子どもの感受性とは?才能を伸ばすための理解と関わり方

感受性が豊かな子どもは、人の心の動きを繊細にキャッチする能力に長けています。そのため、お友達や家族との関係を上手に築くことができ、周りの人への思いやりを示すことができるのです。
近年、学校教育において、芸術教育や体験活動を通じて、子どもたちの感性を育む取り組みが行われています。家庭においても、感受性をどのように理解し、伸ばしていけるかを考えることが大切です。
この記事では、感受性とは何かという基本や、感受性が高いことのメリット・デメリット、家庭でできる感受性を豊かにする方法、さらに親が注意すべきポイントをご紹介します。感受性を才能として捉え、可能性を伸ばすための関わり方を一緒に見ていきましょう。
子どもの感受性の基本
まず初めに、感受性とは具体的にどのような能力なのか、そして感受性が高い子にはどのような特徴が見られるのかについて、具体例を交えながら解説します。
感受性の定義
感受性とは、音響・視覚・人の発言や表情など、周囲の様々な刺激や印象を感じ取る能力のことを指します。感じ取る力の鋭敏さと言い換えることができ、その程度は一人ひとり異なります。
感受性は、子どもがまだ言葉で十分に表現できない複雑な感情や状況を、直感的に理解するための手助けとなります。例えば、家族がちょっと疲れている様子を見て、「大丈夫?」と声をかけたり、悲しい音楽を聴いて自然に涙ぐんだりするのは、感受性が働いているからです。また、絵本の登場人物の気持ちに深く共感したり、自然の美しさに心を動かされたりすることも、感受性の表れといえます。
感受性が高い子の特徴
感受性が高い子には、共通して見られる特徴がいくつかあります。ここでは、日常の中で現れやすい特徴をご紹介します。
● 感覚が鋭い
感覚が鋭く、音・光・匂いといった五感に対して過敏に反応します。例えば、以下のような場面で感覚の鋭さが見られます。
・デパートや遊園地など、人混みや大きな音がする場所でぐったりしてしまう
・洋服のタグや素材が気になって着るのを嫌がる
・食べ物のにおいや食感に強く反応し、偏食に見えることがある
このような感覚の敏感さは、神経質に映るかもしれませんが、子どもにとって不快な刺激であることが多いのです。
● 他人の気持ちを敏感に感じ取る
感受性の高い子は 他人の気持ちを敏感に感じ取るため、日常の中でこんな様子が見られることがあります。
・表情や声のトーンのちょっとした違いから、相手の気分を察する
・落ち込んでいる人や怒っている人にすぐ気付ける
・友達の小さな変化にいち早く反応し、声をかけたり様子を見守ったりする
人の感情の変化に敏感な子は、大人の会話から雰囲気を感じ取って、不安になったり気を使ったりすることがあります。このような共感力は、人間関係を育むうえで大きな強みとなりますが、同時に疲れやすさにつながることもあるため、注意が必要です。
● 物語や芸術に強く反応する
芸術や物語に深く入り込む点も感受性が高い子の特徴の一つです。絵本や映画、音楽などに強く反応し、以下のような様子が見られます。
・登場人物の気持ちに深く共感し、一緒に喜んだり涙を流したりする
・絵本の世界に入り込んで、その後も余韻に浸っていることがある
・美しい風景や音楽に強く心を動かされる
このような反応の豊かさは、創造性や想像力の土台となり、将来的に芸術的な才能につながることもあります。
感受性が高いことのメリットとデメリット

