不登校の子どもを見守るなかで、「勉強の遅れはどう取り戻せばいいのか」「このまま進学に影響しないか」と不安を感じる保護者の方は多いのではないでしょうか。不登校中の勉強方法には、タブレット学習やオンライン家庭教師、個別指導塾など様々な選択肢があります。
本記事では、不登校の子どもが勉強を始める前に確認したいことや、家庭で取り入れられる学習方法について解説します。あわせて、不登校の子ども向けの特例措置や親が避けるべきNG対応などについても紹介しています。
通信制高校や定時制高校など進学の選択肢にも触れますので、子どもに合った学習方法を考える際の参考にしてください。
教材選びや学習時間を決める前に、まず子どもの状態を確認することが大切です。ここでは、勉強を始める前に見ておきたいポイントを解説します。
不登校になったばかりの時期や、学校生活で強いストレスを感じている場合は、まず十分な休息が必要になることがあります。「朝起きられない」「日中も横になっている時間が長い」「表情が暗い」「好きだったことに関心を示さない」といった様子が見られるときは、勉強に向かうエネルギーが残っていない可能性があります。
このような時期に「少しだけでも勉強しなきゃ」と声をかけてしまうと、子どもは責められているように感じてしまうかもしれません。まずは安心して過ごせる時間を確保し、食事や睡眠、親子の会話など、日常生活の土台を整えることを優先しましょう。
休息は、心と体を回復させるために必要な期間です。好きなことに取り組んだり、家族との会話が増えたりしてきたら、勉強を再開する準備が整いつつあるサインと考えられます。
不登校が続くと、寝る時間や起きる時間がずれ、昼夜が逆転してしまうこともあります。生活リズムが乱れたままでは、集中力が続きにくく、勉強を始めても思うように進まない場合があります。
まずは「朝になったらカーテンを開ける」「決まった時間に食事をとる」「昼間に外の空気を吸う」など、できることから始めてみましょう。生活リズムが整ってくると、日中に活動する時間が増え、勉強に向かう余裕も生まれやすくなります。
勉強を再開するうえで大切なのは、子ども自身に「少しやってみようかな」といった学習意欲があるかどうかです。本人が前向きでなければ、保護者が教材を用意しても、逆に勉強への抵抗感が強くなってしまうことがあります。
子どもの学習意欲を高めるには、興味のあることから学びにつなげる方法を考えてみましょう。例えば、好きな動画や本、ゲーム、工作、料理なども、内容によっては考える力や調べる力を育てるきっかけになります。
少しでも学習意欲が見られたら、短時間の勉強から始めてみましょう。得意な教科や好きな分野から取り組むことで、勉強への抵抗感が和らぐこともあります。子どもの様子を見ながら、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。

不登校中の勉強は、学校と同じ進め方にこだわらず、子どもが取り組みやすい方法を選ぶことが大切です。ここでは、家庭で始めやすい学習方法を紹介します。
タブレット学習は、自宅にいながら自分のペースで勉強を進められる方法です。決まった時間に通塾する必要がないため、生活リズムや体調に波がある場合にも取り入れやすい学習方法です。
動画授業やAI教材を使い、「わからない単元に集中して学習する」、「得意な教科から学習する」など、サービスによっては便利な機能を利用できることもあります。学校の授業から遅れてしまっていても、前の学年の内容から復習できる教材を選べば、リカバリーが可能です。
また、短い時間から始められる点もタブレット学習のメリットです。1日10分だけ、1問だけなど、負担の少ない形で始めることが継続につながります。
ただし、一人で進める時間が多いため、わからない箇所をそのままにしてしまうことがあります。必要に応じて学校の先生に相談したり、家庭教師や塾と組み合わせたりしながら、子どもに合った形で活用していきましょう。
オンライン家庭教師は、パソコンやタブレットを使って、自宅で講師の指導を受けられる学習方法です。外出に不安があったり、集団の場に入ることへ負担を感じたりする場合でも、安心して学ぶことができます。
マンツーマンで指導を受けられるため、学校の授業で抜けている単元を確認したり、苦手な教科を重点的に見てもらったりできます。自宅で行うため周りのペースを気にする必要がなく、理解度に合わせて進められる学習方法です。
また、住んでいる地域に関係なく講師を探せる点もメリットです。不登校の子どもへの指導経験がある講師や、落ち着いた雰囲気で接してくれる講師など、子どもに合う講師を選びやすくなります。
