「レジリエンス」という言葉を耳にする機会はあるけれど、どのような力を指すのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
レジリエンスは生まれつきの性格ではなく、後天的に伸ばしていける力と言われており、変化の多いこれからの時代を生きる子どもにとっても欠かせないスキルの一つです。
本記事では、レジリエンスの意味や子どもに必要な理由について解説します。
まずは、レジリエンスの意味と、どのような力なのかを見ていきましょう。
レジリエンス(Resilience)は、もともと「弾力性」「復元力」を意味する工学・物理学の言葉です。硬い棒は強い力が加わるとポキッと折れてしまいますが、柔らかい棒はしなって曲がり、力が消えるとまた元の形に戻ります。この「曲がっても折れずに戻る」性質を心の動きに当てはめたのが、心理学における「レジリエンス」です。
アメリカ心理学会(APA)は、レジリエンスを「逆境や重大なストレスに直面したときに、うまく適応していくプロセス」と定義しています。つまり、困難をなくす力ではなく、困難に直面したあとにどう回復していくかという「プロセス」を指す言葉なのです。
前述した通りレジリエンスは「困難に直面した後に回復していくプロセス」であり、簡潔にまとめるなら様々なストレスにうまく適応する力とも言えます。
そんなレジリエンスを支える仕組みとして、ストレスの原因となる「危険因子」と、それを乗り越える助けとなる「保護因子」という2つの要素があります。
「危険因子」は、困難やストレスを生んでいる原因を指します。
例えば、以下のようなものが該当します。
・友達とのトラブル
・テストの失敗
・クラス替えや転校
一方の「保護因子」は、危険因子を乗り越える助けとなる要素です。
例えば、以下のようなものが該当します。
・家族や先生・友達との人間関係
・過去に失敗を乗り越えた経験
・自分の得意なことや自信
保護因子が多いほど、危険因子に直面しても慌てずに対応できます。マイナス要素である危険因子とプラス要素である保護因子のバランスにより、レジリエンスは発揮されていくのです。

続いて、子どもにレジリエンスが必要な理由を紹介します。
レジリエンスは、子どもが失敗を恐れず、挑戦するために必要な力です。
例えば、逆上がりの練習で失敗したり、テストで思うような点数が取れなかったりした際、「自分には無理だ」と決めつけてしまうと、そこでストップしてしまいます。
一方、レジリエンスが育っている子どもは、「次はどうすればいいか」を考えられます。「失敗しても立ち直れる」感覚は、発表会や試合などの緊張する場面でも自信を持って挑める力になります。
子ども同士の関わりでは、けんかや意見の食い違い、仲間に入れないなどのトラブルが起こることがあります。こうしたシーンで気持ちを立て直すためにも、レジリエンスは必要です。
友達とのトラブルがあると、子どもは「嫌われたかもしれない」と不安になることがあります。その気持ちを抱えたままだと、学校や園で過ごすことがつらくなったり、友達との関わりを避けたりする場合があります。
レジリエンスがあることで、落ち込んだ気持ちを整理し、「自分から謝る」「相手の話を聞く」「先生や親に相談する」といった、次の行動を考えられるようになります。
進級や入学、転校などで環境が変わる際に不安を感じるのは自然なことですが、その変化に適応していく際レジリエンスが役立ちます。
レジリエンスが育っている子どもは、不安を感じながらも友達に話しかけたり、分からないことを先生に聞いたりする行動をとることができます。
大人だけでなく、子どもも避けられない環境の変化に直面します。変化に適応していく力は、子どもにも重要な力になるのです。
子どものレジリエンスは、失敗や困難を避けることではなく、「失敗を克服する経験」により育っていきます。ここでは、子どものレジリエンスを高めるために家庭で意識したいことを紹介します。
子どものレジリエンスを高めるには、「失敗から自分で立ち直る機会」を持たせることが大切です。親が失敗から子どもを守ろうとすると、悔しい気持ちを整理したり、次の行動を考えたりする経験が減ってしまいます。
例えば、積み木が崩れる・逆上がりができない・友達との遊びが思い通りに進まないなど、子どもにとっての失敗は日常のなかにもあります。こういった場合、親が解決するのではなく、「悔しかったね」「次はどうしてみようか」と声をかけながら、子ども自身がもう一度向き合えるように支えることが大切です。
また、親自身がうまくいかない場面を見せることも、子どもにとって学びになります。「今日は失敗したけど、もう一回やってみるね」と伝えることで、失敗しても終わりではなく、やり直せることを教えるための機会になります。
