非認知能力とは?子どもの将来を拓く力の育て方

「非認知能力という言葉を聞いたことがあるけれど、どのような能力を指すのだろう」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
テストの点数や成績などの学力も大切ですが、それだけでは社会を生き抜くのが難しい時代になりました。自己肯定感をはじめとした非認知能力は、人生を豊かにする土台となる力として世界中から注目されています。
この記事では、非認知能力の基礎知識やメリット、家庭で実践できる非認知能力の育て方、親が意識すべきことを紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
非認知能力の基礎知識
はじめに、非認知能力の定義と代表的な例、注目されている理由を紹介します。
非認知能力の定義
非認知能力は、知能指数(IQ)や学力テストなどの数値で測れる「認知能力」とは対照的な、社会で生きるための内面的な力のことです。わかりやすい例だと「コミュニケーション能力」や「協調性」あたりが該当します。学習面だけでなく、社会に出てからの成功や人生の幸福度にも深く関わっていると考えられています。
経済協力開発機構(OECD)は「非認知能力は社会情動的スキルである」と定義し、質の良い教育を受けることで後天的に伸ばすことができるスキルと位置づけています。2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の研究で、特に幼児期に非認知能力を育むことが、将来の学歴や収入に長期的な良い影響を与えると科学的に示されたことで、世界的に重要視されるようになりました。
代表的な非認知能力の例
非認知能力にはさまざまな種類があります。
- 自己肯定感:良いところも悪いところもを含めて、ありのままの自分を認められる力
- 主体性:自分で考えて行動する力
- 自制心:先を見越して考え、自分の言動をコントロールする力
- グリッド(やりぬく力):困難な状況でも最後までやり抜き、適応する力
- レジリエンス(回復力):失敗をしても立ち直る力
- 好奇心:さまざまなことに興味を持つ力
- 共感力:相手の気持ちを理解し、寄り添う力
- 協調性:自分の意見を伝えながらも、周囲の人の意見を受け入れて物事を進められる力
自己肯定感が土台となったうえで、主体性や自制心などの「対自分」、共感性や協調性などの「対他者」の力が育っていきます。非認知能力を育みながら多くの経験をすることは子どもの自信につながり、さらに成長できる好循環が生まれます。
なぜ今、非認知能力が注目されるのか
非認知能力が注目されるきっかけを作ったのは、前述のジェームズ・ヘックマン教授による「ペリー就学前プロジェクト」の追跡調査です。経済的に恵まれていないアフリカ系アメリカ人の子どもに行われ、以下のグループに分類し、調査しました。
・教育を受けないグループ
・教育を受けるグループ
教育を受けるグループでは就学前にアクティブ・ラーニング(子ども達が主体となる学び方)や家庭での親子関係について教育がなされています。
40年にわたる追跡調査の結果、教育を受けたグループの子ども達は成人後に学歴や収入、持ち家率が高く、逮捕率も低いという結果が出ています。ただし、学力などの認知能力には大きな差が見られなかったため、「非認知能力の向上により子ども達が豊かな生活を送れている」ということが示された研究結果になりました。
加えて、昨今はAIの進化やグローバル化、新型コロナウイルス流行による生活様式の変化など、社会の急激な変化があります。これからの社会では、知識の暗記や計算などの認知能力の一部がAIに代替される可能性が高く、予想できない社会の変化に対応していく力が必要です。そのため、創造性やコミュニケーション能力などの非認知能力が重要視されるようになっています。
非認知能力のメリット
非認知能力を身に着けることの代表的なメリットを3つ紹介します。
学業成績の向上(粘り強さや自制心)
非認知能力を身に着けるメリットの1つは、学業成績の向上です。特に、粘り強さは難しい問題に直面しても、すぐにあきらめずに取り組み続けることにつながり、自制心は目標達成のために学習計画を立ててコツコツと努力を続けられます。
他にも、さまざまなことに興味を持って「知りたい」と思う気持ちを持つことで、勉強を楽しむことができ、結果的に学業成績の向上につながります。
ストレスへの対処
非認知能力が身についていると、困難やストレスにも心が折れずに対処できます。このような力は「レジリエンス」とも呼ばれ、耐えるだけでなく、適応して成長できる力であることもポイントです。
例えば、テストで思うような点が取れなかったかったときに「次はどうすればうまくいくか」と前向きに考え「毎日30分は勉強してみよう」などと必要な行動を実行できます。
生きていくうえで、壁にぶつかることや失敗はつきものです。非認知能力を育むことで、子どもが困難を乗り越えられる力になります。
コミュニケーション能力の向上
他者と円滑な人間関係を築くための、コミュニケーション能力の向上も期待できます。相手の気持ちを察する共感性と、自分の意見を伝えながら相手の意見も尊重する協調性は、園や学校での生活はもちろん、仕事をするうえでも重要になるスキルです。
コミュニケーション能力が高い子どもは、自分の気持ちを適切に表現し、相手の立場を想像して行動できるので、周囲から信頼されやすくなります。
家庭で実践できる非認知能力の育て方

