9歳の壁(小4の壁)とは?子どもの変化と親ができることを徹底解説
小学4年生の子どもとその両親がさまざまな問題に直面する「9歳の壁」。
「なぜ問題が生じるのか?」「良い教育方法はある?」と思う方も多いでしょう。
この学年は、学習や生活、友人関係などで苦手意識を感じたり、自信をなくしたりする子どもが増えると言われています。
子どもの発達を理解し、9歳の壁を乗り越えられるようサポートしていきましょう。

9歳の壁とは?
9歳の壁とは、小4の時期の子どもが直面する、自己肯定感の低下や、自信を持ちにくくなる現象のことです。
子どもが成長する過程には、「3歳の壁」「4歳の壁」など、年齢ごとにさまざまな発達の段階があります。
その中でも、特に大きな変化が見られるのが「9歳の壁」です。
文部科学省によると、9歳以降の子どもは物事を客観的に捉え、知的な活動が発展する一方で、発達の個人差が顕著になり、「9歳の壁」と呼ばれる時期を迎えるとされています。
9歳の壁は、成長したことで自分のことを客観視できるようになり、子どもの心が成長した証とも言えるでしょう。
参考:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1283165.htm
https://www.seigakuin.jp/contents/faculty/dcpd/essay/essay_01.html
9歳に現れる子どもの変化
9歳の子どもは、学習面や心の成長、人間関係においてさまざまな変化が生じます。
それぞれどのように表れるのか、具体的に見ていきましょう。
勉強についていけなくなる
9歳頃になると、学習内容がより抽象的で難しくなり、子どもは突然理解が追いつかないと感じることがあります。例えば、算数で分数を学び始めたり、国語で長文を読んで理解する課題が増えたりします。これまでスムーズに進んでいた勉強が急に難しくなり、他の子どもたちと比べて自分が遅れていると感じることが増えます。結果として「勉強が苦手」「ついていけない」と思い込んでしまい、自信を失う原因となります。
人との比較により劣等感を感じるようになる
9歳頃になると、物事を客観的に捉え、自己と他者を比較する能力が発達するため、他の子どもと自分を比較し、自信を持てなくなることがあります。
勉強や運動、友達関係など、あらゆる面で「自分はできない」「他の子の方が優れている」と感じることが増え、劣等感を抱きやすくなります。
特に運動会やクラスでの発表会など、成果を一目で確認できる場面では「自分はできない」と感じやすく、これが自己肯定感の低下に繋がるのです。
親や友人に関するトラブルの発生
小学4年生頃になると、親との関係においても変化が現れます。
これまで親の指示に従っていた子どもも、9歳頃になると自分の意見を持ち始めるためです。
親の期待に応えられなかったり、思い通りにいかないと、反発心が強くなることがあります。
また、友人関係でも競争心が高まり、仲の良かった友達と急に意見が食い違ったり、誤解からトラブルが生じたりすることがあります。
例えば、遊びのルールを巡ってケンカになったり、些細なことで友情に亀裂が入ることも珍しくありません。
放課後の居場所がなくなる
小学4年になると、学童保育を利用する子どもが減少し、放課後の居場所がなくなる問題が発生します。
学童保育は低学年の子どもを中心に預かっているため、4年生頃になると、子ども自身が行くのを嫌がることがあります。
また、預かる対象が小学校3年生までという学童も多いです。
そのため、放課後に1人で過ごすことが増え、孤独を感じやすくなります。
保護者としては、自分が帰宅するまで子どもがどのように過ごしているのかを心配することが多く、特に共働き家庭にとっては、放課後の居場所の問題が大きな課題となります。
9歳の壁の原因

