小学生向けの金融教育とは?必要な背景と家庭でできる実践法

小学生向けの金融教育とは?必要な背景と家庭でできる実践法

小学生のうちから、お金について学ぶ「金融教育」の重要性が高まっています。キャッシュレス決済が普及し、現金を直接扱う機会が減るなか、お金の正しい使い方や管理方法を身につけることがこれまで以上に大切になっているためです。

本記事では、小学生に金融教育が必要な背景や学んでおきたい知識を解説します。

なぜ今、小学生に金融教育が必要なのか

成年年齢の引き下げやキャッシュレス決済の普及などによって、お金を取り巻く環境が変化しています。まずは、「なぜ今、小学生に金融教育が必要なのか」その背景を見ていきましょう。

成年年齢引き下げによる消費者トラブルの懸念

2022年4月、民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18歳になると、保護者の同意がなくてもクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりするなど、自分の意思でさまざまな契約ができるようになります。

一方、未成年者が保護者の同意なく結んだ契約を取り消せる「未成年者取消権」の対象ではなくなります。消費者庁も、契約に関する知識や経験が不足している若者は、消費者トラブルに巻き込まれる可能性があるとして、早い段階から契約について学ぶ重要性を示しています。

小学生のうちから、お金を使う際には自分で判断する必要があることを少しずつ学んでおくことが、将来のトラブルを防ぐための土台になります。

参照:消費者庁「18歳から大人」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2022/white_paper_122.html

キャッシュレス化による金銭感覚の変化

クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、現金を使わない支払い方法が身近になっています。経済産業省によると、2025年の日本のキャッシュレス決済比率は58.0%まで上昇しました。

キャッシュレス決済は便利な一方で、現金のように財布からお金が減る様子を直接確認できません。そのため、金銭感覚を実感しにくくなります。

実際に、金融広報中央委員会の「知るぽると」でも、電子決済の浸透によって子どもが現金のやり取りを見る機会が減り、金銭感覚を養うことが以前より難しくなっていると指摘されています。

現金だけでなくキャッシュレス決済の仕組みについても家庭で話し、支払った金額は後から口座や残高から減ることを理解させることが大切です。

参照:経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」

https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260331006/20260331006.html

参照:金融広報中央委員会「知るぽると」

https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/katei_education/edu001.html

学習指導要領改訂に伴う学校での取り組み

学校教育でも、お金や消費について学ぶ機会が設けられています。小学校学習指導要領では、第5学年・第6学年の家庭科「消費生活・環境」として、次の内容が定められています。

  • 物や金銭の大切さと計画的な使い方
  • 買物の仕組みや消費者の役割
  • 身近な物の選び方・買い方
  • 売買契約の基礎

上記リストにあるように、「売買契約の基礎」に触れることも示されています。単に計算としてお金を扱うのではなく、実際の生活でどのように使い、選び、判断するかまで学ぶ内容です。

このように、学校教育でもお金の使い方や消費者としての判断力を身につける学習が取り入れられています。子どもがお金について学ぶ機会が重視されていることからも、小学生から金融教育を学ぶ必要があることがうかがえます。

参照:文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」

https://www.mext.go.jp/content/20230308-mxt_kyoiku02-100002607_001.pdf

小学生の金融教育で身につけたい知識

小学生の金融教育で身につけたい知識

小学生の金融教育では、日常生活で必要なお金の基本を理解することが大切です。次に、金融教育で身につけたい知識を紹介します。

お金の価値や働く意味についての知識

まず身につけたいのが、「お金は働くことで得られる」という基本的な考え方です。

子どもにとっては、必要なものを保護者が購入してくれることが多いため、「お金がどこから来るのか」を意識する機会は多くありません。買い物やお小遣いなどを通して、商品やサービスには価格があることや、お金は有限であることを伝えましょう。

また、「仕事の対価としてお金を受け取ること」も金融教育の基本です。仕事について話したり、身近なお店で働く人に注目したりすると、働くこととお金のつながりを理解しやすくなります。

計画的なお金の使い方に関する知識

計画的にお金を使う力も、小学生のうちから身につけたい知識の一つです。欲しいものをすべて購入するのではなく、「今必要なもの」と「欲しいもの」を分けたり、欲しいもののためにお金を残したりする経験が大切です。

例えば、お小遣いをもらった際には、以下のように使い方を一緒に考えましょう。

  • 使うお金:いつでも自由に使えるお金
  • 貯めるお金:欲しいものや目標のために貯めるお金
  • 備えるお金:もしもの時や、将来のためのお金

使える金額には限りがあるため、何にいくら使うかを自分で考えることが重要です。自分で考えて使った結果も振り返りながら、計画的にお金を管理する力を身につけていきましょう。

金銭トラブルから身を守るための知識

小学生でも、オンラインゲームの課金やインターネット通販などを通して、お金に関するトラブルに巻き込まれる可能性があります。

消費者庁も、子どもによるオンラインゲームの高額課金について注意を呼びかけています。

スマートフォンやタブレット上では現金を直接支払わないため、「お金を使っている」という感覚を持ちにくくなります。

小学生のうちから、次のような基本的なルールを伝えておきましょう。

  • 勝手に課金や買い物をしない
  • パスワードやカード情報を他人に教えない
  • 「無料」という言葉だけで判断しない
  • 困ったことがあればすぐに大人へ相談する
  • 買い物も契約の一つであることを知る

