「カナヅチ」を卒業!子どもが水への恐怖をなくし泳げるようになる方法

小学校に入ると水泳の授業が始まります。
「そのときに、うちの子だけ泳げなかったらどうしよう…」と心配になる保護者の方も多いのではないでしょうか。
実際、顔に水をつけるのが怖かったり、泳げないことが恥ずかしくて泣いてしまったりと
「カナヅチ」に悩む子は少なくありません。
でも安心してください。
水への恐怖心を少しずつ取り除いていけば、いつかは泳げるようになります。
本記事では「泳げるようになる」だけでなく、「水泳を楽しめるようになる」ための方法も紹介します。
「カナヅチ」になってしまう3つの原因
カナヅチになってしまう主な原因には3つあります。
ここでは、それぞれ詳しく解説します。
水に顔をつけることへの恐怖心
水に対して強い恐怖心があると、子どもはプールや海に入ることが難しくなってしまいます。
水に対する恐怖心を持つのは、不思議なことではありません。
人間は陸で生活する動物なので、犬や猫と同じように「水は怖いもの」と本能的に感じてしまうのです。
ただし、小さい頃からプールや海、川などで遊びながら水に触れていくと、その恐怖心は少しずつ薄れていきます。
逆に水に触れる機会が少なかったり、顔に水がかかってむせた・溺れかけたといった経験をしてしまうと、「水=怖い」という感覚が残ってしまうのです。
こうした恐怖心が強い子どもは、プールに入っただけでパニックになりやすく、顔や口を水面から出そうと必死になります。
その結果、体に力が入りすぎて浮力をうまく活かせず足から沈んでしまいます。
このような理由から、楽しい遊びを通じて「水は怖くない」と感じていくことが大切です。
上手に浮けないと思い込んでいる
実際は泳げるのに、「上手に浮けない」と思い込んでいることにより、泳ぐことを避けている子供もいます。
過去に溺れかけた経験や、泳げなくて友達に笑われた経験があると、
「自分は浮くこともできない」と決めつけてしまうのです。
しかし、実際には人間の体は水との比重がほぼ同じであり、息を大きく吸って体をリラックスさせれば、自然と浮くことができます。
つまり「浮けない子ども」はほとんどいません。
子どものカナヅチを直してあげるために大切なのは、「できない」という思い込みを取り除き、「浮ける」という感覚を少しずつ体験させてあげること。
ビートバンやアームリングなど補助具を使ったり、親がそばで支えてあげたりしながら、水の中で安心できる環境を作ってあげれば、子どもは自信を取り戻し、自然と水に体を預けられるようになります。
パニックによる体の硬直
水そのものへの恐怖心からパニックになってしまうと、体が硬直してしまい、浮くことすらできません。
顔に水がかかる不安や「自分は浮けないかもしれない」という思い込みが積み重なると、水の中という環境そのものが大きなプレッシャーになります。
水の中では息ができず、視界や体の感覚も普段通りではありません。
そのため、戸惑いから不安をふくらませ、体に力を入れて固まってしまいます。
力みすぎると沈みやすくなってしまうので、さらにパニックを招くきっかけに。
「やっぱり水は怖い」と思い込みやすくなり、負のループに陥ってしまうのです。
こうしたパニックは、少しずつ水に慣れる体験を重ねることで和らいでいきます。
「大丈夫だった」という小さな安心感を積み重ねることで、次第に水への恐怖が薄れ、泳ぎに挑戦できるようになっていきます。
水への恐怖心をなくすステップ
カナヅチから脱却するためには、水への恐怖心をなくすことが大切です。
ここでは、簡単にできる方法を紹介しますので、ぜひ親子で楽しみながら実践してみてください。
水慣れ遊びから始める
水に慣れるための第一歩は「顔に水がかかっても大丈夫」という体験を積むことです。
