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巧緻性とは?子どもの可能性を広げる器用さの重要性

巧緻性の基本

「うちの子、少し不器用かも?」「指先を使う遊びが苦手みたい」

子育てをしていると、このように感じることがあるかもしれません。その器用さに関わるのが「巧緻性(こうちせい)」という能力です。

巧緻性は「手先や指先を上手に使う力」のことを指しますが、子どもの脳の発達や学習意欲にも深く関わる大切な力です。

この記事では「巧緻性って何?」「巧緻性を伸ばすメリットは?」「どうしたら力を伸ばせるの?」と考えている人に向け、次の内容を紹介します。

  • 巧緻性の定義と重要性
  • 巧緻性を高める方法
  • 巧緻性を上手に育むためのポイント

ぜひ最後までお読みいただき、子どもとの関わり方の参考にしてくださいね。

巧緻性の基本

巧緻性の定義と、何ができる能力なのかを紹介します。

巧緻性の定義

巧緻性とは「手や指を自分の思い通りに動かす力」のことです。たとえば文字を書く、ハサミを使う、箸を使うなど、日常生活におけるさまざまな細かい動作の基盤となるスキルを指します。

また、スポーツやダンスで全身を協調させて滑らかに動かすなど、手先以外の動作も巧緻性に含まれます。脳からの指令が手指などの部位に伝わり、スムーズに連携させる能力が巧緻性と言えるでしょう。

巧緻性があると何ができるの?

巧緻性があることで指や手を使って細かい作業ができ、道具を器用に扱えます。そのため、切る・折る・貼る・積む・つまむ・結ぶなどの動作がスムーズに行えます。

巧緻性が高い子どもは、次のような場面で能力を発揮します。

  • ものづくり・遊びが得意になる:指先を思い通りに動かせるので、自分のアイディアを形にしやすい
  • 身の回りのことができるようになる:生活に必要な動作を習得し、自立心が育まれる
  • 学習の基礎が身につく:鉛筆を正しく持ち、文字や図形を正確に書ける

このような場面を通して達成感を感じて自信を持つことで、意欲的な活動につながります。

なぜ巧緻性が重要なのか

巧緻性は、なぜ子どもの成長にとって重要なのでしょうか。脳の発達や日常生活、学習などの面から紹介します。

脳の発達と巧緻性の関係

手は「第2の脳」と呼ばれているほど、脳と密接に結びついています。指先には多くの神経が集中しているので、手先を動かすことで脳の広範囲にわたる領域を刺激し、活性化させることが科学的にも分かっています。そのため認知能力が向上し、集中力・記憶力・思考力・判断力の向上につながります。

また、脳の情動制御に関わる領域にも影響を与えることが示唆されており、情動(喜び、怒り、恐怖、不安など)の抑制効果が期待できます。これによりストレスを軽減し、心を落ち着かせる効果があるとされています。

日常生活における巧緻性の影響

日常生活で巧緻性が必要な場面には、次のようなものがあります。

  • 食事:食具の使用、つかみ食べ、配膳など
  • 着替え:洋服に袖を通す、ボタンを留める、靴紐を結ぶなど
  • 遊び:積み木、折り紙、塗り絵など

このほかにも、歯磨きや手洗い、物を拾う、ドアノブを回すなど、多くの場面で巧緻性が必要です。動作がスムーズに行えることで自信がつき「自分でやってみよう」という意欲や自立につながります。逆に、手先が不器用で身の回りのことがうまくできないと、消極的になってしまう可能性も考えられます。

学習能力への効果

巧緻性が高いと、繰り返しの作業を嫌がらない傾向があります。漢字練習・計算問題などにもストレスなく取り組めるので基礎学習がしっかり身につき、学習効率が上がります。楽しく、スムーズに学習できることで、学習意欲も向上します。

また、広島大学の浅川淳司氏・杉村伸一郎氏の研究論文「幼児における手指の巧緻性と計算能力の関係」によると、巧緻性の向上と計算能力の向上は強いつながりがあるとされています。論理的思考が強くなることで、数学の問題にも積極的に取り組めることが期待できます。