「困ったこと」については、「お金を請求された」「どうすればいいか迷った」といった、お金に関する不安が発生したときに相談するように伝えておきましょう。

また、トラブルの事例を参考に、「こんなときはどうする?」と親子で一緒に考えることで、身を守る力を育てておくことも大切です。

家庭で実践できる金融教育のアイデア

金融教育は、特別な教材を用意しなくても、普段のお小遣いや買い物を通して実践できます。ここからは、家庭で実践できる金融教育のアイデアを見ていきましょう。

お小遣い帳で収支を管理する

お小遣いを渡している場合は、お小遣い帳を使って、お金の出入りを記録する習慣をつけましょう。

まずは、「もらったお金」「使ったお金」「残っている金額」の3つを記録するだけでも十分です。

例えば、500円のお小遣いから200円のお菓子を購入した場合、「500円-200円=残り300円」と一緒に確認します。欲しいものがある場合は、「あといくら貯めれば買える?」と考えることで、計画的に貯める経験にもつながります。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)では、小学生向けの「おこづかいゲーム」を公開しています。ゲーム内で発生するさまざまな出来事をおこづかい帳に記録しながら、お金の管理や計画的に貯蓄することの大切さを学べる内容です。

参照:J-FLEC「おこづかいゲーム」

https://www.j-flec.go.jp/materials/okozukai

こういった教材を利用して、収支を管理する経験を積むのもおすすめです。

予算内に収める買い物の練習をする

普段の買い物も、金融教育の機会になります。あらかじめ使える金額を決め、その範囲で何を買うか子ども自身に考えてもらいましょう。

その際、「何をいくつ買うか」「いくらお金が残るか」といったことを一緒に考えて、サポートしてあげてください。

限られた予算のなかでやりくりする経験により、お金を上手に扱う力を育てられます。保護者が答えを決めるのではなく、子ども自身に考えてもらいましょう。

キャッシュレス決済の仕組みを一緒に学ぶ

電子マネーやコード決済などのキャッシュレス決済についても、家庭で仕組みを伝えておきましょう。

キャッシュレス決済を利用するときは、次のポイントを一緒に確認すると理解しやすくなります。

  • 使用限度額(使える金額には限りがあること)
  • 支払った金額
  • 支払い後の残高
  • どこからお金が引かれるのか
  • 利用履歴にどのように表示されるか

決済後に残高や利用履歴を一緒に確認すると、お金の動きをイメージしやすくなります。子どもが利用する場合は、プリペイド型のようにお金の減り方が見て分かりやすい方法から経験させると、より理解が深まりやすくなります。
キャッシュレス決済の仕組みを教える際は、目に見えないお金も実際のお金と同じように管理する必要があることを伝えてあげましょう。

金融教育において親が意識したいポイント

金融教育において親が意識したいポイント

家庭で金融教育を行う際は、子ども自身がお金について考えたり、使った経験を振り返ったりすることが大切です。最後に、金融教育において親が意識したいポイントを解説します。

家庭内でお金の話をタブー視しない

買い物やお小遣いなど身近な場面をきっかけに、子どもにもお金の話をしてみましょう。
「お金のことを子どもに話すのは品がない」「苦労や家庭の事情を子どもに話すものではない」など、様々な考え方や価値観があるとは思いますが、お金のルールを教えるために、話すことは最初のステージになります。

もちろん、家計の収入や貯蓄額をすべて子どもに伝える必要はありません。まずは「旅行のためにみんなで節約しよう!」「ゲームのためにお金貯めてみる?」など、お金に関する身近な話題から始めてみましょう。
お金の話を自然にできる環境が整っていれば、収入や生活などリアルな情報を共有しやすくなり、お金に関する教育もしやすくなります。

無駄遣いなどの失敗を学びの機会にする

子どもがお小遣いをすぐに使い切ったり、買ったものを後から「いらなかった」と後悔したりすることもあるでしょう。そのような経験も、お金の使い方を学ぶ機会になります。すぐに追加でお金を渡したり、使い方を否定したりするのではなく、一緒に振り返ることが大切です。

例えば、欲しいものを衝動的に買ってお金がなくなった場合は、「欲しいものができたときのために、残しておけばよかったんじゃない?」と伝えます。自分で選んだ結果を振り返ることで、次のお金の使い方を考える経験につながります。

開始時期はお金を理解できるようになってから!

金融教育を始める年齢に、一律の決まりはありません。子どもがお金に興味を持ち、「お金を払って物を買う」という仕組みを理解できるようになったタイミングから始めましょう。

最初から家計管理や投資などの難しい内容を教える必要はありません。低学年なら、お金の種類やお小遣いの使い方・貯め方など、簡単な内容から始めると理解しやすいでしょう。

まとめ

小学生の金融教育では、お金の価値や計画的な使い方、トラブルから身を守るための知識を身につけることが大切です。キャッシュレス決済が身近になるなかで、目に見えないお金の動きについても少しずつ理解していく必要があります。

正しい知識や金銭感覚を身につけないままでは、取り返しのつかないトラブルや深刻なリスクに巻き込まれてしまう危険性があります。

今回紹介したお小遣い帳や買い物などを取り入れながら、日常生活のなかで親子一緒にお金について考える機会を増やしてみてください。

関連するコラム