練を通して身に着けられますが、年齢や練習内容、個人差によって習得のしやすさは異なります。
この記事では、絶対音感の訓練を始める年齢や、家庭で取り入れられる練習方法について解説します。
まずは、絶対音感と相対音感の違いを整理しましょう。
絶対音感とは、聞こえた音を他の音と比べずに、音名を判断できる能力です。
音名がすぐに分かるため、聞いたメロディを楽譜に書き取ったり、楽器で再現する「耳コピ」をしたりする際に役立ちます。中には、楽器で確かめずに「ミの音を歌って」と言われたら、ミの音を正しく歌える人もいるほどです。
なお、絶対音感には個人差があり、例えば次のような違いがあります。
相対音感は、音同士の高さの関係を捉える能力です。基準の音から、どれくらい高い・低いの差があるかを聞き取ります。
例えば、カラオケでキー(高さ)を変えると曲全体の高さが変わります。ですが、メロディは「同じ音程の差」で動きます。
このように、音程の関係を捉えるときに働くのが、相対音感です。
相対音感は、自分の歌いやすい高さで歌ったり、合唱で他の人の声や伴奏を聴いて、音程を合わせたりする際に役立ちます。
絶対音感を持つ人の中には、相対音感もあわせ持ち、場面に応じて両方の力を使う人もいます。それぞれに役割があるため、絶対音感を育てる際も、「音同士の関係」を聞き取る経験を大切にするとよいでしょう。

絶対音感の習得には、幼い時期の音楽経験が深く関わるとされています。背景にあるのが「臨界期」の考え方で、特定の能力を身につけるうえで、経験の影響を受けやすい時期を指す言葉です。
ここでは、幼児期と小学校入学後に分けて、それぞれの時期に身につきやすい音感を紹介します。
2〜6歳頃の幼児期は、絶対音感を育てる取り組みを始める目安となる時期です。幼い頃から音楽を学び始めた人ほど、絶対音感を持つ割合が高い傾向が見られています。
習得を目指すならこの時期から音楽に親しむ環境をつくるとよいでしょう。
ただし、身につきやすい時期や到達度には個人差があります。年齢だけを見て急がず、まずは「1日5分だけゲーム感覚で音当てを取り入れる」など、子どもが嫌がらずに楽しめるペースで進めることが大切です。
7歳以降は、音同士の高さの関係を捉える相対音感を、学習の軸にするのがおすすめです。絶対音感は幼児期の経験との結びつきが強い一方、相対音感は7歳以降も音楽の学習を通して伸ばしていけます。
相対音感では、基準となる音からどれくらい離れているかを捉えます。歌や演奏の経験を通じてメロディや和音への理解が深まるため、学校での合唱や合奏など、周りと音を合わせる場面でも役立つ力です。
小学校に入ってから音楽を始める場合も、音感を育てる機会は十分にあります。今の子どもが持っている力を活かしながら、音楽の経験を積んでいきましょう。
ここからは、家庭で取り入れやすい、音感を鍛えるための練習方法を紹介します。
ピアノやキーボードは、音当てクイズに使いやすい楽器です。
まずは、2〜3音程度の少ない音から、音の高さと音名を一緒に確認してみましょう。
<音当てクイズの進め方の例>
①「ド・ミ・ソ」の音を一つずつ鳴らし、それぞれの音名を伝える
②子どもから鍵盤が見えない位置で、どれか一つの音を鳴らす
③答えを聞き、同じ音をもう一度鳴らして音名を確かめる
④出題の順番を変えて繰り返す
子どもが迷っているときは、「これはドだね」と保護者から音名を伝えましょう。間違えた場合も「今の音はミだね。もう一度聞いてみよう」と誘ってみてください。
言葉で答える以外にも、子どもに合わせていろいろな方法を試してみましょう。
「座る・立つ」のように音の高さを体の動きで表すと、高い音と低い音の違いをイメージしやすくなります。また、子どもの動きに合わせて、保護者が「ドー」「ソー」などと音名を添えると、より覚えやすくなります。
慣れてきたら、次のようにアレンジしてレベルアップしてみましょう。