集中力・想像力の向上

折り紙やビーズ遊びなどの細かい作業をするときには、よく観察しながら指先に神経を集中させることが必要です。夢中になる時間を通して、自然に高い集中力を養えます。

手先を思い通りに動かせることで、自分の頭の中のイメージを形にする力が身につきます。実際に完成した作品を見て、さらにイメージが広がることで想像力を向上させ、より細部までこだわった表現ができるようになります。

小学校受験でチェックされることもある

一部の私立・国立小学校では入学試験で巧緻性の課題を取り入れています。このことから、学習や活動の基礎となる重要な能力であると認識されていることがうかがえます。

巧緻性課題は具体的に次のようなものがあります。

  • ペットボトル蓋の開閉
  • 靴下・シャツ・ズボンのたたみ⇒風呂敷包み
  • 箸つかみ 豆3種⇒小豆・大豆・インゲン豆各4個
  • 折り紙を6等分・8等分・9等分にする
  • バケツで雑巾すすぐ・絞る⇒机上雑巾かけ⇒再度すすぐ⇒干す

(引用:巧緻性課題|一般社団法人 小学校受験協会

このように、日常での遊びや家事の手伝いなどに関わる課題が多いです。小学校受験を見据えている場合は、意識的に取り入れてみると良いでしょう。

巧緻性を高める方法

巧緻性を高める方法

巧緻性を高める方法はいろいろありますが、特別なおもちゃや教材を用意しなくても可能です。この章では家庭で手軽に取り組める遊びとトレーニング、年齢別におすすめの方法を紹介します。

家庭で手軽に取り組める遊びとトレーニング

  • 手遊び・じゃんけん遊び

歌に合わせて手や指を動かして振り付けをする遊びです。幼児期以降の子どもであれば、指相撲やじゃんけんも取り入れると、ゲーム感覚で楽しみながら勝ち負けの概念も学べますよ。道具がいらないので、外出先などでも手軽に楽しめる方法です。

  • 指回し体操

小学生以降には指回し体操もおすすめです。医師で速読法・能力開発法を指導するSRS研究所長の栗田昌裕博士が開発した、人間の運動系や自律神経系の能力を高める体操で、効果の高さから受験業界で注目されています。

体操の方法は、以下のとおりです。

『まず、半球を包み込む感覚で両手の指先を互いにくっつけ、ふっくらとした円天井をつくります。 その状態で、親指から、互いの指がぶつからないようにくるくると回します。 回す方向は時計回りと反時計回り、交互に同じ回数だけ行います。最低でも各指20回、秒数で数えるなら30秒は回してください。』

(引用:受験の世界で注目! “指回し体操” が脳をフル稼働させる。速読にも効果が。 : STUDY HACKER(スタディーハッカー)

小学生低学年には少し難しいですが、練習次第で習得ができます。スキマ時間に取り組めるので、ぜひ挑戦してみてください。

  • 折り紙

折り紙をきれいに折るためには集中して紙を合わせる必要があるので、巧緻性と集中力が高まります。用意するものも少なく、発達段階に応じて挑戦する作品の難易度を選べるので、取り組みやすい遊びの一つです。

  • 塗り絵

折り紙と同様、発達段階に応じて道具や塗り絵の難易度を調整できます。細かい絵柄のものに取り組むと、手先をより細かく動かすので高い効果が期待できます。

  • シール貼り

シールを貼るには「つまむ・はがす・貼る」の一連の動作が必要で、指を細かく使い分けます。シワにならないようにきれいに貼るには手の動かし方をコントロールする必要もあるので、より巧緻性が育まれますよ。

  • ハサミ

ハサミで切るときには、親指と他の指をバラバラに動かします。さらに、ハサミを持たない方の手は紙を持ち、曲線を切るときは紙を動かして調整が必要なため、両手を協調させて使う練習になります。

