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インリアルアプローチとは?子どもの言葉を育てるコミュニケーション術

インリアルアプローチの基本

子育てをしていると、「この関わり方で合っているのかな?」「もっとスムーズに子どもとやりとりできたら…」と感じることはありませんか?そんな親の悩みに寄り添い、子どもの言葉の成長を自然に引き出すための方法が、インリアルアプローチです。インリアルアプローチは言葉の発達だけでなく、親子の信頼関係を深めるコミュニケーション術としても注目されています。

この記事では、インリアルアプローチの基本や7つの技法、家庭で実践する際のコツをご紹介します。子どもの話したい気持ちに火をつけ、自然な形で発達を支援する環境づくりを一緒に学んでいきましょう。

インリアルアプローチの基本

まず、インリアルアプローチの基本的な内容、実践することで期待できる効果についてご紹介します。

インリアルアプローチとは?

インリアルアプローチは、子どもの自発的な言葉の発達を促すコミュニケーション術です。1974年にアメリカのリタ・ワイズ博士によって提唱されました。インリアルアプローチでは、子どもが自分から話したくなるような環境を整え、やりとりの中で言葉の力を育てていきます。大人が教えるのではなく、子どものペースに合わせて関わることが特徴です。言葉を教えるのではなく、引き出す姿勢が重視されているのです。

また、インリアルアプローチは、発語のみに注目するのではなく、子どもの内面や感情、表情、身振りなどすべてを含めたコミュニケーションに焦点を当てています。そのため、言葉の出ない時期であっても、子どもの伝えたいという意志を尊重し、寄り添って応答していくことで、言葉の芽を丁寧に育てることができるのです。

実践することで期待できる効果

インリアルアプローチを続けていくことで、子どもの発話数が増えたり、表現力が高まったりする効果が期待できます。また、子どもと親の信頼関係が深まり、情緒的な安定にもつながります。このように言葉だけでなく、心の成長も促す点がインリアルアプローチの魅力です。

さらに、伝えることは楽しいという体験を子どもが積み重ねることにより、自己肯定感の向上や、社会性の発達にもつながっていきます。

インリアルアプローチを支える4つの基本姿勢「SOUL」

インリアルアプローチを支える4つの基本姿勢「SOUL」

インリアルアプローチを実践するうえで大切なことが、大人側の関わり方です。その指針となるのが、以下の「SOUL」という4つの姿勢です。

S:Silence(静かに見守る)

O:Observation(よく観察する)

U:Understanding(深く理解する)

L:Listening(耳を傾ける)

それぞれの頭文字が意味する行動を意識することで、より効果的にコミュニケーションを図れるようになります。それぞれの意味について、以下より詳しく解説します。

S:Silence(静かに見守る)

まず大切なのが、子どもが何かをしようとしているとき、あえて何も言わずに静かに待つことです。大人が口を挟まず見守ることで、子どもが自分で考えたり、行動したりする時間が生まれます。沈黙を恐れず、子どもの内発的な行動を信じて待つ姿勢が求められるのです。

大人が先回りせず、言葉を控えることによって、子どもの思考や感情が育ち、言葉を発したくなるタイミングが自然と訪れるようになります。静けさの中で、子どもが自ら発する言葉に耳を傾けてみましょう。

O:Observation(よく観察する)

子どもの気持ちや興味を知るためには、観察が欠かせません。表情や動き、声のトーンなどに注意を向け、子どもが何を考えているのか、何に興味を持っているのかを感じ取りましょう。また、観察することで、より適切なタイミングで言葉を返せるようになります。

観察することは、子どもの微細な反応や、言葉にできないメッセージを受け取るための大切な手段です。好きな遊び、よく触るおもちゃ、特定の動作など、その子ならではのサインを読み取り、興味や気持ちに共鳴してあげましょう。ただし観察といっても、ただ見ているだけではなく、子どもを理解するという意識で関わることが大切です。

U:Understanding(深く理解する)

