育休とは? 子どもとの大切な時間を活かすために

「育休って本当に取っていいのかな?」「収入はどうなるんだろう…」
子どもが生まれる喜びと同時に、これからの生活への不安や悩みを抱えるパパやママは少なくありません。
育児休業(育休)は、そんなママやパパが子どもとの大切な時間をしっかり確保できる制度です。
家族にとって、この「今しかない時間」はとてもかけがえのないものになるでしょう。
この記事では、育休とはどんな制度なのか、基本情報から種類、その期間の過ごし方にいたるまで、パパママが安心して育休を活用できるよう分かりやすく解説します。
育休の基本
まずは育休の基本について確認しておきましょう。
育休とは? 制度の概要と目的
育休とは、1歳未満の子どもを育てるために休暇を取得できる制度(育児休業制度)です。
法律に基づき、一定の条件を満たせば男女どちらも取得でき、実子だけでなく養子も対象となります。
父親・母親ともに利用可能で、2022年10月の改正で1人の子どもにつき2回まで分割取得ができるようになりました。
さらに、2025年4月には育児と仕事の両立をより支援するため、制度の柔軟化が予定されています。
育休を取得できる期間
育児休業は、原則として子どもが1歳になるまで取得することができます。
ただし、保育所に入れないなどの理由で引き続き休業が必要と判断される場合には、最長で1歳6カ月または2歳まで延長することも可能です。
女性の場合は、出産後に取得する「産後休業(8週間)」が終わったあとから育休を取得できます。
一方、男性は、子どもが生まれた日(または出産予定日)以降から育休を取得することが認められています。
育休中の給付金
育児休業中は、原則として給与の支給はありません。
ただし、一定の条件を満たせば、「育児休業給付金」を受け取ることができます。
【育児休業給付金の主な支給要件】
雇用保険に加入している育休開始前の2年間に、11日以上働いた月が12カ月以上ある育休中に受け取る賃金が、育休開始前の月の8割未満である育休中に働いた日数が月10日以下(または10日を超えても80時間以下)である有期契約の場合、子どもが1歳6カ月になる日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと |
【支給額の目安】
育休開始日から180日まで 賃金日額×支給日数×67%育休開始日から181日目以降 賃金日額×支給日数×50% |
この給付金は非課税で、所得税はかかりません。
また、翌年度の住民税の算定にも含まれず、社会保険料も免除されます。
なお、育休中も健康保険証はこれまでと同様に使え、年金についても「納めたもの」として扱われます。
育休の申請方法:会社への申し出と必要な手続き
育児休業を取得し、育児休業給付金を受け取るためには、会社への申し出と所定の手続きが必要です。
以下に、申請の流れと必要書類について解説します。
1. 育児休業の申し出をする
まずは、育児休業を取得する意向を会社の人事・総務部門へ伝えます。
一般的には、取得希望日の1カ月前までに申し出を行います。
企業によって手続きの流れが異なる場合があるため、担当者と早めに確認しておくと安心です。
2. 必要書類を準備する
育児休業給付金の申請には、初回申請時と2回目以降で必要な書類が異なります。
企業側が手続きを行うのが一般的ですが、本人が対応することも可能です。
【必要な書類】
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書育児休業給付受給資格確認票(初回のみ)育児休業給付金支給申請書賃金台帳、出勤簿、労働者名簿など賃金額及び支払い状況を照明できるもの育児の事実を確認できる書類(母子手帳など)※1~3までの書類は事業主が用意するため、育児休業給付金の被保険者の必要書類は5のみです。 |
3. 企業がハローワークへ申請
会社が必要書類をそろえて所在地を管轄するハローワークへ提出します。
申請が受理されると、事業所宛に「育児休業給付支給決定通知書」と「次回支給申請日指定通知書」が事業所に届きます。
4. 給付金の受け取り
受給資格が認められると、指定した口座に育児休業給付金(育休手当)が交付されます。
5. 2回目以降の申請
育児休業中は2カ月ごとに支給されるため、企業は引き続き、賃金の状況を示す書類とあわせて給付金支給申請書を提出します。
育休の種類
育休には様々な種類があり、それぞれの家庭や働き方に合わせて選べます。
ここでは、基本の育児休業からパパも取得しやすくなった制度まで、代表的な育休の種類を簡単にご紹介します。
育児休業
育児休業は、原則として子どもが1歳になるまで取得できる制度です。
法律(育児・介護休業法)で定められており、企業の就業規則に明記されていなくても取得できます。
取得できるのは、原則として1歳未満の子どもを養育している従業員で、申請側が一定の要件を満たさない場合などを除き、会社側がこれをすることは拒否できません。
保育所に入れないなどの事情によっては、最長で2歳まで延長することも可能です。
産後パパ育休(出生時育児休業)
産後パパ育休(出生時育児休業)は、2022年10月に創設された新しい制度で、産後8週間以内に最大4週間(28日)の休業を取得できるのが特徴です。
休業は2回まで分割可能で、柔軟な取得が認められています。
この制度は、一般的な育児休業とは別枠で取得可能です。
対象は「産後休業を取得していない労働者」で、基本的には父親を想定した制度ですが、養子縁組をした女性なども利用できます。
取得するには、原則として2週間前までに申し出る必要がありますが、労使協定により申出期限が1カ月前となっている場合もあります。
パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスは、父母ともに育児休業を取得する場合に適用され、育児休業の期間が子どもが1歳2カ月になるまでに延長される制度です。
例えば、母親が育休を取得し、後から父親が交代で取得することで、家庭の状況にあわせた分割取得が可能になります。
ただし、パパ・ママ育休プラスで延長された期間も含め、育児休業の全体の最大取得期間は原則一人あたり1年間です(産後パパ育休は別枠)。
一定の要件を満たせば、最長で2歳まで延長することもできます。
育休中の過ごし方と注意点