いきなり頭から水をかけるのではなく、最初は肩や背中に少しずつ水を流してあげましょう。
それでも不安が強ければ、ほっぺに軽く水をつけるところからスタートしてもかまいません。
段階を踏んで慣れていくことが大切です。
また、湯船の中で顔をつけて息を止めたり、顔をつけて10秒数えるといったシンプルな遊びを取り入れるのも効果的です。
親が率先して潜って見せたり、「一緒にやってみよう」と声をかけたりすることで、子どもも自然と挑戦する気持ちになれます。
こうして「水は怖くない」という感覚を積み重ねていきましょう。
小さな成功体験が、次に進む勇気につながっていきます。
顔に水をかける練習
水への恐怖心がうすれてきたら、実際に顔に水をかける練習をします。
最初から顔全体にかけるのではなく、まずはほっぺや肩に少しずつ水をかけて慣れさせて行きましょう。
慣れてきたら後頭部や背中へと範囲を広げ、最終的には頭からシャワーのように水をかけられるようにします。
また、遊びを取り入れるのも効果的です。
例えば「雨だー!」と声をかけながら水をかけると、子どもは楽しい気持ちで受け入れやすくなります。
さらにバケツを2つ合わせて頭の上で「卵を割りまーす!」とバシャーンと水をかけると、驚きながらも大笑いでき、自然に水への抵抗感が薄れていきます。
楽しみながら水に慣れる体験を重ねることで、「水がかかっても大丈夫」という自信が生まれ、次の練習にもスムーズに進めるようになるのです。
鼻から息を出す練習
水に慣れてきたら、「鼻から息を出す」練習を取り入れてみましょう。
水泳では基本的に鼻から息を吐き、口から吸う呼吸法を使います。
このリズムが身につくと、水の中でも落ち着いて呼吸をコントロールできるようになります。
最初は浅い水で鼻から「ブクブク」と泡を出す練習から始めてください。
一気に強く吐き出すのではなく、できるだけ長く、ゆっくりと息を吐くのがポイントです。
慣れてきたら顔を水中に沈め、鼻から息を吐きながら沈み、水面に出たら口で素早く息を吸うという流れを繰り返します。
この練習は「ボビング」と呼ばれ、沈む・吐く・浮かぶ・吸うという一連の呼吸リズムを自然に身につけられる方法です。
泳ぎ始めてからの息継ぎにも活用でき、子どもが安心して泳ぎに挑戦できる大切なステップになります。
泳ぎの基礎!浮く技術をマスター
泳ぐ第一歩は「水に浮くこと」。
体を預けて浮く感覚を覚えると、余計な力が抜けて泳ぎがぐっと楽になります。
ここでは、浮き方の基本を紹介します。
大の字で水に浮かぶ感覚
浮く練習の基本は、大の字になって水に体を預けることです。
両手両足を大きく広げ、あごを引かずに頭を少し後ろに倒すようにするのがポイント。
特に「頭を下げること」が浮くコツで、頭が上がってしまうとお尻や足が沈んでしまいます。
年齢が低い子どもの場合は、最初は大人が肩や腰を支えてあげると安心です。
水深が浅い段差を利用して、顔が水に浸からないようにするのも効果的。
練習中は「おへそを空に向けて高く上げてみよう」「雲が見えるかな?」など声をかけてあげると、リラックスして力が抜きやすくなります。
背浮きの感覚が掴めてきたら、少しずつ大人の手を離し、「5秒だけ浮いてみよう」と短い時間から挑戦してみましょう。
こうして「浮けるんだ」という体験を積み重ねていくことで、泳ぎへの自信につながっていきます。
補助具を使った安心感の確保

浮くことに自信がない子どもにとって、補助具(ヘルパー)は“水の中の補助輪”のような存在です。
腕や腰に装着すると自然に浮力が働き、沈んでしまう不安を和らげてくれます。胸のあたりに重心があると足が沈みやすいのですが、補助具をつけることで重心の位置が変わり、バランスがとりやすくなります。
