HSC(Highly Sensitive Child)とは?繊細な子どもたちの理解とサポート
「うちの子どもは、お友達に対して優しすぎる気がする」「人混みが苦手で外出が大変」「他の子どもに比べると少し繊細なのかも」と、感じたことはありませんか?もしかしたら、あなたの子どもはHSC(Highly Sensitive Child)かもしれません。HSCは生まれつき感受性が強く、繊細な気質を持つ子どものことを言います。

この記事では以下の内容について解説します。
- HSCの概要と子どもの特徴
- HSCと発達障害の違い
- HSCの子どもの育て方と強み
ぜひ最後までお読みください。
HSCとは
この章では、HSCの定義と特徴について紹介します。
HSCの定義と特徴
HSCは「Highly Sensitive Child」の頭文字をとった言葉で、直訳すると「非常に敏感な子」という意味になります。生まれつき感受性が強く、繊細な気質を持つ子どものことを指します。
特徴は刺激に対して反応しやすいことです。感覚処理の神経が生まれつき敏感で繊細なため、他の人が気にしないようなことでも反応することがあります。
- 身体的な反応の例
触覚:ザラザラ・ベトベトなど苦手な感覚がある、痛みに弱い
嗅覚:洗剤や整髪料などのにおいが気になる
聴覚:騒がしい場所が苦手、小さな音にも過敏に反応する
味覚:味へのこだわりがある、偏食がある
視覚:蛍光灯などの光がまぶしく感じる、ごちゃごちゃしたものを見ると疲れる
その他:空腹や気圧に弱い
- 精神的な反応の例
悲しいニュースで気分が落ち込む。些細なことで傷つく。自分より他人を優先し、人の顔色をうかがって気を遣いすぎる。場の雰囲気が悪いと耐えられない。
感受性のアンテナが敏感なので、他人の感情まで取り込んで反応してしまいます。
身体的・精神的な刺激を受けると、他の子どもよりも強く反応が見られるため、集団生活などの刺激が強い場所では消耗して疲れやすくなります。
HSCは病気や障害ではない
HSCは医学的な病気や障害ではありません。発達障害とも異なります。ただ、繊細さから二次障害として精神疾患を発症することがあり、学校生活の刺激の多さに耐えられず不登校になりやすいと考えられています。
HSPとの関連性
HSPは「Highly Sensitive Person」の略で「非常に敏感な人」という意味です。HSCは「Child」で子どもを指しますが、HSPは子どもではなく、敏感で繊細な大人を指します。HSPもHSCと同様に、医学的な診断名ではありません。HSCの特徴を持つ子どもは、大人になっても気質が変わらないことが多いため、成長してHSPになることも多いです。
HSCの子どもの特徴
HSCの子どもには、どのような特徴があるのかを解説します。