育休中は子どもとの時間をしっかり楽しみながら、これからの生活や仕事のことも少しずつ考えておきたい時期です。
ここでは、育休中の過ごし方や気をつけたいポイントをわかりやすくお伝えします。
家計の確認
育休中は、給与が支給されないケースが多く、育児休業給付金が主な収入源となる方も少なくありません。
給付金の支給額やタイミングを確認し、生活費・育児費用・貯蓄計画を見直すことが大切です。
あらかじめ以下の点を確認しておきましょう。
- 育児休業給付金の支給額と支給スケジュール
- 家計の固定費と変動費の見直し
- 必要な支出(育児用品、保育料など)の見積もり
育休中に家計簿をつける習慣を始めておくと、復職後の家計管理にも役立ちますよ。
育休中の就業制限について
通常の育児休業では、一時的・臨時的な就労に限って認められますが、前述の「産後パパ育休(出生時育児休業)」では、条件を満たせば部分的な就業も可能になりました。
【出生時育児休業中の就業のポイント】
- 事前に労使協定の締結が必要
- 就業可能なのは所定労働日の半分まで
- 所定労働時間の半分未満であること
- 労働者の申出 → 事業主の候補提示 → 労働者の同意 → 事業主の通知、という流れ
- 休業開始前の申出は変更・撤回も可能
働きながら育児もしたいと考える場合は、就業条件をしっかり確認し、無理のない範囲で調整しておくことが重要です。
復職に向けた準備と情報収集
子どもとの毎日を過ごしながら、「そろそろ仕事のことも考えないと…」と思い始める時期。
そんなタイミングで少しずつ進めておきたいのが、復職に向けた準備です。
まず取り組みたいのは「保活(保育園探し)」。
地域によっては希望の園に入れないこともあるため、見学や情報収集、申込みのスケジュールは早めに確認しておくと安心です。
保育園が決まると、復職までのスケジュールも立てやすくなります。
また、暮らしの動線や子どもが過ごす環境を見直しておくのもおすすめです。
ベビーグッズの整理や家事の効率化、安全面の整備など、日々の負担を軽くしておくと復職後の慌ただしさを減らせます。
加えて、復職後の働き方や家族の時間の使い方についても、話し合っておけると安心です。
どんなふうに子育てと仕事を続けていきたいか、夫婦で共有しておくことが、暮らしを支える土台になります。
育休に関するQ&A

育休を取るときには、自分は育休が取れるのかや社会保険料の仕組みなど、わからないことや気になることがたくさん出てきますよね。
ここでは、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。
育休を前向きに、そして安心して活用するためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
育休は正社員しか取れないの?
結論から言うと、 育児休業は正社員に限らず、一定の条件を満たせばパートや契約社員、派遣社員なども取得可能です。
育児休業は「育児・介護休業法」で定められている制度で、対象となる労働者は以下の条件を満たす必要があります。
【育児休業が取得できる条件】
会社に 雇用されていること(正社員・契約社員・パートタイマーなど雇用形態は問わない)子どもが1歳(※一定条件により最大2歳まで)未満であること引き続き雇用されている期間が 1年以上見込まれること(会社によっては6か月以上の場合もあり)休業開始予定時点で、子どもの養育に直接関わっていること |
これらの条件を満たせば、正社員以外でも育休取得は可能です。
育休中の社会保険料は?
育児休業中は、会社と従業員の両方が負担する社会保険料が免除される制度があります。
対象となるのは、健康保険・介護保険(該当者のみ)・厚生年金保険です。
手続きを行えば、休業中の保険料は支払う必要がなくなります。
免除期間は「育児休業を開始した月」から「終了日の翌日が属する月の前月」までです。
たとえば、4月15日から12月14日まで育休を取った場合、4月〜11月分の保険料が免除されます。
ただし、免除されるかどうかの判断は「月末が育休に含まれているかどうか」がポイントです。
また、月末が含まれていない場合でも、その月に14日以上育休を取得していれば免除の対象になります。
育休後は育休前と同じように働くことができる?
必ずしも育休前と同じように働けるとは限りません。
ユームテクノロジージャパン株式会社が行なった調査によると、復帰後には仕事に関する何らかの「壁」を感じる人が多くいます。
実際に育休から復帰した人の約8割が、「かなりある」「ややある」といったかたちで「壁」を感じたと回答しています。
とくに多いのは、「育休前に積み上げたキャリアやポジションが維持されない」(46.4%)という悩みです。その他にも「会社の方向性がつかめない」「これまでのスキルや経験が活かしにくい」といった声もありました。
こうした「壁」を乗り越えるために、育休復帰後に意識したこととして多く挙げられたのが次のような行動です。
- 周囲への感謝を伝える(65.5%)
- 夫婦で家事を分担する(39.3%)
- 頑張りすぎないことを意識する(39.3%)
つまり、復職後は「同じ働き方を目指す」のではなく、働き方や意識のバランスを見直すことが、スムーズな復帰のカギになっているといえるでしょう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000086740.html
まとめ
育休は、子どもと過ごすかけがえのない時間を大切にするための制度です。
1歳未満の子どもを育てるために、仕事をお休みすることができます。
最近では、「産後パパ育休」や「パパ・ママ育休プラス」など、パパも育児に参加しやすい制度が整ってきました。
育休が終わる頃には、職場への復帰や生活の変化に不安を感じることもあるかもしれません。
そんなときは、家族や職場と相談しながら、自分たちらしいやり方で少しずつ前に進んでいけるといいですね。
育休は、ただの「お休み」ではなく、これからの働き方や暮らし方を見直すチャンスでもあります。
制度を上手に活用して、子どもと過ごす今この瞬間を、心から大切にしていきましょう。