子どもの「社会性」とは?身につけるメリットと親ができること

「社会性ってなんなの?」「どうすれば伸ばせるの?」と感じていませんか?
子どもの社会性は、友達や家族、学校や地域の中で他者と関わりながら育まれる力です。家庭での生活はもちろん、園や学校での活動、習い事など、さまざまな経験を通して少しずつ身についていきます。
この記事では、社会性の基本や家庭でできるサポートの方法、よくあるトラブルへの対処法などを紹介します。
最後までお読みいただき、ご家庭での関わりの参考になれば幸いです。
社会性の基本と構成要素
まずは、社会性の定義と構成する3つの力、社会性が育つメリットを紹介します。
社会性の定義
社会性とは「他者と良い人間関係を築くために、適切な行動をとれる力」のことです。誰もが家庭や学校、地域社会など、さまざまな人と関わりながら生活しています。社会の中で人と関わるうえで、ルールを守ること、相手の気持ちを考えること、協力することなどが求められます。
社会性は子どもにも必要で、例えば公園のすべり台で順番を待つこと、おもちゃを借りたいときに「貸して」「いいよ」とやり取りすることも、社会性が関わっている場面です。
混同されやすい言葉に「社交性」があります。社交性は「誰とでもすぐに打ち解けられる性質」で、対人関係における積極性を意味するため、社会性とは異なります。社交性は子どもの性格も関係しますが、社会性は人と関わる経験を積むことで育てられる力です。
社会性を構成する3つの力
子どもの社会性は、大きく次の3つに分けられます。
1.自制心
自分の欲求や感情をコントロールする力。遊びのルールを守る、欲しいものを我慢するなど、ルールや他者の気持ちを考えて行動できることを指します。
2.協調性
目標を達成するために、周囲の人と力を合わせて行動できる力。友達と一緒に砂場で山を一緒に作る、サッカーなどのチームスポーツをする経験などが当てはまります。
3.コミュニケーション力
相手の話をよく聞いて理解し、自分の気持ちや考えを言葉で伝える力。
この3つの力を数値で測ることは難しいですが、互いに影響し合いながら伸びていき、子どもの社会性の土台をつくります。
社会性が育つことのメリット
社会性が育つことで、次のようなメリットがあります。
- 良い人間関係を築けるようになる
- 自己肯定感が育つ
- 問題解決能力が育つ
- 将来の学歴や就業、収入に良い影響を与える
他者の気持ちや状況を汲み取った言動ができるため、良い人間関係を築けることが大きなメリットです。また、子どもが園や学校で楽しく過ごせるため、「自分の存在を認めてもらえている」と感じやすく、自己肯定感の向上にもつながります。
相手の話を聞いたうえで自分の考えを上手に伝えられるため、トラブルを解決する力が育つこともメリットです。トラブルはネガティブな出来事として捉えがちですが、問題解決能力を伸ばす良い機会になります。
また、社会性をはじめとする、生きる力の土台「非認知能力」が高いと、将来の学歴や就業、収入にも良い影響を与えることが研究から分かっています。
子どもの年齢別・社会性の発達過程

