子どものストレスを理解する:保護者ができること

子どもの元気がない、イライラしているなど、いつもと違う様子に悩んでいませんか?もしかすると、子どもがストレスを抱えているサインなのかもしれません。
ストレスを感じている場合、大人であれば自分に合ったストレス解消法を実施したり、誰かに相談したりできます。しかし、子どもは自分の気持ちを言葉にするのが難しく、ストレスの原因を自分で解決できないことも多いです。
この記事では、次の内容を紹介します。
- 子どものストレスの原因
- 子どもがストレスを抱えているときに現れるサイン
- 子どもがストレスを抱えるときの保護者がとるべき対応・NG行動
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。
子どものストレスの原因
子どもがストレスを感じる原因は、家庭生活や園・学校での集団生活など、非常に多岐にわたります。ここでは環境の変化と人間関係について紹介します。
環境の変化
- 入園・入学・進級
新しい人間関係を構築し、生活リズムも大きく変化するので、期待とともに不安や緊張を感じやすい時期です。特に小学校入学は、保育園や幼稚園とは異なる集団行動のルールと学習への適応を求められるので、大きなストレスとなることがあります。
- 引っ越し・転園・転校
住み慣れた場所を離れて新しい家で生活するため、環境の変化に戸惑う子どもは少なくありません。また、転校・転園を伴うことも多いため、新しい友達や先生との関係を築くことに戸惑いを感じたり、寂しさを感じたりすることもあります。
- 習い事
新しく習い事を始めることで生活リズムが変わり、練習やレッスンの負荷でストレスを感じることがあります。特に、子どものペースを無視して予定を詰め込みすぎたり、苦手なことを無理強いしたりすると、プレッシャーを感じてストレスにつながります。
- 家庭環境の変化
きょうだいの誕生や両親の仕事の変化、離婚や別居などの環境の変化も、子どもにとっては大きなストレスの要因になりえます。特にきょうだいの誕生は、今まで自分に向けられていた親の愛情が分散することへの不安や、赤ちゃんの夜泣きなどによって生活リズムが変わることもあります。「自分への関心が薄れた」と感じて赤ちゃん返りをすることも、子どもが愛情を求めている代表的なサインの1つです。
- 生活リズムの変化
長期休暇や連休明けの学校生活への切り替え、夜更かしが続く生活からの修正、旅行やイベントなどによる一時的な生活リズムの乱れも、子どもの心身に負担をかけることがあります。規則正しい生活は心身の安定に不可欠で、リズムが崩れることで自律神経の乱れから体調不良や精神的な不安定さにつながることがあります。
人間関係
- 友達との関係
喧嘩、仲間外れ、自分の意見が言えないなど、友達との関わりの中で感じるストレスは多岐にわたります。乳幼児期はものの貸し借りや遊び方などでトラブルになることが多いですが、トラブルを通して自己主張や他者との折り合いを学びます。小学生以降は、より複雑なグループ内の人間関係や陰口など、さまざまな悩みや葛藤がある時期です。年齢が上がるにつれて友達との関係も深まるので、多くの子どもが悩みます。
- 先生との関係
「先生に叱られた」「自分の気持ちを理解してもらえない」なども、子どもにとってはストレスの原因になります。先生との関係は学校や園生活ではとても重要で「怖い」「嫌われている」と感じると、学校や園を苦痛に感じることがあります。
- 家族との関係
親に叱られることが多い、過度に期待される、自分の気持ちを理解してもらえない、構ってもらえないなども、子どもにとっては大きなストレスです。特に、保護者が忙しかったり、夫婦関係が不安定であったりすると、子どもは不安を感じやすくなります。
また、きょうだい間の喧嘩、嫉妬、比較されることなどもストレスとなります。特に年上の子どもは「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」といった期待がプレッシャーとなり、我慢することが増え、赤ちゃん返りとして現れることも多いです。
ストレスサインを見逃さないために

子どもは大人と違い、自分のストレスを言葉で表現することが苦手な場合があります。特に、小学校低学年くらいまでは自分の状態や気持ちを言葉で的確に表現することが難しく、身体的な不調や行動の変化としてSOSを発することがほとんどです。そのため、保護者の方がお子さんのストレスサインに気づき、早めに対応することが大切です。
ストレスサインとは
ストレスサインとは、子どもが心や体に抱えるストレスを言葉以外の行動や態度、身体的な症状で表現したものです。子どもが「辛い」「助けて」とSOSを出している証拠だと捉え、わがままだと決めつけないようにしましょう。サインは同時に複数現れたり、時間とともに変化したりすることもあります。子どもによってサインは違うので「いつもと違うところはないか」という変化に敏感になることが大切です。