ここからは家庭で実践できる、子どもの非認知能力を育む方法を5つ紹介します。
プロセスを褒める
子どもを褒めるときには、結果だけでなく努力の過程(プロセス)を褒めることが大切です。
例えば、テストで100点を取ったときには「100点が取れてすごいね!頭がいいね」と結果や才能を褒めるのではなく「あきらめずに頑張ったからだね!」と、子どもの姿勢や行動を認めましょう。結果ばかりに注目して褒めていると「良い結果でないと認めてもらえない」と、子どもが感じてしまいます。努力のプロセスは、子どもの行動そのものなので「自分を認めてもらえた」と感じ、子どもの自己肯定感に繋がります。
プロセスを褒められた子どもは、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する意欲や、困難を乗り越えようとする粘り強さを身につけます。
子ども自身に選択させる
子ども自身に選択させる機会を積極的に与えることも効果的です。自分で選択することは主体性や責任感が芽生えるため、物事を自分事として捉え、意欲的に取り組む姿勢が育まれます。
「今日読む絵本はどっちにする?」「公園と図書館、どっちに行きたい?」などの簡単な質問で大丈夫です。子どもが自分で決めた選択を親が尊重することで、子どもは安心感と自信を深めていきます。小さな成功体験の積み重ねが、将来大きな決断を下すときの土台につながります。
気持ちを言葉にすることを手伝う
子どもが自分の気持ちをうまく言葉にできないときは、親が「嬉しいね」「悲しかったね」などと代弁してみましょう。
例えば、おもちゃがうまく使えずに泣いているときに「できなくて悔しいね」と気持ちを言語化してあげることで「これは“悔しい”っていう気持ちなんだ」と認識できるようになります。経験を積み重ねていくことで、自分から気持ちを言語化して伝えられ、感情をコントロールすることにつながります。
また、相手の気持ちを理解しようとする力が育まれるため、コミュニケーション能力も高まります。
人とのコミュニケーションを増やす
共感性や協調性などの社会性を育むためには、家族以外の人との関わりが欠かせません。年齢や価値観の違うさまざまな人と関わる経験を通して、子どもは社会のルールや多様な考え方を学んでいきます。
地域のイベントに参加したり、習い事に通ったりするのも良い方法です。特に、チームで行うスポーツなどの習い事は、目標に向かって仲間と協力し、時には意見をぶつけ合うこともあります。コミュニケーションのとり方を学ぶ絶好の機会になるでしょう。
お手伝いしてもらう
食事の準備や洗濯物をたたむといった家庭でのお手伝いは、責任感や自制心、やり抜く力を育む活動です。子どもに役割を与えることで「自分は家族の役立っている」という自己肯定感が得られます。
お手伝いを頼むときには「〇時までにお願いね」と時間を区切ると、計画性や時間管理能力を養うことにもつながります。すぐにはうまくできないかもしれませんが、努力のプロセスを認め、できたときには感謝を伝えてあげましょう。
親が意識すべきこと

子どもの非認知能力を育むためには、親自身の心構えも大切なポイントです。ここからは、親が日頃から意識しておきたい3つのポイントを紹介します。
結果ではなく努力を褒める
子どもが良い結果を出したときだけでなく、うまくいかなかったときも努力や挑戦したこと自体を認め、褒めてあげましょう。
結果ばかりを評価されていると「良い結果を出さない自分には価値がない」と感じ、失敗が怖くて挑戦できなくなる可能性があります。努力したことを評価することで、子どもの中に「結果がどうであれ、がんばること自体が良いこと」という価値観を育み、自己肯定感の安定につながります。
失敗を否定しない
子どもが何かを失敗したときは否定しないようにしましょう。親が失敗に対して寛容であれば、子どもは失敗を恐れずに再度挑戦できます。
例えば、子どもが牛乳をこぼしてしまったときは感情的に叱るのではなく「まずはこぼした牛乳を雑巾で拭こう」と対処法を伝え、「次はどうしたらこぼさないようにできるか、一緒に考えてみようか」と声をかけてみましょう。親が子どもの失敗を否定しないことで「失敗しても大丈夫なんだ」という安心感を与え、自分で考えて問題を解決しようとする力を育みます。
多くの体験ができる環境を用意してあげる
子どもが多くの体験ができる環境を用意することも親の役割です。子どもは新しい物事に触れる体験を通して、自分の好きなことや苦手なことを知り、世界を広げていきます。
キャンプなどの自然の中での活動、美術や音楽鑑賞、新しい習い事を始めるなど、子どもが興味を示したものにはできる限り応えてあげましょう。さまざまな経験は子どもの好奇心を満たし、主体的な行動につながります。
まとめ
非認知能力は特別な訓練で身につくものではなく、日々の生活のなかで充分に身に着けられます。特に、結果ではなく努力のプロセスを認めることは、非認知能力の基礎となる子どもの自己肯定感を育みます。子どもの存在そのものを認め、安心して自分らしくいられるように接してあげましょう。
また、子どもの興味があることに取り組める環境を作ることも大切です。わくわくスクールでは全国の習い事教室を紹介していますので、ぜひご活用ください。