次に、子どもの年齢ごとの社会性の過程と親が意識すべきことを紹介します。
幼児期の社会性(ごっこ遊び)
乳児期には、まず保護者との関係を深め「ママやパパは自分を大切にしてくれる」と感じる愛着関係を形成します。この愛着関係を土台にして、家族以外の他者と関われるようになるのが幼児期です。
2歳頃までは、同じ場所にいながらも別々に遊ぶ「平行遊び」が中心ですが、おもちゃの貸し借りなどを通して友達と関わります。まだ言葉でうまく伝えられないこともあるので、必要に応じて親が気持ちを代弁し、子ども同士がコミュニケーションをとれるように仲立ちをしてあげましょう。
3歳頃になると友達に興味を持ち「一緒に遊ぼう」と誘ったり、「貸して」「ありがとう」などの言葉のやりとりが増えます。
4〜5歳頃には、共通の目的を持って役割分担や協力をする「協同遊び」に発展していきます。
幼児期に社会性を育むおすすめの遊びは、ごっこ遊びです。自分ではない役になりきることで、相手の立場や気持ちを想像する力を養います。友達とのやり取りや、どうやって遊ぶかを相談する経験が、コミュニケーション能力や協調性の土台を築きます。
小学生の社会性(ルールと協調性)
小学生になると、より明確なルールがある中で社会性を身につけていきます。特に大切になるのが、クラスなどの集団の一員として目標を達成しようとする「協調性」です。
低学年では、学校生活のルールを守り、人間関係が複雑化するなかで他者との関わりや折り合いのつけ方を学びます。
高学年になると、自分たちでルールを工夫する力や改善する力が求められます。委員会活動や行事で役割や責任を与えられ、仲間と協力する経験が子どもの成長につながります。
年齢ごとに親が意識すべきこと
親は子どもの発達段階に合ったサポートを意識しましょう。手を出しすぎると子どもの自主性が育ちにくく、放任しすぎると子どもだけでの対応が難しくなることがあるため、適切な距離感で見守る姿勢が大切です。
例えば幼児期には、子ども同士の小さなトラブルをすぐに仲裁せず、自分たちで解決しようとする姿を見守ってみましょう。言葉がうまく伝えられない、暴力をふるっているなどの場合は、間に入って子どもの気持ちを代弁したり、双方の気持ちを聞いてみるなどの対応をします。
親の接し方も子どもはよく見ているので、日頃から「ありがとう」「ごめんね」を伝えるなど、基本的なコミュニケーションを大切にしましょう。
小学生になると、子どもの人間関係はより複雑化します。友人関係や学校の悩みなどを安心して話せるように、聞く姿勢を大切にしましょう。親の意見を押し付けるのではなく、一緒にどうしたら良いかを考えることで、子どもは自分の力で問題を乗り越える経験を積んでいきます。
学校以外の人間関係を経験できる習い事や地域での活動も、社会性を育む貴重な機会です。ぜひ活用してみてください。
社会性を育む効果的な方法
ここからは、日常生活で実践できる、社会性を育むための方法を4つ紹介します。
コミュニケーションの機会を増やす
まずは、親子の会話や友達との交流などのコミュニケーションの機会を増やしましょう。会話を通して、子どもは自分の気持ちを言葉にする練習をし、相手と関わる中で自分とは違う考えがあることを学びます。
家庭ではその日の出来事に加えて、どう感じたのかなど内面の問いかけを意識すると、子どもが自分の気持ちを言語化できるようになります。子どもが話したことにアドバイスや否定をしたくなることもあるかもしれませんが、まずは気持ちに共感をすることで、子どもは安心して自己表現ができます。
また、親自身の出来事や気持ちを話すことも、他者を理解するきっかけになるのでおすすめです。
挨拶や感謝の気持ちを教える
挨拶や感謝の気持ちを伝えられると、良い人間関係を構築しやすくなります。
まずは、親が日常でお手本を示してみましょう。家族や近所の人などへの声かけで、親が気持ちの良い挨拶をしたり、感謝の言葉を使ったりしていれば、子どもも真似をしていきます。
「おもちゃを貸してくれたね。ありがとうって言おうか」など、具体的な場面と結びつけて伝えると効果的です。
集団での活動や習い事を行う
集団での活動や習い事は年齢や学校の異なる仲間と関わるため、社会性が育まれる場です。
例えば、サッカーなどのチームスポーツでは協調性やフェアプレーの精神、ダンスや合唱団では仲間と1つのものを作り上げる達成感を味わえます。学校生活だけでは得られない社会性を養う大切な機会となります。
家庭でのルールを明確にする
家庭は、子どもが一番最初に出会う社会です。家庭でのルールを守ることは、学校や社会のルールを守ることにもつながります。
ルールは「食事の前には手を洗う」「おもちゃは自分で片付ける」など、具体的で分かりやすいものが良いでしょう。「なぜそれが必要なのか」という理由も一緒に伝えると、子どもはより納得して行動できます。決めたルールは親自身も守るように気をつけましょう。
よくある社会性に関するトラブルと対処法

ここからは、よくある社会性に関するトラブルと対処法を紹介します。
対人関係のトラブル
おもちゃの取り合いや仲間外れなどの対人関係のトラブルの場合、まずは子どもの言い分を冷静に、最後まで聞きましょう。頭ごなしに叱る、一方的に相手に謝らせることは、子どもが納得できないため解決には繋がりにくいです。
もし、子どもが人を叩いてしまった場合は、行動の裏にある「おもちゃを取られて悲しかった」といった気持ちを受け止めたうえで「言葉で伝えよう」など、具体的にどうしたら良いのかを伝えます。
仲間外れなどで傷ついている場合は「それは辛かったね」と子どもの気持ちに寄り添うことを第一にしましょう。そのうえで状況を整理し、どうすれば良かったかを一緒に考える姿勢が、子どもの問題解決能力や社会性を育てます。
集団生活でのトラブル
順番を待てない、片付けをしないなどの集団生活のルールに関するトラブルでは、ルールの必要性を伝え、できたときには褒めましょう。子どもは衝動を抑える力が未熟だったり、なぜそのルールがあるのかを理解できていなかったりします。
「みんなが楽しく遊ぶためだよ」「おもちゃがなくなったら悲しいよね」など、必要に応じてイラストや写真を使いながら子どもに伝わるように説明しましょう。少しでもルールを守れたときには「待てて偉かったね!」「お部屋がすっきりして気持ちが良いね」と、その場で褒めると「次も約束を守ろう」という意欲に繋がります。
感情・自己表現のトラブル
自分の思い通りにならずに癇癪(かんしゃく)を起こす、自分の意見を言えないなども、よくある悩みの一つです。
このようなときは、親が代わりに子どもの気持ちを言葉にしてあげましょう。子どもは、自分の感情をどう表現していいか分からずに、行動として爆発させたり、内に閉じこもったりしてしまうのです。
例えば、癇癪を起こしているときには「うまくできなくて悔しいんだね」などと気持ちを言語化することで、自分の感情を認識し、落ち着きを取り戻しやすくなります。自己表現を肯定的に受け止め共感することで、「自分を表現していいんだ」と安心します。
まとめ
社会性は、家庭でのコミュニケーションや習い事など、子どもたちの生活の中にあるさまざまな経験を通して育まれます。時には友達とぶつかることもありますが、他者の気持ちを学び、解決方法を考える絶好の成長機会となります。
子どもの社会性を育むうえで大切なのは、親が焦らず、子どものペースを信じて見守ることです。力を貸すタイミングを見極めながら、子どもの気持ちに寄り添って声をかけてあげましょう。