「感情」のストレスサイン
- イライラしていて怒りっぽい
- 癇癪を起こしやすい
- 落ち着きがなく、焦っている
- 神経質になる
- ちょっとしたことですぐに泣く
- ぼんやりしている
- 忘れっぽくなる
- 無気力や無関心になる
感情のサインは、イライラして怒りっぽくなる、落ち着きがなくなる、少しのことですぐに泣いてしまうなど、いつもは気に留めないことでも反応してしまうケースが多いです。逆に、ぼーっとしたり無気力になったりすることで現れる子どももいます。
「身体」のストレスサイン
- 腹痛や頭痛などを訴える
- 便秘・下痢、または両方を繰り返す
- おもらしやおねしょが増える
- トイレが近くなり、頻回に行く
- めまいを訴える
- だるそうで元気がない
- チックが出たり悪化したりする
- 姿勢が保てず、すぐ横になる
- アレルギー症状の悪化(アトピー性皮膚炎、喘息発作など)
- じんましん
- 風邪を引きやすい、微熱が続く
- 声が出なくなる
※チック:自分の意思とは関係なく、身体が動いたり声が出たりする癖のような症状
身体のストレスサインは胃腸が自律神経の影響を受けやすいため、特に腹痛を訴えるケースが多いです。病気なのかストレスによるものなのかの判断は難しいため、症状を訴えるときには一度診察を受けるほうが安心です。
「食欲」のストレスサイン
- 食欲がない / 食べ過ぎる
- 体重の増減
- 吐き気がある
食欲がなくなって好きなものでも食べたくなくなったり、逆に普段よりもたくさん食べたりすることでストレスを解消しようとします。食べる量が変化することで、短期間で急激な体重の増減が認められる場合もあります。
「睡眠」のストレスサイン
- 寝つきが悪い
- 途中で目が覚める
- 寝過ぎる
- 夜泣きをする
- 寝言が増える
- 歯ぎしりをする
睡眠は心身の健康に深く関わり、睡眠の質が低下することで日中の活動にも影響を与えることがあります。眠りが浅くなって途中覚醒や寝言、歯ぎしりが増える、逆に眠りすぎてしまうなどのサインが出る子どももいます。
「行動」のストレスサイン
- 甘える
- 赤ちゃん返り
- 暴力的・反抗的な態度をとる
- 学校や園に行きたがらない、ひきこもりがち
- おしゃべりになる / 口数が減る
- 1人でいることを怖がる / 1人で過ごすようになる
- 絵を描くときのモチーフや色遣いが変わる
- 好きな遊びをしなくなる
- 遊びの中で繰り返し今起こっていることを再現する
- 爪を噛んだり髪を触ったりする
甘えや登校・登園渋り、暴力的・反抗的な態度は、行動のストレスサインとしてよく見られるものです。また、不安の気持ちから人との関わり方に変化があり、1人で過ごしたがったり、誰かと一緒にいないと不安になったりすることがあります。また、不安や緊張を感じたときに「自己刺激行動」と呼ばれる、自分を落ち着かせようとする行動として、爪噛みや髪を触るなどの行動をする子どももいます。
子どものストレスサインに気づいたら?

子どものストレスサインに気づいたら、早めに対応することが大切です。この章では具体的な方法を紹介します。
生活リズムを変えない(環境変化のストレスを与えない)
まずは規則正しい生活リズムを整えましょう。特に、朝は決まった時間に起きると、夜も自然に眠れるようになります。体内時計が整うことで心身のバランスが安定しやすくなるため、リズムが崩れがちな週末や長期休み期間も、大きく生活リズムを変えないようにしましょう。
睡眠の質を高めることも大切です。日中に適度に体を動かす活動をする、寝る前のスマートフォンやタブレットの使用は避けるなど、スムーズに眠るために日中や寝る前の過ごし方も、できる範囲で気を配りましょう。
また、子どもの体調や心の状態が不安定なときは、なるべく急な予定変更は避けて慣れた環境で過ごせるように配慮することが大切です。習い事や外出の予定も、子どもの状態を見て調整し、無理強いしないようにしましょう。
声をかけ、子どもの話を最後まで聞く
子どもの気持ちに寄り添い、安心して話せるような雰囲気作りを心がけましょう。話しかけるときは「どうしたの?」「大丈夫?」といった曖昧な聞き方ではなく、「最近元気がないけど、なにか困っていることはある?」など、具体的で答えやすいようにしましょう。
ただし、子どもが答えたがらなかったり、1人になりたがったりしているときに、無理に聞き出そうとすると心を閉ざしてしまいます。答えたくない場合は、「話したくなったらいつでも声をかけてね」と様子を見守るのが良いでしょう。
子どもが話しているときに口を挟んだり、否定したりせずに最後まで聞くことも大切です。つい「それは違うよ」「こうすべきだね」と言いたくなりますが、まずは「そうなんだね」と否定せずに受け止めたり「それは悲しかったよね」と気持ちを代弁したりしましょう。話を聞いたうえで「お母さん(お父さん)はこうすると良いと思ったよ」と親の意見を伝えると、子どもも受け入れやすいです。
