発達障害の理解と支援:子どもから大人まで、自分らしく生きるために

「子どもの発達に心配がある」「そもそも発達障害ってどんなものなの?」「発達障害の子どもとの接し方を知りたい」というお悩みはありませんか?近年、発達障害について広く知られるようになったことや診断基準の変更を受けて、診断を受ける機会が増えたり、特性を持つ人と関わったりすることが増えてきた背景があります。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 発達障害の特徴と種類
- 発達障害のサイン
- 発達障害を持つ子どもとの接し方
ぜひ最後までお読みください。
発達障害の特徴
発達障害は、脳機能に偏りがみられるために、コミュニケーションの困難さや気が散りやすいなどの特性を抱える障害です。「甘えている」「やる気がない」と誤解を受けることがありますが、本人が生まれながらにして持つ特性の問題であり、本人も困っているのです。親の育て方の問題でもありません。発達障害は個人によって困りごとや程度もさまざまですが、この章では代表的なものをいくつか解説していきます。
コミュニケーションの困難さ
発達障害を抱える人は、コミュニケーションをとることが困難な人がいます。例えば、主な種類の一つである自閉スペクトラム症(ASD)であれば、自分に合わせてくれる大人や年上・年下の友達とは遊べるものの、同じ年齢の友達と関わることが難しいことがあります。注意欠如多動性障害(ADHD)は比較的コミュニケーションの問題は少ないものの、人の話を集中して聞けない、思いついたことをすぐに話してしまうなど、特性からトラブルに繋がってしまうことがあります。
こだわり・関心の偏り
「おもちゃを自分の思う順番で並べないと気が済まない」、「日常のルーティンと違うとパニックになる」など、強いこだわりから生活で困難が見られることがあります。また、特定の物事に対して強い興味関心があり、好きなことに関しては膨大な知識を持つなど、興味の偏りが見られます。関心があることに関しては「電車博士」「虫博士」など、プロ顔負けであることも多々あるため、好きなことからコミュニケーションをとることで人間関係が広がっていくことがあります。
言葉の発達の遅れ・対人関係の障害
発達障害を持つ子どもは、言語発達の遅れがよく見られます。例えば、先ほど軽く触れた自閉スペクトラム症の場合は非言語的なコミュニケーションを重視し、人への関心が薄いことから、言葉をはじめとするコミュニケーションの問題がよく起こります。注意欠如多動性障害では注意力散漫な特性から言葉の獲得が難しく、遅れが出ることがあります。
主な発達障害の種類と特徴
先述のとおり、発達障害の種類によって特徴が異なります。この章では代表的な発達障害3つの種類と特徴について解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)
コミュニケーション面の課題が多く、相手の言葉や表情を読み取ったり、自分の気持ちを言葉にしたりすることが苦手です。そのため、相手が冗談を言っても言葉通りに受け取ったり、自分の気持ちをうまく伝えられず、言葉より先に手が出てしまったりします。特定のことへの強い関心も見られ、好きなことに過剰に集中して周囲からの言葉が入らないことがあります。また、感覚過敏・感覚鈍麻を抱えている人もいます。
感覚過敏の例
- 偏食が多い
- 大きな音や破裂音、反響音など苦手な音がある
- 明るいライトや太陽の光を避けている
感覚鈍麻の例
- 怪我をしても気づかない
- 音に反応しにくい
- 感覚を求めて身体を動かしてしまう
感覚過敏・感覚鈍麻がある人の全員が発達障害というわけではありませんが、苦手な感覚があることで癇癪を起こしたり、パニックになったりすることが多くなります。感覚の問題は他の人には理解しにくいですが、本人は困っているのです。
注意欠如多動性障害(ADHD)
注意欠如多動性障害は、不注意・多動性・衝動性の3つの特徴を持つ発達障害です。発達障害に関わらず、小さい年齢の子どもは上記3つの特徴を持っていますが、これらの症状が年齢や発達水準に対して低く、長期的に現れることで生活に困難が生じます。忘れ物やなくしものが多い、じっとしていられない、待つのが苦手などの困りごとが見られます。
学習障害(LD)
全般的な知的発達の遅れはないものの、読む・書く・話すなど特定の学習にのみ困難がある障害です。特定の分を除き発達の遅れが見られないため、判断が難しい障害になります。以下のような条件に当てはまるかチェックを行い、該当する場合に診断が行われます。
- 発達の遅れが環境的な要因ではない
- 神経疾患や視覚・聴覚などの問題がない
- 発達の遅れが学習面でのみ見られる
例えば、「難しい漢字は読めるけど、ひらがなを書くのが苦手」「文章の意味を理解することが難しい」「数の概念が身につかない」などが該当します。
上記の特徴から、学校教育が始まったのちに診断されるケースが一般的です。
子どもの発達障害のサイン
発達障害は先天的なものなので、幼少期から特徴が現れます。この章では、子どもの発達障害のサインと、気づいたときの対応を紹介します。