DOES(ダス)と呼ばれる4つの特性
HSCである子どものほとんどが、次の4つの特性を持っています。
- D(Depth of processing):深く処理する
なにかを決断するときに、さまざまな選択肢を考慮して行動します。相手の心の中で起きている、感情の細やかな変化にすぐ気がつきます。
- O(being easily Overstimulated):過剰に刺激を受けやすい
感覚神経が過敏なため、神経の興奮が疲労につながりやすいです。楽しい・嬉しい感情だとしても、子どもにとって刺激が強いと疲れてしまいます。
- E(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular):全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い
共感性・同調性が高く、他者の感情が自然と手に取るように分かります。
- S(being aware of Subtle Stimuli):ささいな刺激を察知する
大多数の人が感じないような、小さな刺激に反応します。周囲には何もしていないように見えても疲れを感じて消耗しているかもしれません。
HSCの4つのタイプ
HSCはHSC・HSE・HSS型HSC・HSS型HSEの、4つのタイプに分けられます。
- HSC
HSCの中でも最も典型的なタイプで、内向的・マイペースで静かに過ごすことが好きなのが特徴です。相手の気持ちを考えすぎてしまうので、疲れやすい一面があります。
- HSE
HSEは「Highly Sensitive Extrovert」の略で「繊細で外向的な人」という意味を持ちます。人と関わることが好きですが、繊細で相手の言動に疲れてしまうことがあり、距離感を大切にするタイプです。
- HSS型HSC
HSSは「High Sensation Seeking」の頭文字をとっており「刺激探求型」の意味があります。新しい環境や刺激を楽しみたい思いはありますが、内向的です。刺激は欲しいけれど、1人で過ごす時間も大切なタイプです。
- HSS型HSE
外交的かつ刺激探求型のタイプです。HSCの中では最も活発でリーダーシップをとれます。ただし、外交的で刺激が欲しいといっても、1人の時間がないとストレスを感じます。
HSCチェックリスト
HSCとHSPの概念を生み出した、エレイン・N・アーロン氏による23のチェックリストの一部を引用します。
すぐびっくりするわたしの気持ちをよく察するように感じる直感力が優れているように思う興奮したことがあった日はなかなか眠れない痛みにとても敏感微妙なことによく気がつく |
詳しく知りたい方は、以下のリンクからチェックしてみてください。
Is Your Child Highly Sensitive?
HSCと発達障害の違い
「HSCの特徴と発達障害は似ている気がするけど、何が違うのだろう」と感じていませんか。この章ではHSCと発達障害の違いを解説します。
HSCは病気や障害ではなく、生まれ持った気質
先述のとおり、HSCは医学的な診断のつく病気や障害ではなく、生まれ持った気質です。
一方で発達障害は脳機能の発達が関係する障害で、医師が診断をします。以下で簡単に解説します。
- 広汎性発達障害
コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害。自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群などが含まれます。物事へのこだわり、感覚過敏が見られることがあります。
- 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
集中できない(不注意)・じっとしていられない(多動・多弁)・考えるよりも先に動く(衝動的な行動)などが特徴の発達障害です。
- 学習障害(LD)
全般的な知的発達の遅れはないものの、聞く・話す・書く・計算するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることが困難な状態のこと。
発達障害との違い
例として、HSCと自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)を比較します。
- HSCと自閉スペクトラム症の違い
HSCの子どもと自閉スペクトラム症の子どもは、食事や音などに過敏になり、こだわりを持つことが多いです。初めての環境への適応に時間がかかることもあります。
異なる部分は、共感性とコミュニケーション能力です。HSCの子どもは感覚の敏感さから高い共感性を持つので、相手の気持ちがよく分かり、気を遣いすぎてしまう面があります。それに対し、自閉スペクトラム症の子どもは社会性・コミュニケーションに関する領域が苦手なため、自分のことばかり話すなど、対人関係が苦手な場合が多いです。
- HSCと注意欠陥多動性障害の違い
HSCの子どもは、環境の変化などによって落ち着かずにソワソワと動き続けてしまうことがあります。注意欠陥多動性障害の子どもも、衝動性が強いために多動が見られることがありますが、違いは「どの場面でも多動なのか」ということです。初めての環境など限定的であれば、HSCの影響によるものかもしれません。
HSP(HSC)と発達障害の関係性
先述のとおり、HSP(HSC)の特徴と発達障害の特性は似たものがありますが、専門機関へ受診しないと、どちらであるかの判断はできません。心配な場合は、自治体の発達支援センターで相談したり、児童精神科・発達外来のある病院へ受診したりしてみてください。
HSPも発達障害も生まれつきの特性で、人によってはHSPと発達障害の特性が両方現れていることもあります。発達障害もHSPも根本的に治療できるものではなく「特性とどう付き合っていくか」というところが重要なので、子ども自身と周囲の人達が対処法を学んだり、環境調整を行ったりすると良いでしょう。
HSCの子どもの育て方・接し方
これまでHSCの子どもの育て方・接し方を紹介します。
HSCの子どもへの接し方のポイント
- 親は子どもの味方であると伝える
- ねぎらいや肯定的な言葉をかける
- 叱るときは優しく伝える
- 子どもの感覚を信じる
- 一度にたくさんのことをさせない
- リラックスして過ごす
親が特性を理解している姿勢を見せることで、子どもは困っていることを遠慮せず伝えられるようになります。子どもの感覚を信じ、ねぎらったり肯定的な言葉をかけてもらったりすることで「ママやパパは分かってくれている」と安心します。初めての環境や集団生活などの刺激が多い場面では疲れを感じやすいので、可能な範囲で活動量を調節したり、自宅では子どもがリラックスして過ごせるようにしたりすると良いでしょう。
また、子どものサポートに徹する親も、余裕がなくなると疲れてしまいます。大人も適度に休息をとることを心がけてくださいね。
親ができるサポート
親ができることは専門家への相談と、可能な範囲で刺激を抑えることが挙げられます。専門家へ相談することで、親も子どもも特性への理解が進みます。困ったときの対処法を知ることで、子どもも周囲の大人も少し楽になるかもしれません。
また、苦手な感覚が分かっている場合は、事前に対処することで刺激を減らせることもあります。例えば、まぶしい光が苦手ならサングラスをかけるなど、グッズを活用することも良いでしょう。
HSCの子どもの才能を伸ばす
HSCの子どもは感覚の問題からストレスを感じやすいですが、同時に強みもあります。

HSCの持つ強み
HSCの子どもは感性や表現力が豊かです。繊細だからこそ、周囲の人には感じ取れない深い部分を読み取り、表現できます。また、完璧主義のようなところもあるので、ミスが少ないことも大きな強みです。
HSCにおすすめの習い事
創作活動・表現活動がおすすめです。言葉ではない自己表現ができることで、気持ちを発散する手段にもなります。
例えば、以下のような習い事が挙げられます。
- 音楽教室
- 絵画教室
- ダンス
- バレエ
- プログラミング
優劣がはっきりする場合、負担になることもあります。
習い事を選ぶ際には、楽しんで続けられそうか気にかけてあげてくださいね。
まとめ
HSCの子どもは繊細で敏感なので集団生活など刺激が強い場面は疲れやすいです。自宅ではリラックスして過ごせる時間を大切にしましょう。他者が気づきにくいところまでよく気がつき、感性豊かな長所があるので、表現活動を取り入れることがおすすめです。子どもの繊細な部分を受け止めながら、大人も適度に休憩しつつ関わっていきましょう。