子どもの運動神経を伸ばしたいとき、気になるのが遺伝との関係です。生まれ持った要素が関係する部分もありますが、日々の遊びや運動経験によって育つ部分も多くあります。
本記事では、子どもの運動神経と遺伝の関係や、運動神経が伸びやすい時期、家庭でできる遊びを解説します。運動神経を伸ばすおすすめの習い事も紹介するので、運動を取り入れる際の参考にしてください。
まずは、運動神経が遺伝で決まるのか、後天的な環境や経験がどの程度影響するのかを見ていきましょう。
運動神経は、親から受け継いだ遺伝子だけで決まるものではありません。体格や筋肉のつきやすさ、関節の柔らかさなど、「体のつくり」に関して、遺伝は大きく関わります。しかし、「走る、跳ぶ、投げる、バランスを取る」といった動きには、脳からの指示を筋肉に伝える「神経系の働き」によって行われます。反応の速さや体の動かし方、力加減などの「体の使い方」は、後天的な環境や経験で育っていきます。
こういった理由から、運動神経は遺伝だけではなく、環境や経験など様々な要素が組み合わさって決まるものなのです。
子どもが過ごす環境や運動経験は、運動神経にどういった影響を与えるのでしょうか。
スポーツ庁によると、幼児期から中学生までの運動習慣は、生涯にわたる体力や運動能力の基盤になる重要な要素とされています。公園で遊ぶ、親子で体を動かす、習い事で運動しているなど、体を動かす機会が多いほど、運動神経の土台となる体の使い方を身につけやすくなります。
近年では子どもの体力は低下傾向にあり、子どもの運動習慣の形成や体力の向上が課題となっています。
運動神経を「育てられるもの」と捉えて、子どもに経験や環境を用意してあげることが大切です。

運動神経が伸びやすい時期は、”ゴールデンエイジ”と呼ばれます。ここからは、プレゴールデンエイジ・ゴールデンエイジ・ポストゴールデンエイジの3つに分けて、それぞれの特徴を見ていきましょう。
プレゴールデンエイジとは、ゴールデンエイジに入る前の3〜8歳頃の時期を指します。幼児期は神経機能の発達が著しく、6歳までに大人の約8割程度まで発達するとされています。
この時期は特定の競技を上達させることよりも、遊びのなかで「走る」「跳ぶ」「投げる」「登る」「ぶら下がる」など、多様な動きを経験することが大切です。
プレゴールデンエイジに多様な動きを経験しておくことで、次のゴールデンエイジで新しい動きやスポーツの技術を身につける土台ができます。
ゴールデンエイジは、9〜12歳頃の運動能力が大きく伸びる時期です。神経系は12歳ごろまでにほぼ100%まで発達するとされており、見た動きをまねしたり、新しい動作や技術を吸収したりする力が高まります。
プレゴールデンエイジの経験で土台ができていると、「走る」「止まる」「方向を変える」「ボールを扱う」「リズムに合わせて動く」など、複数の動きを組み合わせるスポーツへつなげられます。
また、ルールのあるスポーツに取り組むことで、周囲の状況を見ながら体を動かす力も育ちます。体の使い方だけでなく、状況に合わせて「動きを選ぶ力」も伸ばせる時期といえるでしょう。
13〜15歳頃のポストゴールデンエイジは、これまでに身につけた動きを安定させ、技術を深めていく時期です。体力や筋力が成長し、競技に必要な動きや練習にも本格的に取り組めるようになります。
この時期は、続けてきたスポーツの技術を高めたり、持久力や筋力を意識した運動を取り入れたりすることが増えていきます。基礎的な動きに加えて、正確なフォームや動きの質を意識することで競技への理解も深まります。
一方で、大きく身長が伸びるなど、体の変化が大きい時期でもあります。骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかず、同じ運動量や練習内容でも、関節などに大きな負担がかかり、痛みやケガにつながることもあります。体力や筋力を伸ばしながらも、無理のない範囲で運動を続けることが大切です。
子どもの運動神経は、特別なトレーニングだけでなく、日常の遊びのなかでも育てられます。ここからは、日常生活で子どもの運動神経を鍛える遊びを紹介します。
公園での外遊びでは、全身を使いながら様々な動きを経験できます。友だちと走ったり、遊具に登ったり、ボールを追いかけたりする中で、全身を使う動きが自然と増えていきます。
外遊びを通して、以下のような動きを経験できます。
・鬼ごっこ
走る、止まる、よける、方向を変えるといった動きが生まれます。遊びながら体をコントロールする感覚を身につけられます。
・ボール遊び
投げる、蹴る、受ける、追いかけるといった動きを繰り返し経験できます。ボールの動きを見ながら手足を動かすことで、目で見た情報に合わせて体を動かす感覚が育ちます。
・ブランコ
揺れに合わせてバランスを取ったり、姿勢を保ったりする動きを経験できます。自分の重心を感じながら、体を安定させる力にもつながります。
・ジャングルジム
登る、くぐる、手足を使って体を支えるといった動きを経験できます。次にどこへ手足をかけるか考えながら動くため、体の使い方を工夫するきっかけになります。
・鉄棒
ぶら下がる、握る、体を引き上げるといった動きを経験できます。普段の生活では使う機会が少ない腕や背中の力を使う遊びです。