  • 工作

はさみやのり、テープ、ペンなど複数の道具を使い、切る・貼る・折る・描く・組み立てるなどの作業を自分で考えて行います。道具や素材それぞれに合わせて指先の使い方や力加減が必要なため、総合的な巧緻性のトレーニングになりますよ。

  • 家事の手伝い

先述した、小学校受験でチェックされることがある巧緻性課題では、家事などの日常生活の動作も多く含まれていました。洗濯物たたみ、掃除、食事の用意などの手伝いは、細かな手作業が数多くあります。子どもの自立や生活力アップにもつながり、コミュニケーションをとりながら進めることで、言葉や社会性も育ちます。

年齢別の巧緻性を高める活動

年齢別の手指の発達と、巧緻性を高めるおすすめの活動を表にまとめました。子どもの発達には個人差があるため、年齢はあくまで目安です。お子さんの興味や「できた!」という達成感を大切に、遊びを選んであげてくださいね。

年齢手指の操作おすすめの活動
0~1歳頃握る・つかむ・つまむ・積む・すくう・ラトルや歯固めなどを握る・ボーロなどの小さいおやつを食べる・スプーンやフォークを使って食べる・積み木遊び・砂場遊び
2~4歳頃たたく・はがす・留める・ひねる・楽器遊び(木琴など)・ブロック遊び・マグネット遊び・ボタン留め・洗濯ばさみ・蓋の開け閉め
3~6歳頃道具を使う・ハサミ・工作・ビーズ遊び・簡単な料理の手伝い
小学生以降より細かい作業が可能になる・編み物や縫い物・料理などの家事・パソコンでタイピング・楽器の演奏

巧緻性を高めるために特別な教材などは不要ですが、子どもの興味に応じて習い事をすることもおすすめです。巧緻性のほかにも、コミュニケーション力や集中力、体力など、さまざまな能力の向上が期待できますよ。わくわくスクール では、全国の習い事スクールを紹介していますので、ぜひご覧ください。

巧緻性を上手に育てるポイント

巧緻性を上手に育てるために、親が知っておきたいポイントを紹介します。

親がお手本を見せる

いきなり「やってごらん」と伝えるのではなく、お手本を見せてあげましょう。子どももお手本を見ることでイメージがつくので、興味がわいたり挑戦しようとしたりする気持ちを育めます。ゆっくりと「こうやってやるんだよ」と伝えることで理解しやすくなるので、子どもの理解力に合わせて丁寧に見せてあげると良いでしょう。

子どもの意欲を引き出すコミュニケーション

「ダメ」「違う」などの否定的な言葉は、子どもの挑戦する意欲を削いでしまいます。たとえ上手にできなくても、まずは「やってみようとしたこと」を褒めましょう。「ここまでできたね!」「次はこうしてみたらどう?」など、前向きな言葉で励まし、子どものやる気を引き出すことが重要です。

また、完成した作品に対して「上手にできたね」と結果だけを褒めるのではなく「この部分の色使いが素敵だね」「細かいところまで丁寧に作れたね」と、プロセスを具体的に褒めることも大切です。プロセスの評価により挑戦したことに意義を感じるため、子どもの自己肯定感が高まります。

遊びを通して手を使うようにする

巧緻性を高めるための活動は勉強やトレーニングではなく、子どもが「楽しい」と感じる遊びの中で、自然と指先を使う機会を増やしていくことが理想です。

子どもが何に興味を持っているかをよく観察し、興味に合わせて遊びを提案してみましょう。親も一緒に楽しむ姿勢を見せると、より一層遊びに夢中になるはずです。

まとめ

手先の器用であることを指す巧緻性は、子どもの脳の発達を促し、学習意欲・自己肯定感・創造力を育む「生きる力」の土台となる能力です。特別な教材を用意しなくても日常の遊びや関わりの中に、子どもの可能性を広げる鍵が隠されています。焦らず、比べず、子どものペースを大切にしながら、親子で一緒に指先を使う経験をたくさん積んでいきましょう。

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