「沈まない」という感覚を体験することで、子どもは安心して水に身を任せられるようになるのです。
自転車の補助輪で「こげた!」と感じる瞬間のように、水中でも「浮けた!」という成功体験が生まれます。
恐怖心が薄れると、力が抜けて浮けるようになり、泳ぐ楽しさへとつながっていきます。
呼吸と浮き方の連動
水に浮くためには、呼吸と姿勢をセットで意識することが大切です。
息を大きく吸い込むと肺がふくらみ、体が軽くなって自然と浮きやすくなります。
その反対に、息を止めたり一気に吐き出したりすると体が沈みやすくなるので注意しましょう。
例えば、背浮きの練習をするときは「息を吸って、そのままゆっくり鼻から吐く」と意識するだけで安定感が増します。
最初は5秒、慣れたら10秒と少しずつ長く続けてみると呼吸のコントロールが身についていきます。
「呼吸」と「力を抜くこと」を同時に意識できるようになると、水に体を預ける安心感が生まれ、浮く感覚を自然に覚えられるようになります。
これは、クロールや平泳ぎの息継ぎにもつながる大事な基礎です。
泳ぐ楽しさを知る次のステップ
浮くことができたら、次は子どもに泳ぐ楽しさを知ってもらいましょう。
ここでは、本格的な泳ぎにつながる大切なステップを紹介します。
キック(バタ足)の基本
泳ぎの第一歩として欠かせないのが、キック(バタ足)の練習です。
はじめはプールサイドに腰掛けてご自身の足を見ながらキックしてみましょう。
次に両手でプールの壁やビート板を持ち、水面近くでバタ足を行います。
ポイントは、膝や足首の力を抜くようにし、リラックスさせながら動かすことです。
足が水面をパシャパシャとはじく音が出れば上手にできています。
グライド(けのび)の練習
バタ足と並んで大切なのが「グライド」。
グライドとは、プールの壁を両足で強く蹴り、体をまっすぐに伸ばした姿勢で水中を進む動作のことです。
コツは「頭をしまうこと」と「しっかり息を吸うこと」の2点。
前を見上げると重心が後ろにずれて体が沈みやすくなるため、視線はプールの底へ。
手は耳の後ろで組み、腕をしっかり伸ばして、頭を腕の間に収めましょう。
また、水中で浮くには呼吸もポイントです。
浅い呼吸のままだと肺が十分に膨らまず、体が沈みやすくなります。
大きく息を吸い込み肺をふくらませ、そのまま息を止めると自然に体が浮きやすくなります。
グライドは「水に乗る感覚」を身につける練習です。
バタ足やクロールの基本にもつながる、大切なステップです。
親の褒め方と励まし
子どもが泳ぎに挑戦するとき、一番の力になるのが親の声かけです。
できたことをすぐに「すごいね!」「上手にできたね!」と褒めることで、自信につながります。
失敗しても「惜しかったね、もう一回やってみよう」と前向きな言葉をかけてあげましょう。
練習の最後に「今日はこんなことができたね」と振り返ると、子ども自身も達成感を実感できます。
楽しさと安心感を与えることが、泳ぎを好きになる一番の近道です。
まとめ

子どもが「カナヅチ」になってしまう原因は、水に顔をつけることへの恐怖心や「浮けない」という思い込み、そしてパニックによる体の硬直などさまざまです。
ですが、どれも少しずつ練習を積み重ねれば克服できるものです。
水慣れ遊びから始めて、顔に水をかける練習や呼吸の練習、背浮きやけのびなどの基礎を覚えることで、水に身を預けられるようになります。
そして「泳ぐって楽しい!」と感じられるようになれば、自信を持って水泳の授業や夏のプールを楽しめるでしょう。
大切なのは「一気にできるようにする」ことではなく、少しずつ安心感を積み重ねていくこと。
親がそばで励ましながら寄り添うことで、子どもは水への恐怖を乗り越え、いつの間にか笑顔で泳げるようになっていきます。