「クロールで、上手に泳げるようになりたい」と思っていませんか。「一生懸命に手足を動かしているのに、思うように前に進めない」「きれいなフォームでスイスイと泳げるようになりたい」と思っている方は少なくないでしょう。
クロールでは、基本的なフォームを習得し、水の抵抗を減らすことが大切です。また、バタ足だけでなく、腕のかきや息継ぎも重要になります。
この記事では、次のような内容を紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、クロールの泳ぎ方の参考になれば幸いです。
最初に、クロールのフォームの基本について、紹介します。
クロール以外の泳ぎでも言えることですが、体を水面に対してまっすぐ水平に保つことは大切です。「ストリームライン」とも呼ばれており、水の抵抗を受けにくい姿勢のため、ラクに早く泳げます。体が斜めになったり腰が沈んだりすると、抵抗が大きくなってブレーキがかかるので、注意しましょう。
きれいなストリームラインのコツは、頭の先から足のつま先までを一本の棒のようにする意識を持つことです。加えて、あごを軽く引いて、目線を自分のおへそや床の方に向けると、頭が腕の間に入り、水の抵抗を抑える姿勢になります。
まずは、プールサイドの壁を蹴って進む「けのび」の練習を繰り返し、きれいなストリームラインを身に着けましょう。
クロールのキックには体を前進させる役割と、水平姿勢をキープする役割があります。
足の付け根(股関節)から、振り幅を抑えてリズム良く動かすのが、クロールのキックのコツです。
膝を大きく曲げてキックすると、下半身が沈む原因になりますので注意しましょう。
キックの振り幅は30cm程度(体の幅ぐらい)に抑え、足首をまっすぐに伸ばし、両足の親指が触れる程度の軽い内股で動かしましょう。膝から下を脱力させ、足の甲で水をポンと軽く叩くようなイメージです。
まずは陸上でベンチなどにうつ伏せになり、キックの練習をしてみると、正しいキックの仕方に集中できます。コーチや親などから客観的に姿勢を見てもらい、アドバイスを受けるのも良いでしょう。
陸上でフォームを身に着けたら、水中でビート板を使い、キックだけの練習をしてみると、足の使い方に集中できるのでおすすめです。

クロールは腕を動かして水をかくこと(ストローク)で、前に進む7割程度の力を生みます。基本を覚えれば泳ぎがラクになるので、ポイントを確認していきましょう。
腕は、肩から大きく回すようにします。腕の付け根の関節だけではなく、背中の肩甲骨から腕全体を大きく動かすことがポイントです。腕だけで水をかくよりも疲れにくく、推進力を得られるため、より速く泳げるようになります。
【具体的な動きのポイント】
①手を水に入れる:できるだけ遠くに、手を少し外側に向けて、親指から水に入れる
②水をとらえる:腕を伸ばし、手首を軽く曲げて、前方の水を捉える
③水を引き寄せる:つかんだ水を、一気に胸の下まで引き寄せる
④水を押す:引き寄せた水を、後ろにまっすぐ押す
⑤腕を水上に出して回す:肘を曲げたまま水上に出し、手は小指から水面に出す
先ほどお伝えした「水をかいて進む」際には、手のひらで捉えた水を後方へ「押す」意識を持つことが大切です。指先で引っ掻くようなイメージだと、水が指の間から逃げてしまうため、手のひら全体や前腕(肘から手首までの部分)も使い、ひとつの大きな面で体の近くの水を押すようなイメージを持ちましょう。
ポイントは、指先を少し開けておくことです。指を完全に閉じてしまうと、腕に力が入り過ぎてしまうため、少しだけ開けておくようにします。
また、水中で腕が体の下を通過するときは、肘を高く保った状態(ハイエルボー)を意識すると、効率よく水を押し出せます。太ももの方へ向かって、最後までしっかりと水を押し切る動作が大切です。
ここからは、クロールの息継ぎのポイントを紹介します。
スムーズに呼吸をするために「水中では息を吐いて、水上で素早く吸う」というリズムを体に覚えさせることが大切です。水中で息を止めてしまい、息継ぎのときに一度に「吐く・吸う」動作を行おうとして、失敗することがあります。
まずは、水中で鼻からゆっくり長く息を吐く練習をしましょう。息継ぎのために顔を横に向けたときには「パッ」と息を吸うことに集中します。
また、ローリングを意識することも大切です。ローリングとは、体の軸(頭から足先までの背骨の軸)を中心に、肩や腰を左右交互にひねる動作を指します。
