サッカーを始めたばかりの子どもが、ボールを落とさずにリフティングを続けるのは、とても難しいです。リフティングはボールを扱う力を養える効果的なトレーニングである一方、できる回数が伸びないと「面白くない」「つまらない」とつまずいてしまうかもしれません。
この記事では、リフティングの基本的なフォームや、難易度別の練習方法、上手くいかないときの対処法などを紹介します。リフティング上達のコツを紹介していますので、ぜひ最後までお読みいただき、リフティング練習の参考になれば幸いです。
リフティングは、手以外の体の部位を使い、連続してボールを蹴り上げる練習です。まずは、リフティングを練習すると身につく力を紹介します。
リフティングを練習すると、ボールの扱いに慣れ、次のような基礎的な技術や力が身につきます。
ボールの中心を捉えて空中に上げることは、パスやシュートの精度を上げることにつながります。また、ボールとの距離感やタッチの強弱を身に着けることで、サッカーの基本である「止める」「蹴る」の上達にもつながります。基礎的な技術を積み上げることは、実践でも役に立つでしょう。
リフティングはボールを見ながら体のバランスを保つため、集中力が向上します。
また、ボールの高さや回転によって、足の甲を寝かす・立てるなど、微調整が必要です。足を使ったリフティングに慣れてくると、実践を想定して上半身や頭も使う練習も行います。体のどこの部位を使ってボールを捉えるかという判断力も鍛えられるでしょう。

基本的なリフティングの技術とコツを紹介します。効率よく技術を伸ばすために、練習の際に意識してみてください。
リフティングは、足の甲で行うインステップが基本です。サッカー初心者は、まずインステップから練習してみましょう。
足の甲(靴紐の結び目あたり)に、ボールの真下を当てるイメージを持つと、ボールが真上に上がりやすくなります。つま先は自分の方を向くように少し上げて、足首を固定するようにしましょう。上手に蹴れると軽くバックスピンがかかり、安定しやすくなります。
一方で、つま先で蹴ろうとすると面が安定せず、ボールが回転しすぎて思わぬ方向に跳ぶ原因になるため、気をつけてください。
また、最初のうちは靴を履いて練習すると、ボールを当てる位置の感覚が分かりにくい人もいます。室内の広い場所など、安全な場所で裸足で練習すると、当てる場所をつかみやすくなるのでおすすめです。
ただし、裸足で練習する場合はけがのリスクに注意が必要です。軽いボールを使う、固いものが周囲に落ちていないか確認するなど、安全に気を配ってください。
慣れてきたら、利き足だけでなく両方の足を使ってリフティングを行ってみましょう。
インステップでのリフティングに慣れてきたら、足の内側(インサイド)や、外側(アウトサイド)を使ったリフティングも練習に取り入れてみましょう。試合中にトラップやパスカットで使う場面は、インステップよりもインサイドのほうが多く、股関節を柔軟に使う必要があるため、体の使い方が上手になります。
インサイドはくるぶしの下あたり、アウトサイドは小指の付け根あたりでボールを捉えます。特にアウトサイドはバランスを取るのが難しいですが、両足で自在に扱えるようになれば、プレーの幅が大きく広がります。最初は難しいと思いますが、上達のために諦めずに継続して練習しましょう。
リフティングはボールを弾き返すのではなく、膝と足首を柔らかく使って、ボールを迎え入れるように意識することが大切です。膝が伸びきった状態だと衝撃を吸収できず、ボールコントロールが乱れやすくなります。膝をバネのように使い、ボールが当たる瞬間にクッションをつくるイメージで動いてみましょう。
足首はぐらつかせず、インステップなど蹴る面をつくったまま固定すると安定します。体はリラックスしつつ、ボールを捉える瞬間だけ足首を締めることが、回数を伸ばすコツです。
基本的なリフティングの技術を学んだあとは、具体的な練習の進め方を学んでいきましょう。
ボールを落とさずに続けて蹴るのが難しい人は「ワンバウンドリフティング」から始めるのがおすすめです。ボールを蹴るときの足の動きや体の使い方を練習していきましょう。
まずは「手から落としたボールを蹴る→キャッチする」を繰り返し、動きに慣れていきましょう。慣れてきたら「蹴る→ワンバウンド→蹴る→キャッチ」と、少しずつ回数を増やしていくとスムーズに上達できます。
それぞれ安定して蹴ることができるようになったら、ノーバウンドに進みましょう。ノーバウンドも最初から「30回連続!」などと思わず、2回キックしてキャッチ、3回キックしてキャッチなど、キャッチをしながら徐々に回数を増やしていくのがおすすめです。正しいフォームを意識しながら、確実に取り組んでいきましょう。