高い感受性は、繊細であることの背後に多くの可能性を含んだ魅力的な特性です。しかし、普段の生活では戸惑う場面に遭遇することもあるでしょう。ここでは、感受性の高さがもたらすメリットとデメリットをご紹介します。
メリット:豊かな感性や想像力
感受性が高い子は、豊かな感性や想像力をもち、芸術分野での才能や創造的思考を発揮しやすいといったメリットがあります。自然の美しさ、音楽の調和、人間関係の細やかなニュアンスなどを理解し、形に表現する能力に長けているのです。
例えば、色彩の微細な違いを感じ取って絵に表現したり、日常の何気ない瞬間からインスピレーションを得て独創的なアイデアを生み出したりします。また、粘土遊びや工作でも、他の子どもとは違った発想で作品を作り上げることが多く、周囲の大人を驚かせることもあります。
さらに、想像力が豊かなことで、物語の登場人物の心情を深く理解する能力が優れています。読書の際には、文字から情景を鮮明に思い描いたり、登場人物の気持ちを自分のことのように感じたりすることができるのです。このような想像力の豊かさは、歴史の人物に感情移入して学んだり、科学の実験結果を予測したりといった、将来の学習活動や創作活動において良い効果をもたらしてくれます。
メリット:共感力が高く、優しい
他者の感情に寄り添う能力に優れているため、共感力が高く、優しい点も感受性が高いことのメリットの一つです。涙を流している子を慰めたり、そっと傍にいてあげたりと、本能的に優しい行動を取ることができるのは、高い感受性があるからこそです。
これらの共感力は、日常の様々な場面で発揮されます。例えば、兄弟が叱られているときに一緒に悲しい顔をしたり、ペットが体調を崩しているときに心配そうに世話をしたりします。また、絵本やテレビの中の登場人物に対しても深く共感し、「可哀想だね。」「嬉しいね。」といった感想を口にします。
場の空気を読み取る能力にも秀でているため、大人の表情や声のトーンから機嫌や体調を察知したり、友達同士のちょっとした雰囲気の変化に気づいたりする敏感さを持っています。グループ遊びの際には、仲間外れになりそうな子に声をかけたり、みんなが楽しめるように配慮したりする姿も見られるでしょう。
ただし、過度に気を遣いすぎてしまう場合もあるので、家庭ではリラックスできる環境を整えてあげることが重要です。
デメリット:ストレスや疲れやすさ
感受性の高さ故、外部からの刺激に対して敏感になり、ストレスや疲労を蓄積してしまうことがデメリットの一つです。この疲れやすさは、脳が多くの情報を処理し続けていることが原因です。
例えば、ショッピングモール内では、店内の音楽、人々の話し声、商品の色彩、人の動き、照明の明滅など、あらゆる刺激を同時に受け取って処理しています。このような場面で、感受性の高い子どもは多くの刺激を受け取るため、疲れやすい傾向にあるのです。
また、運動会や発表会などのイベントでも同様に、多くの人の視線や期待、周囲の興奮状態などを敏感に感じ取ってしまい、普段以上にエネルギーを消耗します。楽しんでいるように見えても、実は相当な負担を感じている場合があるので注意しましょう。
デメリット:感情の起伏が激しい
感受性が高いと、感情の変動が大きくなる傾向があります。嬉しい出来事があると全身で喜びを表現し、悲しいことがあると長期間その気持ちを引きずってしまうなど、感情の振り幅が大きいのが特徴です。
また、感情の整理が間に合わずに、突然機嫌を損ねたり涙を流したりすることもあります。親の立場からすると、「どうしてそこまで大袈裟に反応するの?」と疑問に思うこともあるかもしれませんが、単なるわがままや甘えではなく、心の処理能力が限界に達しているサインと考えられます。様々な刺激を受け続けると、心がオーバーフロー状態になってしまうのです。
子どもの感受性を豊かにする方法
感受性は、毎日の関わり合いや様々な経験を積むことで豊かにできます。ここでは、子どもの感受性を豊かにする方法をご紹介します。
五感を刺激する体験を増やす
自然環境での活動、音楽鑑賞、美術鑑賞など、五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を刺激する体験は、感受性の発達を促進する効果があります。例えば、森林散歩をしながら野鳥の鳴き声に注意を向けたり、一緒に料理をして香りや味わいを楽しんだりといった体験がおすすめです。
重要なのは、「どんな気持ちになった?」と子どもに感想を聞くことです。感じたことを言語化する練習を通して、自分自身の理解や表現する能力も同時に育っていきますよ。
しっかり話を聞いて共感する
感受性を豊かにするためには、子どもに安心して自分の気持ちを表現してもらうことが重要です。そのため、子どもの話に真剣に耳を傾け、共感を示しましょう。
一方で、「そんなことで泣くものではありません。」「大したことではないよ。」といった反応をしてしまうと、心を閉ざしてしまう可能性があります。共感的な態度は、感受性を伸ばしていく上で欠かせない要素です。
読み聞かせやごっこ遊びで想像力を育む
絵本の読み聞かせやごっこ遊びを通して、子どもの想像する能力を育みましょう。物語の人物の感情を自分事のように受け止め、物語の世界に深く没入する経験を重ねることで、感受性が豊かになります。
また、ごっこ遊びでは自分以外の立場になりきることで、他者の視点を学ぶことができます。共感する力を養うために、日々の遊びの中に想像することの楽しさを組み込みましょう。
親が注意すべきこと

子どもにとって親の言動は非常に大きな影響力を持ち、何気ない一言や対応の仕方が、子どもの自信を失わせたりする可能性があります。最後に、子どもと向き合う際に親が注意すべき点を解説します。
子どもの感情を否定・軽視する
「そんなことで泣かないで。」「考えすぎじゃない?」といった発言は、悪意がないとしても、子どもは拒絶されたように受け取ってしまいます。特に感受性の高い子は、感情の変化を敏感に捉える分、深く傷つくことがあるため注意が必要です。
大切なことは、子どもの気持ちをそのまま受け入れることです。否定から入るのではなく、理解することから始める姿勢が、信頼関係を築いてくれますよ。
他の子どもと比較する
他の子どもと比較することは、子どもの自己肯定感を著しく低下させてしまいます。その結果、自分が劣っていると感じ、強い不安や自己否定の感情に陥ることも。
一人ひとりの子どもが持つ感受性のあり方や反応パターンは全く異なります。比較するのではなく、そのままで大丈夫であることを伝えることで、子どもは安心して自分らしさを発揮できるようになりますよ。
チャレンジの機会を奪う(親が問題解決する)
子どもが傷つくことを恐れるあまり、親が先手を打って失敗を回避させたり、問題に過度に介入したりすることがあるかもしれません。そのようにしてチャレンジの機会を奪うことは、子どもが成長する貴重な機会を奪ってしまいます。
見守る勇気もまた、親にとって必要な資質です。子どもが困難に陥った際には、「どうすればいいと思う?」「一緒に考えてみよう!」と声をかけることで、自力で乗り越える経験を積むことができます。子どもは失敗する体験を通して、感情との向き合い方を身につけていくため、介入せず見守ってあげましょう。
まとめ
高い感受性は、困難さや大変さを感じさせる面がありますが、視点を変えれば価値のある能力でもあります。他者の心を深く理解できる力や芸術的な感覚に恵まれている点や、自分だけの豊かな世界を表現できる才能などは、感受性があってこその強みです。
親としてできることは、子どもの意見を尊重し、安心して感情を表現できる環境を作ること。否定せず、比較せず、温かく見守りながら共に成長を喜ぶことです。
豊かな感受性は、人生の様々な局面で子どもの大きな武器となります。日々上手に関わることで、子どもの感受性を伸ばしていきましょう。