観察を重ねる中で得た情報をもとに、子どもの気持ちや背景を理解することが大切です。なぜこの行動をしたのか、今どんな気持ちなのかを考えることで、子どもに寄り添った関わり方が可能になるからです。親が理解してくれていると感じることで、子どもも安心して心を開くようになります。

子どもは大人が思う以上に繊細で、自分の気持ちを表現する方法をいつも模索しています。時には、言葉で伝えられない不安や喜びもあるはずです。そうした心の動きを受け取ってあげることで、子どもとの豊かなコミュニケーションが可能になります。

L:Listening(耳を傾ける)

Listeningとは、子どもの言葉をただ聞くのではなく、気持ちごと受け取るように耳を傾けることを意味します。うんうん、と相づちを打ちながら聞くことで、子どもは自分の気持ちが受け止められていると感じるのです。

子どもの言葉は、時に文法的に未熟であったり、意味が不明瞭であったりしますが、込められた気持ちや意図を汲み取ろうとする姿勢を大切にしましょう。ちゃんと聞いてくれるという実感は、子どもの言語発達だけでなく、信頼関係や自尊感情の土台にもなります。相手の言葉に対する聴き方が、子どもの心を開いていくのです。

子どもの言葉を引き出す言語心理学的技法

インリアルアプローチでは、具体的な言語技法を取り入れることで、より効果的に言葉を引き出すことができます。ここでは、代表的な7つの技法をご紹介します。

ミラリング

ミラリングとは、子どもの言葉や行動をそのままオウム返しのように返す方法です。「わんわん!」と言ったら「わんわんだね!」と返すようなイメージです。ミラリングすることで、子どもは自分の言葉が受け止められていると感じて安心します。

さらに、ミラリングには心の鏡としての役割もあります。子どもの言葉を繰り返すことで、子どもは自分の発した音や表現をもう一度耳で聞き、自己認識を深めることができます。また、言葉を返す際には抑揚や表情も添えると、感情のニュアンスまで伝えやすくなりますよ。

モニタリング

モニタリングとは、子どもの行動を実況中継のように言葉にする方法です。例えば、「積み木を積んでるね」「赤いブロックだね」などのように、ナレーションをつけて語りかけるのです。モニタリングにより、行動と言葉のつながりを自然に学ぶことができます。

モニタリングは、言葉に頼らないコミュニケーションが中心になっている子どもにとって、有効なアプローチです。大人が子どもの行動に合わせて言葉を添えることで、子どもは言語と行動の結びつきを理解しやすくなるためです。加えて、自分のことを見ていてくれるという安心感が、子どもの自己肯定感を育みます。

パラレルトーク

パラレルトークは、大人が子どもの代わりに、行動や気持ちを言葉にしてあげる関わり方です。例えば、お人形で遊んでいる子どもに、「くまさんにご飯をあげてるんだね」と声をかけたり、泣いている様子を見て「パパがいなくなって寂しいのかな」と語りかけたりするような場面がこれに当たります。

大人がさりげなく言葉を添えることで、子どもは自分のことをわかってくれていると感じることができ、安心します。また、自分の気持ちや行動に言葉が結びつく経験を重ねることで、自然と言語の理解も深まっていきます。まだ言葉でうまく伝えられない時期だからこそ、パラレルトークは子どもの内面に寄り添い、やりとりを育てる有効な方法なのです。

セルフトーク

セルフトークとは、大人自身の行動を言葉にする方法です。「コップを持ってお水を入れるよ」「これからお片付けするね」など、子どもが見ている前で自分の行動を言葉にすることで、子どもに言葉の使い方を自然に伝えることができます。

セルフトークは、子どもがまだ会話に参加できない段階でも、言葉を学ぶ大きな手助けになります。日常の流れや行動に言葉を添えることで、言語と生活のつながりを理解できるのです。また、大人の言葉の使い方が直接的なモデルとなるため、正しい文の構造や語彙の広がりにもつながりますよ。

リフレクティング

リフレクティングは、子どもの言い誤りを正しく直す技法です。例えば、有名なアニメ映画でもトウモロコシを「トウモコロシ!」と言い間違えるシーンがあるように、子どもの言い間違いはよく見られます。リフレクティングでは、こういった言い間違いがあったときに、「おいしそうなトウモロコシだね!」といったように、正しい言葉を聞かせてあげます。