ここでは、9歳の壁はなぜ起きてしまうのか、その原因を紹介します。
9歳の壁は、お子さんだけでなく保護者にとってもストレスを感じやすい時期に起こる現象です。
あらかじめ9歳の壁について知っておくことで、ストレスへの対策を講じやすくなります。
小学校4年生頃に迎えるこの時期の変化を理解し、心と生活の準備を進めていきましょう。
学力的な原因
9歳頃になると、学習内容が一段と難しくなります。低学年では「読み書き計算」の基礎が中心でしたが、中学年になると文章題や応用問題が増え、論理的に考える力が求められるようになります。特に算数では、単なる計算から文章を読んで答えを導き出す問題が増え、つまずきを感じる子どもも少なくありません。また、授業の進むスピードが速くなり、板書の量も増えるため、学習に対する負担が大きくなります。その結果、「勉強が難しくなった」「ついていけない」と感じることが増え、苦手意識を持ちやすくなります。
精神的な原因
この時期になると、自己認識が発達し、自分と他者を比較する機会が増えます。
そのため、「自分はできない」「あの子より劣っている」といった劣等感を抱きやすくなり、自信を失うことがあるのです。
また、思考力が発達することで、大人の言葉の裏を読んだり、社会の仕組みに疑問を持ったりするようになります。
その結果、親や先生に反抗したり、大人の言うことを素直に受け入れにくくなったりすることがあります。
環境的な原因
9歳頃になると、学校や家庭、友人関係の環境が変わり、子どもが戸惑いやストレスを感じやすくなります。
学童を卒業して放課後の居場所に悩んだり、友達との遊び方が変わったりして、孤独を感じる場面も増えるでしょう。
友人関係ではグループができ、仲間意識が強まる一方で、これまで仲良かった友人関係が変わることもあります。
家庭では自分の意見を持ち始め、親への反発が強まることがあり、親子の会話にすれ違いが生じることも少なくありません。
9歳の壁の乗り越え方|親ができること
子どもの成長には、さまざまな壁が立ちはだかります。
かんしゃく、挑戦の回避、友達とのトラブル…。
そんなとき、親はどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、「9歳の壁」を乗り越える具体的なサポート方法を解説します。
子どもへの接し方
「9歳の壁」を乗り越えるためには、両親の適切なサポートが欠かせません。
まず、乱暴な言葉づかいへの対処として、強く叱らずに丁寧に注意し、正しい言葉に言い直させることが大切です。
放置すると癖になる可能性があるため、根気強く対応しましょう。
また、子どもは身近な大人の言葉を真似ることが多いため、家族全員が言葉づかいに気を付ける必要があります。
次に、子どもの変化への気づきとして、表情や行動の変化を注意深く観察し、小さなサインも見逃さないように心がけてください。
靴やランドセル、筆箱の状態は、子どもの心の状態を表すことがあります。
例えば、靴の汚れ方、ランドセルの中身、筆箱の文房具の変化などに注意する必要があります。
問題が起きた時は、一方的に叱るのではなく、子どもの気持ちに共感し、意見を丁寧に聞いてあげてくださいね。
子どもの意見を尊重した上で、一緒に解決策を考え、どうすれば良いか提案してあげましょう。
家庭でできる学習サポート
9歳の壁を乗り越えるためには、家庭での学習サポートが重要です。
子どもの学習においては、具体的でわかりやすいサポートが効果的です。
例えば、算数で「0.5」や「1/2」のような概念を学ぶとき、身近な例を挙げて説明するだけで理解が深まります。
「0.5は半分ってことだよ」と身近な言葉で教えてあげると、イメージしやすくなるものです。
また、理科の実験や星座の動きなどの学習については、動画サイトで分かりやすい解説を探し、実際に映像を見せることで理解が進みます。
視覚的に学習内容を確認できると、より理解しやすくなります。
どこまで理解できているのかを確認し、わからない部分を明確にしてサポートすることが大切です。
親自身のストレスケア
9歳の子どもは、心身ともに大きく成長する時期を迎え、親御さんはその変化に戸惑うこともあるかもしれません。
いわゆる「9歳の壁」と呼ばれるこの時期は、子どもだけでなく、親御さんにとってもストレスを感じやすい時期です。
子どもの成長を支えるためには、まず親御さん自身が心身ともに健康であることが大切です。
まずは子どもの行動の変化・学習の難化・人間関係の悩みなど、ストレスの原因を理解しましょう。理解したうえで、自分の時間を持つ・誰かに相談する・完璧を求めない・睡眠と休息・適度な運動など、ストレスを軽減するための対策を講じましょう。
9歳の壁に関するよくある質問

最後に9際の壁に関する、よくある質問に答えていきます。
9歳の壁はいつ終わる?
「9歳の壁はいつ終わるのか」という問いに対する明確な答えはありません。なぜなら、子どもの発達は個人差が大きく、壁を乗り越える時期も一人ひとり異なるからです。
しかし、一般的には、小学校高学年に入る10歳頃から徐々に落ち着き始め、壁を乗り越えると言われています。
9歳の壁がない子どももいる?
子どもの成長は個人差が大きく、すべての子どもが同じように壁に直面するわけではありません。
しかし、たとえ「9歳の壁」がないように見える子どもでも、成長の過程で何らかの困難に直面することはあります。
「9歳の壁」がない子どもに見られる特徴としては、以下のような点が挙げられます。
・発達が早く、抽象的な思考や自己認識がすでに確立している
・自分を客観的に考えられる
・他人と比べず、自分ごととして捉えられる
・学習意欲が高く、困難な課題にも積極的に取り組むことができる
・自己肯定感が高く、失敗や困難にもくじけない
重要なのは、子ども1人ひとりの個性や発達段階を理解し、適切なサポートをすることです。
9歳の壁と反抗期の違いは?
項目 | 9歳の壁 | 反抗期 |
時期 | 小学校中学年(9歳前後) | 思春期(10代前半~後半) |
主な変化 | 学習、社会性 | 心身(ホルモンバランス、自我) |
特徴 | 学習の抽象化についていけない自己肯定感の低下友人関係の複雑化 | 親への反発 感情の不安定さ自立心の高まり |
主な原因 | 認知能力、社会性の発達 | ホルモンバランスの変化、自我の確立 |
9歳の壁を反抗期と勘違いする方も多いですが、両者は全く異なるものです。
主な違いは、9歳の壁は「学習や社会性の発達の壁」、反抗期は「自我の確立と親への反発の時期」であることです。
「第一反抗期」、「第二反抗期」の間にあたる「中間反抗期」とも呼ばれます。
発達心理学的に反抗期は第一反抗期と第二反抗期に分類されます。
- 第一反抗期:3歳〜4歳ごろ
- 第二反抗期:12歳〜19歳ごろ
このように、9歳の壁は、第一反抗期と第二反抗期の間にあたり、自分を知ることや周りとの関わりが深まる大切なときです。
反抗期との違いを理解し、9歳の壁を乗り越えるために、子どもの成長をしっかりサポートしていきましょう。
まとめ
9歳の壁とは、学習の難化、自己認識の発達、環境の変化が重なり、子どもが自信を失う現象です。
小学校4年生頃に訪れる「9歳の壁」は、本人はもちろん両親にとっても大変な時期です。
学習についていけなくなったり、劣等感を抱いたり、親や友人とのトラブルが増えたりします。
ただし、「小4の壁」は一時的なものであり、ずっと続くものではありません。
1歩ずつ大人へと歩み出している子どもの変化を、「今はこういう時期なんだ」と捉え、少し長い目で見守ることが大切です。
親は子どもの変化に寄り添い、学習サポートや成功体験の機会を提供し、必要に応じて専門家に相談してみましょう。