ローリングには腕のかきを力強くする、水の抵抗を減らす、呼吸を楽にする、といった役割があります。顔だけを傾けると、口を水面に出すことが難しいですが、体ごと傾けることで顔を持ち上げずに息継ぎができるので、ラクに息継ぎができます。腕のストロークに合わせてリズミカルに行うようにしましょう。
最初はプールサイドに手をかけて止まって、顔を水につけて吐き、横を向いて吸う練習(ボビング)で感覚をつかむのがおすすめです。
息継ぎでは「息を吐くタイミング」「頭の位置」「視線」を意識しましょう。
息を吐く際は、水中で鼻から息を出し、7割程度吐くことがポイントです。ある程度、水中で息を出しておくことで、水中から顔を出すタイミングでしっかりと息を入れられます。息を吸うときは、腕を回し始めたタイミングで、肩の傾きに合わせて顔をあげて吸うようにします。息を吸ったら顔を水に戻しましょう。
頭の位置は、頭全体を水面より上に持ち上げないようにします。背骨から頭の先までを一本の軸のように固定し、体を回転させる力を使って、口だけを水面に出しましょう。
視線は真上ではなく、真横や少し斜め後ろを見るようにします。上を見ようとするとあごが上がり、頭が持ち上がって下半身が沈む原因になるので、気をつけましょう。

ここからは、クロールでよくある失敗と解決策を紹介します。
初心者によくみられる失敗は、下半身が沈むこと、体に力が入りすぎること、手足がバタバタしてしまうことです。詳しく紹介していきましょう。
【下半身が沈む】
主な原因は、次のようなものがあります。
頭が水面から高く上がると、シーソーの原理で逆側の腰や足が沈み、水の抵抗が急激に増えてしまいます。姿勢が良くなると改善されやすいので、焦らずにフォームの基本を身に着けるようにしましょう。
【体が力みすぎる】
前に進まない焦りや、呼吸が苦しいという不安から、肩や首、腕などに不要な力が入ることがあります。体が力むと、筋肉は酸素を多く消費して疲れやすくなり、動きが硬くなってしまうため、スムーズなストロークやローリングの妨げになります。また、力むと体が沈む原因にもなるため、リラックスした状態で泳ぐことが大切です。
【手足のバタバタ】
「早く進みたい」という気持ちから、手で水面を叩くようにかいたり、足で大きな水しぶきを上げるほど激しくキックしたりする状態です。この動きは抵抗が大きいため、あまり前には進めず、体力を無駄に消耗させることにつながります。
上記の悩みは、正しいフォームを習得することで改善されることがほとんどです。まずは「ドリル練習」と呼ばれる、泳ぎの動作を分解した練習を取り入れましょう。一度に全てのことを意識して泳ぐのは難しいため、特定の課題に集中して取り組むことで、正しい動きを習得します。
ここでは、代表的なドリル練習を4つ紹介します。
1.けのび
これまでも触れてきましたが、水平姿勢を作るための基本となる練習です。壁を蹴ったあと、頭から足先までが一直線になるストリームラインを意識しましょう。お腹に軽く力を入れて頭を腕の間に入れ、あごを引くと腰が浮きやすくなります。また、力みがなくなり、体が沈むことが少なくなります。
2.ビート板キック
ビート板を使って上半身を固定し、キックの動きに集中する練習です。膝を曲げすぎず、足の付け根からしなやかに動かすことを意識しましょう。特に、足をバタバタしてしまう場合に効果的な練習です。
3.片手クロール
片方の腕は前にまっすぐ伸ばしてバランスをとり、もう片方の腕だけでストロークを行います。腕で水を捉えて押し切る感覚や、息継ぎと連動した体のローリングを養う練習です。力みがなくなり、きれいなフォームで泳げるようになります。
4.サイドキック
横向きの姿勢のまま、バタ足で進む練習です。下側の腕は前方に伸ばし、顔は水につけて目線は真下、息継ぎのときだけ顔を横に向けます。体の軸を保つ体幹と、安定した息継ぎの姿勢を身につけるのに役立ちます。
今回は、クロール上達のポイントを紹介しました。
一番大切なことは、水の抵抗を最小限にする意識を持つことです。
頭から足先までが一直線になる姿勢(ストリームライン)を保ち、肩甲骨から腕を大きく回して、捉えた水を最後までしっかりと押す感覚を養いましょう。
まずは自分の課題を見つけ、集中的に改善していくことが大切です。焦らずに基本をしっかりと身に着けて、クロールを習得していきましょう。