ポイントは、”否定”や”指摘”をせずに自然と聞かせてあげる事。嫌な気持ちにならずに自発的に修正することで、安心して感情を出せるようになります。

エキスパンション

エキスパンションとは、子どもの言葉に少しだけ言葉を加えて返す方法です。「くるま!」と言ったら「赤い車だね!」のように返すことで、自然と語彙や文の構造を広げられます。また、子どもの言葉を否定せず、肯定しながら発展させるため、学びがスムーズに進められる効果も期待できます。

エキスパンションの良さは、子どもの表現を尊重しながら、自然な形で言葉のレベルアップを促せる点です。会話のキャッチボールを続ける中で、文の構造や新しい単語を覚えるだけでなく、自分の考えを伝える喜びを感じやすくなります。

モデリング

モデリングは、子どもとの自然な会話を通して言葉を習得することを目的とした技法です。コミュニケーションをとりながら、新しい言葉のモデルを教えてあげます。例えば、子どもが「くるま!」と言った際に、「くるま、速いね~!」と返してあげます。これにより、日常のコミュニケーションの中で自然に言葉の発達を促すことができます。

モデリングの良いところは大人が言葉や行動のモデルを示し、それを真似することで発達を促すことができることです。たくさん話すことで、子どもの表現が豊かになります。

家庭で実践するインリアルアプローチのコツ

家庭で実践するインリアルアプローチのコツ

インリアルアプローチは、日常生活の中でも簡単に取り入れることができます。最後に、家庭での実践に役立つポイントを2つご紹介します。少しの工夫で子どもとのやりとりをスムーズに変えていきましょう。

子どものリズムに合わせたコミュニケーションを行う

子どもは自分のペースで考えて行動しています。そのため、大人が急かしたり先回りしたりせず、子どものテンポに合わせて接しましょう。安心してコミュニケーションがとれるようになるまで、焦らず、見守る姿勢が大切です。

特に幼児期は、思考と言葉のスピードが一致しないことがよくあります。大人が沈黙や間を恐れず待つことで、子どもが自分の考えを整理する時間をもてます。「急がせない」「答えを決めつけない」ことで、子どもはのびのびと表現する力を発揮できるようになるのです。

会話や遊びを通してコミュニケーションを楽しむ

会話の中で一方的に話しかけるのではなく、子どもの興味に寄り添って一緒に楽しむことが大切です。ごっこ遊びや絵本の読み聞かせなど、自然な形でやりとりを楽しむ中にこそ、言葉の芽が育っていきます。

子どもは、楽しいと感じる瞬間に、言葉が伸びやすくなります。無理に教え込むのではなく、一緒に遊び、一緒に感じる中で、自然と言葉の世界を広げてあげましょう。

まとめ

インリアルアプローチは、子どもの「話したい」「伝えたい」という気持ちを自然に引き出すことを大切にする関わり方です。特別な教材やトレーニングがなくても、日々の生活の中でできるちょっとした工夫が、子どもの言葉や心の発達に大きな影響を与えます。

この記事では、インリアルアプローチの基本や「SOUL」の姿勢、具体的な言語心理学的技法、そして家庭での実践のコツを紹介してきました。これらはすべて、子どもにとって安心できる関係性と、自由に表現できる環境を整えることにつながります。大人が焦らず、子どものペースを尊重しながら関わることで、自分の気持ちや考えを言葉にする力を少しずつ身につけられますよ。

また、インリアルアプローチは子どもだけでなく、大人自身の関わり方を見直すきっかけにもなります。子どもとのコミュニケーションを見つめ直すことで、より豊かな親子関係や、相互理解の深まりが生まれるでしょう。

日々のコミュニケーションに無理なく取り入れられるインリアルアプローチ。家庭でも取り入れやすい工夫がたくさんあるので、ぜひ小さな一歩からはじめてみてください。言葉だけでなく、親子の絆もぐっと深まるはずです。

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