「毒親」とは?特徴と影響、そして自分らしく生きるための対処法

「毒親ってよく聞くけど、どんな親のことだろう?」「もしかしたら、私も毒親なのかもしれない……」このように思ったことはありませんか?
個人差はありますが、毒親の影響で、子どもが自信をなくしたり、人間関係がうまくいかなかったりするケースも多く見られます。
「子どものため」と思ってしている言動で悪影響を与えることもあるため、自分の関わりが適切かどうか、正しい知識が必要です。
この記事では、毒親の定義とタイプ、子どもに与える影響、毒親をやめるために必要なことを紹介します。ぜひ最後までお読みください。
「毒親」の定義
まずは毒親の定義を確認していきましょう。
毒親とは?
毒親は、子どもが自分らしく生きることを妨げ、心身の成長に悪影響を与える言動を繰り返す親を指します。アメリカのセラピストであるスーザン・フォワード氏が自身の著書『毒になる親(原題:Toxic Parents)』の中で提唱した概念がきっかけで広まりました。学術的な用語ではありませんが「子どもに悪影響を与える親」を表現する言葉として使われることが多いです。
毒親には、子どもを支配・コントロールしようとする、暴言や暴力を浴びせる、ネグレクト(育児放棄)などのさまざまなタイプがあります。いずれも子どもの自己肯定感を奪い、将来の仕事や人間関係にまで影響を及ぼす可能性があります。
「毒親」の主なタイプ

ここでは、毒親の主なタイプを3つに分けて紹介します。該当するタイプは1つでなく、複数当てはまることもあり、長期にわたって子どもに心理的な影響を及ぼします。
精神的・心理的に子どもを支配する
子どもの意見や感情を尊重せず、親の価値観や考えを押し付けて思い通りにコントロールしようとするタイプです。子どもを一人の人間としてではなく、自分の所有物のように捉えていることが原因で、親のコンプレックスや、叶えられなかった夢を子どもに託す傾向も見られます。子どもの人格や能力を否定することで罪悪感を植え付け、精神的に追い込んで支配する場合もあります。
【例】
- 子どもの意思を無視して習い事や進路を一方的に決める
- 「〇〇ちゃんとは遊んではいけない」など、子どもの交友関係を制限する
- 「こんなこともできないの?」と子どもの能力を否定する
子どもは選択や能力を否定されることで「自分の意見を持つことは危険だ」「自分はできない人間だ」という認識を植え付けられ、自信をなくします。将来的には、なにかうまくいかないと「これは自分の意見ではない。他者の責任だ」という心理が働き、物事の責任を他人や環境のせいにする、他責思考が形成されてしまう懸念があります。
過保護・過干渉
過保護・過干渉タイプの親は、常に先回りして失敗を取り除こうと手や口を出してしまうため、子どもの自立の機会が減ってしまいます。「子どものため」という愛情が根底にあるため、親自身が行動の問題点に気づきにくいのが特徴です。
【例】
- 子どもが自分でできる着替えや宿題を、求められていないのに手伝う
- 友人関係のトラブルにすぐに介入する
- 習い事の練習方法を細かく指示しすぎる
このような行動は、子どもから挑戦する意欲を奪い「自分一人では何もできない」という無力感や、他責思考を育ててしまう危険性があります。
また、夫婦関係がうまくいっていない場合などに、親が子どもに依存して結果的に過干渉になっているケースも多いです。親自身が子育て以外に熱中できることを見つけるのも大切なポイントです。
育児に無関心・ネグレクト
子どもが心身ともに健やかに育つために必要な環境・関心を与えない「育児放棄(ネグレクト)」も毒親のタイプの一つです。衣食住などの物理的な世話を怠るだけでなく、子どもとのコミュニケーションを避ける「心理的ネグレクト」もあります。子どもが助けを求めても応じない、他の兄弟姉妹と差別的に接する場合も含まれます。
【例】
- 食事を十分に与えない
- 不衛生な環境で生活させる
- 病気や怪我をしても病院に連れて行かない
- 子どもが話しかけても無視する
- 愛情表現をしない
子どもは自分の存在価値を見出せず、強い孤独感や「私は愛されていないんだ」という不安を抱え、自己否定感を形成します。この自己否定感は健全な人間関係の構築を妨げ、心を満たされない心を埋めるために、なにかに依存するような行動に走ることがあります。
毒親の行動が子どもに与える影響
親からの言動は、子どもの心の成長に大きな影響を与えます。子ども時代に親から受けた心の傷はトラウマとして残りやすく、成長してからも苦しみ続ける人もいます。
この章では、毒親の行動が子どもの心に与える影響を紹介します。
自己肯定感が低くなる
子どもは身近な親から認められることで自己肯定感を育んでいきます。しかし、親から日常的に人格を否定されたり、できていないことばかりを指摘され続けたりすると、子どもは「自分は何もできない、価値のない人間だ」と感じて自己肯定感が低くなります。
このような環境では家庭が安全基地として機能せず、新しいことに挑戦する前から「どうせ失敗する」と諦めてしまったり、誰かに褒められても素直に受け取れなかったりします。少しうまくいかないときに必要以上に自分を責めてしまうのも、自己肯定感の低さが原因かもしれません。
※安全基地:「なにがあっても受け止めてもらえる」と感じる、心の拠りどころ
人間関係の構築に困難を感じる
子ども時代に築かれる親との関係は、その後の人生における対人関係の土台になります。親からの支配・無関心などの不安定な関係性を経験すると、他者を信頼することや、適切な距離感で人と関わることが難しくなります。
【例】
- 人に嫌われることを極度に恐れて常に相手の顔色をうかがう
- 自分の意見を言えずに我慢し続ける
- 友人や恋人を支配しようとして関係がうまくいかなくなる
心の根底にある「見捨てられるかもしれない」という強い不安が、安定した人間関係を築くうえで大きな壁になることがあります。友人関係や仕事、恋愛など、生きるうえで人との関わりが重要な場面は多いため、良い親子関係を築いておくことは大切です。
完璧主義や依存体質になる
「良い子でいなければ認められない」環境で育つと、完璧主義や依存的な性格になりやすいといわれています。
完璧主義の人は、小さな失敗も許せず、常に緊張して心身が疲れてしまいます。また、他人にも完璧を求めてしまい、人間関係に影響を及ぼすことがあります。
一方で依存的な人は、過去に自分の選択を親から強く否定された経験を持つことが多く、自分で決めて失敗することを極端に恐れます。
どちらの場合も「ありのままの自分では認めてもらえない」という不安を抱えており、その思いが対人関係にも大きく影響していきます。
毒親をやめるために必要なこと