レジリエンスを高めるには、さまざまな人や環境に触れる経験も大切です。関わる相手や過ごす場所が広がることで、子どもは自分とは違う考え方やルールに出会い、対応する力を身につけていきます。
例えば、習い事や地域の活動、親戚や近所の人との関わりなどが、普段とは違う人間関係を経験できる機会です。
人間関係を広げることで、様々な価値観に触れることができます。これにより「こんな方法もあるんだ!」「あの人に相談してみよう!」と考えられるようになり、困難を乗り越える力につながっていきます。
子どものレジリエンスを高めるには、困ったときに頼れる人間関係を作ることも大切です。失敗したときや落ち込んだときに、気持ちを受け止めてくれる人がいることで、一人で抱え込まずに立ち直りやすくなります。
家庭では、普段から子どもの話を最後まで聞くことや、失敗したときに頭ごなしに否定しないことを意識しましょう。「話しても大丈夫」「困ったら相談できる」と感じられることで、友達とのトラブルや学校での失敗があったときにも、親に助けを求められるのです。
また、友達や先生、習い事のコーチなど、他に相談できる相手がいることも支えになります。「失敗しても大丈夫」と感じられる環境は、困難に向き合う力を育てます。

レジリエンスは、日常生活だけでなく、習い事を通じても育てることができます。最後に、子どものレジリエンスを高めるきっかけになる習い事を紹介します。
プログラミングは、コードを書いたり、ブロックを組み合わせたりしながら、ゲームやアニメーションなどを作る習い事です。作ったものが思い通りに動かない際は、どこに原因があるのかを考え、順番や組み合わせを変えながら修正していきます。
また、同じ動きを実現する方法が一つとは限らないため、うまくいかないときに別のやり方を試せる点も特徴です。試して、直して、もう一度動かしてみるという流れを繰り返しながら、少しずつ完成に近づけていきます。
こうした試行錯誤の経験は、失敗してもすぐに諦めず、原因を考えてやり直す力を育てることにつながります。プログラミングを通して「うまくいかなくても、別の方法を試せばよい」と考えられることが、子どものレジリエンスを高めるきっかけになるでしょう。
水泳は、水に顔をつける・浮く・バタ足をする・クロールで泳ぐなど、段階を踏みながらできることを増やしていく習い事です。子どもの成長に合わせた目標を設定し、少しずつステップアップできる点が特徴です。
多くのスイミングスクールでは、級や進級テストが設けられています。毎回合格できるとは限りませんが、できない動きに繰り返し取り組みながら、次の目標に向けて練習を重ねていきます。
こうした経験は、すぐに結果が出なくても諦めずに続ける力を育てます。「前よりできるようになった」と感じられる成功体験を積み重ねることで、うまくいかない場面でも気持ちを立て直す力が身につき、レジリエンスを高めることにつながるでしょう。
サッカーは、仲間と協力してゴールを目指すスポーツです。個人の技術だけでなく、味方の動きに合わせたり、試合の状況を見て判断したりする力が求められます。
思うように上達しなかったり、試合で負けたり、レギュラーに選ばれなかったりすることもあります。また、チームで活動するため、自分の思い通りに進まない場面や、仲間との関わりに悩む場面も出てくるでしょう。
そうした経験を通して、悔しい気持ちを切り替えたり、仲間やコーチと一緒に次の目標へ向かったりする力が育ちます。こういった経験は、子どものレジリエンスを高めることにつながります。
ピアノは、楽譜を読みながら指を動かし、練習を重ねて一つの曲を弾けるようにしていく習い事です。最初は片手で弾くことから始まり、両手で合わせたり、最後まで通して弾いたりと、徐々にステップアップしていきます。
反復練習による「できないこと」を克服し、「できること」に変えていける点がピアノの特徴です。
こうした経験は、「できない」と感じたことにも、続けて取り組めば近づいていけるという感覚を育てます。小さな達成感を積み重ねることで、困難に向き合い続ける力が身につき、レジリエンスを高めることにつながります。
レジリエンスは、困難やストレスに直面したときに、気持ちを立て直して前に進む力です。特別な子どもだけが持つ力ではなく、日々の経験や周囲との関わりによって少しずつ育っていきます。
子どもは成長するなかで、失敗や友達とのトラブル、新しい環境への不安など、思い通りにいかない場面に何度も出会います。そうした経験を避けるのではなく、向き合うことでレジリエンスは成長していきます。
子どものレジリエンスを育てるために、家庭でできる関わりや習い事など、是非試してみてくださいね。