練習は、1回数分程度から始め、子どもが飽きたり嫌がったりしたら切り上げましょう。時間や問題数にこだわりすぎず、親子で音を楽しむ機会を少しずつ重ねることが大切です。
家電の短いメロディや、普段から歌っている童謡を使って、親子で音をまねしてみましょう。
<身近な音をまねする遊び>
家電のメロディやチャイムが聞こえたら、一緒にまねをしてみましょう。まずは「ピンポン」など、聞こえたままに声に出してみます。
ピアノやキーボードで似た高さの音を探し、同じ高さの音を見つけられたら、音名を確かめてドレミでも歌ってみるのもおすすめです。
音名が分からなくても、「最後の音が低くなったね」と気づいたことを伝え合うだけで楽しめます。生活音には高さがはっきりしないものもあるため、正解探しにとらわれず、音への関心を育てることを大切にしましょう。
<童謡をドレミで歌う遊び>
子どもが好きな童謡を、ドレミで歌ってみるのもおすすめです。
ここでは、「かえるの合唱」と「チューリップ」の2曲を紹介します。どちらも、ピアノの「ド」から始める場合の音名です。「ー」は、前の音を伸ばす目安として使っています。
▶かえるの合唱
ドレミファ ミレドー
ミファソラ ソファミ―
ドー ドー ドー ドー
ドドレレミミファファ ミレドー
▶チューリップ
ドレミ― ドレミー ソミレド レミレー
ドレミー ドレミー ソミレド レミドー
ソソミソ ララソー ミミレレ ドー
楽器に合わせて保護者がドレミで歌い、子どもにまねしてもらったり、一緒に歌ってみましょう。この時期は「間違えずに歌うこと」や「最後まで歌うこと」を意識する必要はありません。まずは「ドレミで歌うとおもしろい」と感じてもらうことを優先しましょう。
アプリや動画は、楽器を用意しにくい家庭でも音当ての練習に使えます。保護者が内容を確認し、子どもに合うものを選びましょう。
<アプリや動画を選ぶポイント>
<親子で活用するポイント>
動画は、問題の音が鳴ったところで一時停止し、子どもと一緒に考えてみましょう。答えを聞いてから続きを再生し、音名を一緒に確かめます。同じ問題に慣れてきたら、別の問題も試してみてください。
アプリや動画は、子どもが「もっと続けたい」と夢中になってしまうことがあります。始める前に「今日はこの問題まで」「時計の長い針が12まで」と区切りを決めておくのがおすすめです。無理なく楽しめる範囲で続けましょう。

ここでは、絶対音感を習得するメリットと注意点を紹介します。
楽器の上達には、細かな音を聞き分ける力が欠かせません。特に、ヴァイオリンや管楽器、歌などで音程をそろえる際は「自分が演奏する音が、正しい音程か」を意識する必要があります。
絶対音感があればこれが感覚的にできるため、上達が早くなるというメリットがあります。
また、絶対音感は聞いた曲を楽器で再現する「耳コピ」にも役立ちます。メロディを音名で捉えられると、楽譜がなくても自分の好きな曲を演奏できるので、より楽器や音楽の楽しさを味わえます。
絶対音感を持つ人の中には、家電のメロディやチャイムなどを聞くと、自然にドレミの音名が浮かぶ人もいます。音に意識が向き、ほかのことをしていても気になってしまう場合があります。
子どもが「音が気になる」と相談してきたときは、どんな音や場面で感じるのか聞いてみてください。
日常の音がドレミで聞こえるのは、耳が育っている証拠でもあるため、音のストレスを取り除きつつ、自分のペースで音楽を楽しめるようサポートしてあげましょう。
せっかく子どもが音楽に触れるなら、少しでも楽しんでほしいものですよね。「上手にできる」「できる範囲が増える」のような点で絶対音感はおすすめできる能力です。
無理に習得を目指す必要はありませんが、「音楽を好きになってほしい」という気持ちを大切にしながら、関わり方を考えてみましょう。
ただし、記事でお伝えした通り身につきやすい目安となる年齢は2~6歳、まだ小さい子供です。
嫌がるときは無理強いせずに、音楽を好きなまま楽しめるペースで進めていけるといいですね。