ここまで記事を読み進めて「自分も毒親かもしれない」と感じたママやパパもいるかもしれません。しかし、ちょっとした行動から親子関係を改善できるきっかけになることがあります。ここからは、毒親をやめるために必要なことを3つ紹介します。
「毒親」に関する知識を学んで、回避する
まずは、どのような親子関係が子どもの健全な成長を育むのかの知識を学びましょう。親が子どもを傷つける言動や、子どもの心理を理解することで、無自覚だった言動を意識的にコントロールできるようになります。
親子関係に関する専門書や、Web上の記事から知識を学ぶことで、子どもとの関わりに生かせます。知識と自身の現状を照らし合わせることで、具体的な改善点が見えてくるでしょう。
専門家(カウンセラー)へ相談する
自分だけで問題を解決するのが難しいときには、カウンセラーなどの専門家の力を借りましょう。親子関係の問題は、親とその親(子どもから見た祖父母)との関係性が影響していることも多く、根深い課題が隠れているかもしれません。
専門家はあなたの価値観や、これまでの子育てについて客観的な視点から話を聞き、状況を整理をしてくれます。また、子どもと関わるための具体的なアドバイスなどを聞ける可能性もあります。一度だけでなく、継続的にカウンセリングを実施していくことで、親子関係が良い方向に向かいやすくなるでしょう。
【相談先】
- 自治体が設置している子育て相談窓口や保健センター
- 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(いちはやく)
- 臨床心理士や公認心理師などが在籍するカウンセリング機関
親や友人に相談する
親や友人など身近な人に悩みを打ち明けることで、心を軽くできることがあります。一人で抱え込んでいることで「自分だけがうまくできない」と視野が狭くなっているかもしれません。誰かに話すことで客観的なアドバイスをもらったり、辛い気持ちを共有したりするだけでも、気持ちが軽くなる可能性があります。
また、誰かに話をすることで自分の状況を見つめ直すきっかけにもなります。心を開いて安心して話せる相手に、一度話を聞いてもらいましょう。
もしも自身の親との関係が良好であれば、親の子育ての話を聞いてみることも一つの手段です。親の思いとご自身の思いを話し合うことで、見えるものがあるかもしれません。
一人で背負わず、信頼できる周囲のサポートを積極的に活用しましょう。
まとめ
親の言動は、子どもの自己肯定感や人間関係の構築に大きく影響します。まずは子どもを一人の人間として認めて、子どもの好きなことや主体性を尊重するような関わりを大切にしていきましょう。習い事などで子どもが好きなことに取り組むことも一つの方法です。
子どもと信頼関係を構築することは時間がかかりますが、時間をかけて適切な関わりを続けていけば状況は変わります。周囲のサポートを借りながら、親子関係を築いていきましょう。