外遊びで大切なのは、子どもが「もう一回やってみたい」と思えることです。上手・下手にこだわりすぎず、楽しく体を動かす時間を増やしていきましょう。
雨の日や夕方の短い時間など、外に出にくい日でも室内なら体を動かすことができます。広いスペースがなくても、身近なものを使って体幹やバランス感覚を養う遊びを取り入れましょう。
室内遊びでは、以下のような動きを経験できます。
・タオルジャンプ
床に置いたタオルをジャンプして飛び越える遊びです。跳ぶ、着地する、姿勢を立て直すといった動きを通して、体をコントロールする感覚を養います。
・片足立ち
床の上やクッションの上で、片足立ちに挑戦する遊びです。少し不安定な場所で姿勢を保つことで、バランス感覚を養います。
・動物まねっこ
カエル跳びやクマ歩きなど、動物の動きをまねする遊びです。手足で体を支えたり、姿勢を変えたりするため、全身を使う感覚が育ちます。
・新聞じゃんけん
新聞紙の上に立ち、じゃんけんに負けるたびに新聞紙を半分に折っていく遊びです。小さくなった新聞紙の上で姿勢を保つため、バランスを取りながら体を動かす練習になります。
・まねっこ遊び
親や友達の動きを見て、同じように体を動かす遊びです。相手の動きを見て反応する力や、体の動かし方を模倣する力を育てるきっかけになります。
室内で遊ぶときは、安全に動けるスペースを確保することが大切です。家具の角や床の滑りやすさに注意しながら、子どもが安心して体を動かせる環境を整えましょう。

運動神経を伸ばしたい場合は、日常の遊びに加えて習い事を取り入れるのも一つの方法です。ここからは、運動神経を伸ばすおすすめの習い事を紹介します。
スイミングは、水の中で全身を動かす習い事です。水中では浮力があるため、陸上の運動とは違う感覚で体を動かせます。走る・跳ぶといった運動が苦手な子どもでも取り組みやすく、楽しみながら運動習慣を作りやすい点が魅力です。腕や足をバランスよく動かすため、体力づくりだけでなく姿勢や呼吸の使い方を身につけるきっかけにもなります。
体操教室では、マット運動や跳び箱、鉄棒などを通して、様々な体の動かし方を経験できます。基礎的な運動を幅広く経験できるため、他のスポーツに挑戦するときの土台づくりにも役立ちます。できることが少しずつ増えていくので、子どもが達成感を味わいやすい習い事の一つです。
ダンスは、音楽に合わせて全身を動かす中で、体の使い方だけでなくリズム感や表現力を育む習い事です。振り付けを覚えるなかで、見る、まねる、動きを組み合わせるといった経験ができます。楽しみながら続けやすいため、運動に前向きな気持ちを持つきっかけにもなるでしょう。
サッカーは、走る、蹴る、止まる、方向を変えるなど、多様な動きを組み合わせて行うスポーツです。ボールを追いかけることで体力が養われ、ゴールに向かってシュートを決める瞬発力を育てるきっかけになります。また、周りを見て動く力や、チームで協力する経験を積める点も特徴です。友達と一緒に楽しみながら体を動かしたい子どもにも向いています。
子どもの運動神経を伸ばすには、運動を楽しいと感じられる環境づくりが欠かせません。最後に、保護者の声かけや関わり方など、家庭でできる親のサポートを解説します。
子どもが運動に前向きになるためには、できた・できなかったという結果に注目しすぎないことが大切です。うまくできたかどうかよりも、挑戦したことや楽しんで体を動かしたことを認めることで、運動への安心感が育ちます。
例えば、「前より遠くまで投げられたね」「最後まで走れたね」など、子ども自身の成長に目を向けた声かけを意識してみましょう。他の子と比べず、その子なりの変化を見つけることで、運動に対する自信につながります。
習い事を選ぶ際は上達の早さだけでなく、子どもが楽しく通えるかどうかを確認することが大切です。体験レッスンなどを活用しながら、雰囲気や先生との相性、通いやすさも含めて検討しましょう。
子どもに運動をしてほしいときは、親も一緒に体を動かして遊ぶのがおすすめです。公園での追いかけっこやボールの投げ合いなど、子どもにとって楽しい運動経験になります。
親子で一緒に遊ぶことで、子どもは安心して新しい動きにも挑戦しやすくなります。特別な道具や広い場所を用意しなくても、散歩中に少し早歩きをする、階段を使う、家でストレッチをするなど、日常の中で体を動かす機会を作りましょう。
大切なのは、運動を「やらせるもの」ではなく、親子で楽しめる時間として取り入れることです。親が楽しそうに関わることで、自然と体を動かすことに前向きになります。
子どもの運動神経は、遺伝だけで決まるものではありません。幼少期から走る、跳ぶ、投げる、登るなど多様な動きで身につけられる「体の使い方」も重要な要素になります。
運動神経を伸ばすには、日常の遊びや習い事を通して楽しく体を動かすことが大切です。公園遊びや室内遊び、スイミング、体操教室、ダンス、サッカーなど、子どもの興味に合った方法を取り入れてみましょう。
本記事では、子どもの運動神経と遺伝の関係や、運動神経を伸ばすための時期や方法について解説しました。できる・できないにこだわりすぎず、お子さんが「体を動かすのって楽しい」と感じられる環境を作ることから始めてみてください。