ボールが飛びすぎる場合は、ボールの空気圧を少し下げる方法もあります。反発が弱くなり、足に当たる時間が長くなることからコントロールしやすく、練習しやすくなります。
利き足でインステップに慣れてきたら、両足や太ももを交えたリフティングに挑戦してみましょう。片足だけに頼ると重心が偏りやすく、バランスを崩したり、実戦でのプレーの幅が狭くなったりするため、複数の部位でボールを触れるようにします。
「右足→左足→右足」と交互に蹴る練習や、「右足→右太もも」のように異なる部位を組み合わせる練習がおすすめです。太ももは接触面が広く、ボールを安定してコントロールしやすいため、初心者でも扱いやすい部位です。さまざまな部位でボールに触れることで、全身を使ってボールを扱う力が育ち、プレーの安定にもつながります。
自分のフォームをスマートフォンで撮影して客観的に確認する方法も効果的です。自分では足をしっかり上げているつもりでも、映像を見返すと「膝が曲がっていない、背中が反っている」などと気づくことがあります。
上手な選手の動画と並べて比較すると、どこを直せばいいのかが分かりやすくなり、上達につながります。

リフティングはシンプルな練習ですが、他の動作を並行して行うことで、さらに集中力や判断力を養えます。この章では、具体的な練習方法を2つ紹介します。
リフティングの最中に手を叩く動作を入れることで、リズム感と予測能力を同時に鍛えられます。ボールが足から離れている時間を把握しながら別の動作を行う必要があるため、集中力も高まります。
まずは、ボールを蹴り上げた瞬間に1回手を叩き、次のタッチにつなげる練習から始めます。慣れてきたら「頭→肩→膝を順に触る」「しりとりをしながら行う」など、少し難しい課題を組み合わせてみましょう。
このように2つのことを同時に行う練習は、デュアルタスクトレーニングと呼ばれます。サッカーの試合では、常に状況を判断して的確に行動する力が求められます。デュアルタスクトレーニングを日頃から行うことで、実戦で対応できる幅が広がるので、ぜひ取り入れてみてください。
複数のボールを使うことで集中力を高め、視野を広く持つための練習が可能です。
例えば以下のような練習が該当します。
■リフティング→ボールキャッチ
・通常のリフティングを行う
・他の誰かが別のボールを投げてキャッチする
■複数ボールでワンバウンドリフティング
・ボールAをリフティング → ワンバウンドさせる
・その間にボールBを蹴り上げる
・上記を交互に行う
■リフティング→ボールトラップ
・通常のリフティングを行う
・他の誰かが別のボールを転がし、転がってきたボールをトラップする
サッカーの試合では、ボールをコントロールしながら周囲の状況を判断する必要があります。
複数のボールを同時に処理することは、広い視野と高い集中力を鍛えることに繋がります。
リフティングを練習していると「上手くいかない」と感じるときもあるかもしれません。ここでは、よくある悩みと対処法を紹介します。
ボールが別の方向へ飛んでしまう主な原因は、タッチが強すぎることです。高く上げようとして足を大きく振ると、ボールが当たる部分がずれやすく、コントロールが難しくなります。
まずは膝下だけを使い、ボールを軽く押し上げる感覚を意識しましょう。足の甲の硬い部分で、ボールの真下を正確にとらえることに集中するのがポイントです。高さは膝くらいに抑えるつもりで行うと、力加減が安定しやすくなり、次の動作にもスムーズにつなげられます。
ボールが左右にずれて安定しない場合は、軸足のバランスや体の向きが崩れていることが考えられます。片足だけで続けていると重心が偏り、ボールの落下地点への反応が遅れやすくなります。
意識して両足を使うと、体の軸が中央に保たれ、フォームが安定します。常にボールの正面に入るためのフットワークを身につけることも大切です。
リフティングが上達すると、サッカーの試合で欠かせない「止める」「蹴る」の技術が身につきます。ボールの中心を捉える感覚や、距離を判断する力が、毎日の練習を通して自然と育つためです。回数を競うだけでなく、インステップや太ももなど、いろいろな部位を使うことで実戦での応用力も伸びていきます。最初はワンバウンドから始めたり、動画でフォームを確認したりしながら、小さな成功を積み重ねていきましょう。
また、子どもは褒められると嬉しく、「もっとやってみよう」と意欲が出ます。最初は1回でも成功したら「やったね!」「かっこいいね」と褒めてあげてくださいね。
サッカーやリフティングを通じて、様々な動きを経験することは、将来の運動能力の向上にもつながります。親子やチームの仲間と声をかけ合いながら、焦らず楽しく練習を続けてみてください。