近年はスマートフォンなどのデジタル機器が生活に定着し、SNS上での短い文章のやりとりや、娯楽・情報収集として動画を視聴する機会が増えています。手軽に情報を得られる選択肢が増えた一方で、長い文章に触れる機会は、意識してつくらないと減少しがちです。その結果、「読解力」を育てるために、どうすればいいかわからない保護者の方も少なくありません。
この記事では、読解力が低下する背景や、鍛えるメリット、家庭でできるトレーニング方法を紹介します。
15歳を対象とした国際学力調査「PISA 2025」では、日本の読解力は国際的に高い水準を保っているものの、前回の2022年調査から平均得点が下がりました。
この結果だけで、他の学年を含む子どもの読解力が低下しているとは言い切れませんが、改めて考えるきっかけになる結果といえるでしょう。
ここからは、まとまった文章に触れる時間が少なくなりやすい近年の生活環境を整理します。
【参照】文部科学省「PISA2025のポイント」
こども家庭庁の「令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書 」によると、スマートフォンを利用していて「自分専用のものを使っている」と答えた割合は、小学生が 74.9%、中学生が 95.4%、高校生が 99.1%と非常に高く、子どもにとって身近な存在となっています。
スマートフォンでは、動画やゲームなどを楽しめます。便利な反面、利用するうちに、勉強や読書が後回しになることもあります。
そのため、自由な時間がスマートフォンや動画の視聴に費やされるようになり、文章に向き合う機会が減少していることが、読解力低下の背景にあります。
SNSのメッセージやショート動画など、短時間で情報を得られるツールが身近になっています。こうした短い文章や動画は、必要な情報を素早く得られる点が便利です。
しかし、文章全体の意味をしっかりと理解する「読解力」を育むためには、これとは異なるプロセスが必要です。 「文章と文章のつながりを考える」、「登場人物の気持ちを想像する」、「原因と結果を結びつけて意味を組み立てる」など、さまざまな読み方を求められます。
前述した通り、文章を注意深く読み取る機会は減少傾向にあります。
そんな環境の中でも「動画で興味を持ったテーマを図鑑や本で調べる」など、子どもの好みを生かしながら、まとまった文章を読む機会を意識的に増やしてあげるとよいでしょう。

読解力が身につくと、文章の意味を理解できるようになるうえ、学びや日常生活のさまざまな場面で強みを発揮できるようになります。
また、書かれている内容の理由や根拠を自分で確かめながら考える力がつくため、問題解決のスキルや、意見を論理的に組み立てる力も養われます。
ここでは、読解力を育てるメリットを3つの面から見ていきましょう。
読解力が高まると、前後の流れや条件を手がかりに、「相手が何を伝えたいのか」を捉えやすくなります。学校からのお知らせや友達とのメッセージなど、日常生活のさまざまな場面で役立つ力です。
例えば、「この部屋、少し暑くない?」と言われた場合は、窓を開けたりエアコンをつけたりして「温度を下げてほしい」という意図を汲み取ることができます。
「大丈夫だよ」と言われたとき、言葉だけなら「問題ない」という意味になりますが、ケース次第では「心配をかけたくなくて、大丈夫と言っているのかな」と気遣いに気づけるかもしれません。
相手が伝えたい内容を正しく理解できれば、思い込みや読み違いによる行き違いを減らし、落ち着いてやりとりする助けにもなるでしょう。
読解力を育てることは、物事を筋道立てて考える力の土台になります。「何が起きたのか」「なぜそうなったのか」を意識して文章を読むと、バラバラだった出来事を頭の中で整理できるようになります。
このような力が身につくと、「こういう理由でこうなったんだな」と、仕組みや理由を納得しながら考えられるようになります。
上記のような理由で、文章のつながりを考える習慣は、日常の様々なシーンで役立ちます。
読解力は、国語だけでなく、算数や理科、社会など、幅広い教科の学習を支える力です。教科書や問題文から、「何を問われているか」を読み取ることができることで、「どう対応すればいいか」を判断できるようになります。
例えば、算数では計算方法が分かっていても、問題を読み違えると、正しい式を立てられません。