発達障害のサインと特徴
発達障害のサインは、子どもの年齢別に次のようなものが現れます。
乳児期(~1歳半頃) | 目が合わない、後追いがみられない、表情が乏しい、発語が遅い |
幼児期(~就学前) | 一人遊びが多い、友達へ関心を示さない、強いこだわりがある、興味があることへ過度に熱中する、園での集団活動が苦手、人見知りや場所見知りが強い、苦手な感覚がある(偏食など)発達年齢に対して落ち着きがない、順番が守れない、話に割り込んでくる |
学童期(小学生) | 学校の勉強でミスが多い、忘れ物が多い、よく物をなくす、宿題などに集中して取り組むことが難しい、特定の学習が苦手 |
このような項目は乳幼児健診でチェックされることが多く、適切な発達支援につながりやすくなっています。チェック項目にあてはまるからと言って、必ずしも発達障害であるとは限らず、家庭や園・学校での様子を踏まえ、医師が総合的に判断します。
発達障害に気づいたら?
上記のサインに当てはまるなど「発達障害かもしれない」と思ったときには、まずは自治体に設置されている発達支援係・児童相談所・子育て支援センターへ相談してみましょう。家庭の様子と園・学校での様子を丁寧にヒアリングし、関わり方のアドバイス、子どもの様子・家族の希望に応じて発達検査、診断を受けるための医療機関の紹介などをしてくれます。公的な機関なので相談料は無料
ですし「うちの子どもは、他の子どもとなんか違う気がする」「どう接すれば良いのか分からない」と感じるときには、一人で悩まずに相談してみてください。
発達障害の子どもへの接し方
発達障害を持つ子どもへの関わり方には、ポイントがあります。今回は4つ紹介します。
視覚情報を提示する
子どもになにか伝えたいときには、写真や絵カードなどを使って視覚情報を提示することがおすすめです。自閉スペクトラム症の子どもは、言葉がうまく伝わらなかったり、初めての場所や想定外のことが苦手だったりすることがあります。大人でも初めての経験をするときにはドキドキしますよね。このようなときに事前に写真や絵カード、動画などがあると、イメージが湧いて不安感が減ります。また、注意が散漫になりがちな注意欠如多動性症候群の子どもの場合も、視覚的な支援をすることで情報が伝わりやすく、大事なことはメモに残すなどをすると忘れにくくなります。
簡潔で具体的に
伝えたいことは簡潔で具体的にすると、発達障害の子どもに伝わりやすいです。まずは子どもの名前を呼んだりして注意をひき「ごはんの時間だから、片付けましょう」など、複雑にならないように伝えます。一度に伝える内容は1つにし、複数のことを指示したいときには「片付けましょう」「手を洗いましょう」と、1つのことを終えてから伝えると良いですね。
また、上記の視覚情報と組み合わせ、支度の順番を書いた表などを用いることもおすすめです。
感情を大切にし、否定しない
発達障害の子どもと関わっていると、自分が普段は気に留めないようなことで子どもが怒ったり泣いたりするので「なぜ癇癪を起こすの?」「どうしてできないの?」と思うこともあるでしょう。ただ、子ども自身も自分の特性をどうしようもできずに困っていて、泣いたり癇癪を起こしたりして表現しています。子どもの感情を受け止め、否定しないようにしましょう。
大声を出さない
周囲の人が大声を出してしまうことで子どもは驚き、怖い・怒られていると感じます。パニックになったり「自分はダメなのだ」と自信をなくしてしまったりするので、穏やかな声で話しましょう。ただ、発達障害を持つ子どもと関わることで、大人がストレスを感じることもあるでしょう。ご自身のストレス発散の時間も大切にしてくださいね。
発達障害に関する Q&A
発達障害に関する、よくある質問を紹介します。

検査や診断はどこで受けられますか?
発達検査は医療機関・自治体・療育センターなどで受けられます。検査はさまざまなものがあり、年齢や子どもの様子によって医師や職員が受ける検査を検討し、適した検査が実施されます。詳細は割愛しますが、例えば乳幼児期には新版K式、5歳頃からはWISCなどがよく行われます。
発達障害の診断ができるのは医師のみです。児童精神科・小児科・小児神経科や発達外来の医師が、保護者への問診や発達検査の結果から総合的に判断します。近年は発達障害を診断できる医療機関が増えていますが、地域によっては受診するまでに数ヶ月~1年程度の予約待ちが必要なことがあります。
相談窓口はありますか?
「子どもが発達障害かもしれない」と思ったときに、最初に相談する窓口として次のような機関があります。
- 市町村の発達支援係
- 児童相談所
- 子育て支援センター
- 発達障害者支援センター
- 児童発達支援センター
- 精神保健福祉センター
子どもへの接し方のアドバイスをもらったり、療育の利用方法や受診先などを相談したりできます。
発達障害を学校に伝えた方がいい?サポートはあるの?
発達障害の診断を受けたら、学校・園に伝えるのがおすすめです。学校・園に伝えることで、合理的配慮や加配が受けられることがあります。合理的配慮とは、障害を持つ子どもが学校・園で過ごすために必要な配慮を受けることで、具体的に以下のようなものがあります。
- 特別支援学級への入級
- 座席や学習用具の配慮(前の座席にする、読み書きに困難があるためタブレットを補助具として用いる など)
- 試験を別室受験、試験時間延長
- 絵カードなどを用いた視覚支援
子どもの特性に合わせて、学校・園生活を送れるようにさまざまなサポートがあります。発達障害の子どもにとって、集団生活や学習はストレスが大きくなりがちです。サポートや配慮により、学校・園生活が楽しいと思えるようになることがありますので、発達障害・特性の詳細を伝えることが大切です。
まとめ
発達障害を持つ人は、本人にしか分からない困難や葛藤を抱えて過ごしています。「発達障害かも」と感じたときには、早めに専門機関へ相談し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。発達障害の診断を受けることで、園や学校で合理的配慮を受けられる場合があります。子どもが楽しく集団生活を送れるよう、サポートしていきましょう。