一方で、講師との相性が合わないと、学習の時間そのものが負担になることもあります。体験授業などを活用し、子どもが話しやすいと感じられるか、質問しやすい雰囲気があるかを見てから判断しましょう。
個別指導塾は、理解度や学習状況に合わせて、個別に指導を受けられる学習方法です。学校の授業に遅れがある場合でも、苦手な単元に戻って復習したり、進学に向けて必要な内容を重点的に学んだりできます。
中でも不登校サポートが充実した塾では、学習面だけでなく、通塾のペースや教室での過ごし方に配慮してもらえる場合があります。まずは短時間の授業や少ない回数から始められるか相談してみるとよいでしょう。
また、個別指導塾には、完全なマンツーマン形式と、講師1人が複数の生徒を見る形式があります。人目が気になりやすい場合は、1対1のマンツーマン指導が合う一方、少しずつ外の環境に慣れたい場合には他の生徒もいる教室が刺激になります。
ただし、塾に通うこと自体がプレッシャーになる場合があるため、無理に勧める必要はありません。体験授業や教室見学を通して、安心して過ごせる雰囲気かどうかを確認しながら、家庭に合った学び方を選んでいきましょう。
不登校中でも、一定の要件を満たせば、自宅でのICT学習などが出席扱いとして認められる場合があります。ここでは、制度の概要や利用するための流れを解説します。
出席扱い制度とは、不登校の子どもが学校以外の場所で行った学習について、一定の要件を満たす場合に、学校長の判断で出席扱いとして認められる制度です。文部科学省では、義務教育段階の不登校児童生徒が自宅でICT等を活用して学習する場合、学校と家庭が連携し、学習状況を確認できるなどの条件を満たせば、指導要録上の出席扱いにできるとしています。
対象となる学習には、タブレット教材・オンライン教材を使った自宅学習・教育支援センターやフリースクールでの活動などがあります。ただし、家庭で勉強していれば必ず出席扱いになるわけではなく、学習内容や支援体制、子どもの状況などをふまえて判断されます。
そのため、制度の利用を考える際は担任の先生や学校の担当者に相談することが大切です。学校と学習状況を共有しながら進めることで、復学や進学に向けた相談もしやすくなるでしょう。
出席扱い制度を利用するためには、文部科学省が示す要件を満たしたうえで、学校長が適切と判断する必要があります。主な要件としては、「保護者と学校の間に十分な連携・協力関係があること」「ICT教材やオンライン学習、郵送、FAXなどを活用した学習活動であること」などが挙げられます。
また、訪問などによる対面指導が定期的かつ継続的に行われていることも前提とされています。対面指導には、学習面の支援だけでなく、将来の自立に向けた支援も含まれます。
学習内容については、子どもの理解度に合った計画的なプログラムであることが求められます。学校長は、対面指導や学習活動の状況を把握したうえで、出席扱いにできるかどうかを判断します。そのため、学習履歴が残る教材の選択や、取り組み状況を共有できるようにしておくと、相談をスムーズに進めやすくなるでしょう。
ただし、自宅でのICT等を活用した学習活動が出席扱いになるのは、基本的に「学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けることが難しい場合」とされています。実際の運用は学校や自治体によって異なるため、制度の利用を考える場合は、担任の先生や学校の担当者へ相談することが大切です。
出席扱い制度を利用したい場合は、まず学校に相談することから始めます。担任の先生や不登校支援の担当者に、現在の様子や家庭で取り組みたい学習方法を伝えましょう。
次に、利用する教材やサービスの内容を学校と共有します。ICT教材やオンライン学習を活用する場合は、「どのような学習活動を行うのか」「学習状況をどのように確認できるのか」「対面指導をどのように行うのか」などを説明できるようにしておくと安心です。必要な手続きや書類は学校や自治体によって異なるため、具体的な進め方は学校に確認しましょう。
また、出席扱いとして認められたあとも、学習状況を継続して学校と共有することが大切です。家庭での取り組みを学校と確認しながら進めることで、学習の遅れを把握でき、復学や進学に向けた相談もしやすくなります。

不登校中の勉強は、親の声かけや関わり方が大切です。ここでは、親が避けるべきNGな対応を解説します。
不登校中は、学校に通っている同級生との学習進度の差が出ることがあります。「周りはどんどん進んでいるのに」「このままで大丈夫かな」と不安になるかもしれません。