優しく抱きしめる、頭をなでる、手を握るなどのスキンシップも安心感を与えます。大きい年齢の子どもの場合は、一緒に買い物に出掛ける、会話をすることも有効です。子どもの年齢や個性に応じて対応しましょう。
また、気持ちを言葉にすることが難しい年齢の子どもの場合は、行動を観察してみましょう。ストレスサインの内容や、サインが出た日時・場面・落ち着くまでの時間などを記録しておくと、ストレスを感じる原因への理解や、カウンセリングを受けるときに役立ちます。
ストレス発散につながる遊びや活動を提案する
ストレスをため込まないためには、適切に発散することが重要です。子どもが楽しみながらストレスを解消できるような遊びや活動を積極的に提案してみましょう。無理強いはせず、子どもの興味や気分に合わせることが大切です。具体的な遊びや活動は、次のようなものが挙げられます。
- 体を動かす遊び
体を動かすことで、ストレスホルモンが減少し、気分を高めるホルモンが分泌されると言われています。公園で走り回る、自転車に乗る、ボール遊びをするなど、子どもが好きな運動を取り入れましょう。また、トランポリンや簡単な体操など、家の中でもできる運動も効果的です。
- 子どもが好きな遊び
大人でも趣味や好きなことに没頭することで、ストレスを発散している人は多いのではないでしょうか。子どもも同じで、好きな遊びをしているときは、ストレスの発散につながります。お絵かき、人形ごっこ、ミニカーや電車遊びなど、子どもが好きな遊びがあれば、思いっきり遊び込めるように環境を整えてあげましょう。
- 自然や動物との触れ合い
自然の中で過ごす時間は心を落ち着かせることができ、癒し効果があります。太陽の光を浴びたり、土や植物に触れたりすることは、五感を刺激してストレス軽減に繋がりますよ。散歩やピクニック、家庭菜園など、家庭でできる範囲で自然に触れ合う機会を増やしてみましょう。虫取りやペットとの触れ合いなど、子どもが好きな動物との触れ合いも有効です。
ストレスサインに気づいたときのNG行動
子どもがストレスを抱えているときに親が不適切な対応をとると、ストレスを増幅させたり、子どもが心を開かなくなる原因になったりすることがあります。この章では、親がとってはいけないNG行動を3つ紹介します。
ストレスの原因に対する対策を行わない
子どもがストレスを訴えてサインを発しているにも関わらず、そのまま放っておいたり、見て見ぬふりをしたりすることは、子どもにとって苦しいものです。大人にとっては些細なことのように思えても、子どもにとっては深刻で「相談したのに自分の気持ちを分かってもらえない」「自分は間違っているのだ」と感じ、症状が深刻になるまで隠すようになってしまうこともあります。まずは子どもの気持ちをそのまま受け止め、ストレスの原因を特定したり、問題を解決するために一緒に考えたりする姿勢が大切です。
感情的に怒ったり責めたりする
子どもがストレスサインを出しているときに、感情的に怒ったり責めたりすると、子どもの心を傷つけてしまい、親子の信頼関係が崩れる原因になります。ストレスを抱えているときには普段通りにできない・他の人と同じようにできない自分に対して苦しさや劣等感を感じています。親が感情的に怒ることで自己肯定感がさらに低下し、その結果、自己否定につながります。
また、たとえ正論でも「こうすればよかったのに」「あなたのせいでしょう」と必要以上に責められることも、子どもは大きなストレスを感じます。さまざまな経験を積んで成長している途中なので、気持ちに寄り添いながら対応しましょう。
気持ちを理解せず、解決策を押しつける
子どもの気持ちを理解しようとせず、一方的に解決策を押しつけると、子どもはさらにストレスを感じてしまいます。また、「気にしなくていい」「もっとがんばって」など、安易な励ましやアドバイスも「自分の気持ちを分かっていない」と思われる可能性があるので、避けましょう。
また、子どもの気持ちを聞かずに親で勝手に決めて、問題を解決してしまうことは、子どもの自己決定能力や問題解決能力を奪ってしまいます。子どもの年齢や発達段階に応じて、解決方法を一緒に考えたり、意思決定をさせたりするようにしましょう。
まとめ
この記事では、子どものストレスの原因やサイン、親がとるべき行動について紹介してきました。子どものストレスに寄り添うことは簡単ではありませんが、ストレスの原因となっている問題を子どもが乗り越えるときには、保護者の理解やサポートが必要です。もし家庭内だけでの解決が難しい場合は、医療機関や心理士、スクールカウンセラーなど、専門家のサポートを得ることで解決につながる可能性があります。日々の小さな変化に気づき、子どもの気持ちに耳を傾ける姿勢を大切に、安心できる親子関係を築いていきましょう。