しかし、他者と学習進度を比較することは、子どもの自信を失わせる原因になることがあります。不登校中の子どもは勉強の遅れを気にしている場合が多く、比較されることで「自分だけできていない」と感じてしまう可能性があります。
大切なのは、子どもが今できる範囲で学習を続けることです。例えば、「机に向かう時間が増えた」「苦手な問題が解けた」「教材を自分で開けた」など、小さな変化に目を向けましょう。比較ではなく、本人のペースを認める関わりを意識することが大切です。
「学校に行かないなら勉強しなさい」「勉強するなら休んでもいい」といったように、登校の条件と勉強を結びつける対応には注意が必要です。一見すると学習時間を確保できるように思えますが、子どもにとって勉強そのものがプレッシャーになる場合があります。
不登校の背景には、学校への不安や人間関係の悩み、心身の疲れなどが関係しています。精神的に余裕がない状態で勉強を条件にされると、「勉強できない自分は認めてもらえない」と感じてしまうこともあります。
また、勉強を登校の交換条件にすると、学習に対する印象が悪くなるケースもあります。勉強は本来なら自分のために取り組むものなのに、親を納得させるため、学校を休むためのものとして受け止めてしまうのです。
勉強を促したいときは、子どもの体調や気持ちに合わせて取り組み方を調整することが大切です。短時間の学習や得意な教科から始めるなど、負担の少ない方法を選び、無理なく学習に向かえるタイミングを待ちましょう。
不登校の経験があっても、高校進学の道が閉ざされるわけではありません。ここでは、不登校からの高校進学に向けた選択肢を紹介します。
通信制高校は、自宅学習を中心にしながら、レポート提出やスクーリング、テストなどを通して単位を修得する高校です。毎日登校する必要がない学校も多く、生活リズムや体調に合わせて学べる点が特徴です。
不登校を経験した子どもにとって、通学の負担が少ないことは安心材料になります。人間関係や集団生活に不安がある場合でも、まずは自宅で学習を進めながら、必要なタイミングで登校すると良いでしょう。
また、個別サポートや進路相談など、メンタル面の支援に力を入れている学校もあります。高校卒業資格の取得だけでなく、大学進学や専門学校、就職を見据えたコースを用意している学校もあり、将来の希望に合わせて選べます。
一方で、自宅学習が中心になる分、自分で学習計画を立てて進める力も必要になります。サポート校(提携校)や個別指導といった支援制度が用意されている場合もあるため、不安があるときは支援体制まで確認しておくと安心です。
※サポート校:通信制高校を卒業できるよう手助けしてくれる「専門の塾」のような施設のこと
定時制高校は、全日制高校よりも授業時間が短く、夕方や夜間などに通える高校です。最近では、午前・午後・夜間など複数の時間帯から選べる学校もあり、生活スタイルに合わせて通いやすくなっています。
1日当たりの拘束時間が短いことで、体力面・精神面への負担を抑えながら通学できる点がメリットです。中学校で登校に不安があった場合でも、無理のないペースでリスタートできる環境が整っています。
また、定時制高校には様々な年齢や背景の生徒が在籍しています。学び直しをしたい人、働きながら通う人、体調に合わせて通学したい人など、事情の異なる生徒が集まるため、周囲と比較せずに自分のペースで高校生活を送れる点も魅力です。
授業時間や卒業までの年数、サポート体制は学校によって異なります。説明会や学校見学に参加し、無理なく通えそうか、学習面や生活面の相談ができるかを確認しておきましょう。
チャレンジスクールは、不登校経験のある生徒や、学校生活になじめなかった生徒などを受け入れる高校の総称です。授業は基礎から学び直せる内容になっていることが多く、中学校で勉強に遅れがある場合でも無理なく学習を再開できます。また、少人数指導や相談体制に力を入れている学校もあり、安心して学習できるようサポートしてくれます。
ただし、チャレンジスクールは設置されている地域が限られています。また、全国共通の呼び名ではなく、名称や制度の内容は自治体によって異なるため、進学先として検討する場合は住んでいる地域の教育委員会や中学校に確認してみましょう。
不登校中の勉強は、学習の遅れを取り戻すことに目を向けるのではなく、子どもの心身の状態に合わせて進めることが大切です。十分に休息が取れているか、生活リズムが整っているか、本人に学習意欲があるかを確認しながら、無理のない形で勉強を再開していきましょう。
本記事では、不登校の子どもに向けたおすすめの学習方法、出席扱いになる制度、親が避けるべきNG対応について解説しました。子どものペースを大切にしながら、家庭に合った学び方を見つけていきましょう。