理科や社会でも、図や資料が示す意味を読み解く力がないと、問題を解くことはできません。
ベースとして読解力を身につけることで、はじめて問題の意味を正しく理解し、解くことができるようになります。
こういった点から、さまざまな教科の理解を深めるための土台といえるでしょう。
読解力は、読書や日常会話を通して育てられます。
ここからは、家庭で取り組みやすい、読解力を鍛えるための方法を4つ紹介します。子どもの年齢や興味、読む力に合わせて、取り入れやすい方法から試してみましょう。
読書に親しむためには、子どもが「知りたい」「読んでみたい」と思える本を選ぶことが大切です。乗り物や動物、スポーツなど、子どもの好きなテーマの本から探してみましょう。図鑑や絵本、学習マンガなども、文章に触れるきっかけになります。
本を選ぶときは、中のページを開いて次の点を確認すると、子どもに合うものを探しやすくなります。
一人で読むのが難しい場合は、保護者が読み聞かせをしたり、1文ずつ交代で読んだりする方法もあります。
また、子どもがある程度大きい場合も「もう大きいから文字だけの本にしよう」と決めつけず、興味を示したものを尊重しましょう。子どもが無理なく本に親しめる時間をつくることが大切です。
本を読んだあとに内容を話すと、出来事の順番や大切な部分を整理する練習になります。「面白かった?」「どの場面が好きだった?」「どのキャラが好き?」など、答えやすい質問から始めましょう。
もし子どもが内容を勘違いしていたり、忘れていたりしても、「そうだっけ?ちょっとそこ見てみようか」と一緒にページをめくるくらいが程よいバランスです。
一方で、感想や登場人物の気持ちは、答えが一つとは限りません。まずは子どもの考えを聞き、次に保護者が自分が感じたことを伝えることで、同じ文章から異なる捉え方ができると気づくきっかけになります。
このように話し合うことで、読んだ本の内容を理解し、相手に伝えるために言語化するトレーニングになります。
文章の中に知らない言葉があったら、意味を調べる習慣をつけましょう。語彙が増えると、より多くの文章を理解できるようになり、読み書きにおける表現の幅が広がります。
紙の辞書に限らず、電子辞書や信頼できる国語辞典のアプリなどを使ってもかまいません。
辞書に慣れていない子どもには、保護者が一緒に言葉を探し、説明や用例を読んであげましょう。物語の途中で調べると話に集中しにくい場合は、気になった言葉をメモして、読み終わってから確認することも一つの方法です。
日常会話の中で、子どもの考えや選択の理由を尋ねる方法もあります。自分の考えを言葉にしようとすることで、理由と結論をつなげて話す練習になるでしょう。
例えば、子どもが作った作品を見せてくれたときは、「この色にしたのはどうして?」「この形は何を表しているの?」と聞いてみてください。正解を求めるのではなく、子どもが考えた過程に関心を向けることが大切です。
「なんとなく」と答えることがあっても無理に理由を求めず、会話を楽しめる範囲で取り入れてみてください。

家庭での読書や会話は、読解力を育てるきっかけになります。一方で、取り組み方によっては、子どもが読書や質問を負担に感じる場合もあります。
ここでは、保護者が意識しておきたい2つの注意点を紹介します。
子どもが本を読みたがらなくても、無理に読ませるのはやめましょう。「毎日読ませる」ようなルールを決めてしまうと、読書を課題のように感じる子どももいます。
疲れているときは休む、内容が合わなければ別の本を選ぶなど、読書嫌いにならないように、強要は避けましょう。
絵だけを眺めたり、好きなページだけを読んだり、同じ本を繰り返し楽しんだりするのも読書の形です。保護者が考える読み方にこだわらず、子どもなりの楽しみ方を尊重してみてください。
質問のあとに子どもが黙っていても、すぐに正解を伝えず、少し待ってみましょう。文章を思い出したり、自分の考えに合う言葉を探したりしている場合があります。答える速さで理解度を判断しないことが大切です。
答えが想定と違うときは、すぐに否定せず、「どこを見てそう思ったの?」と尋ねます。文章に戻り、根拠を一緒に探すことで、読み違えた部分を確かめられます。考えることをつらそうにしている場合は、質問を減らしたり、その日は切り上げたりしましょう。
子どもの読解力を鍛えるには、本や文章に触れ、読んだ内容を自分の言葉で確かめる経験を重ねることが大切です。興味に合う本を読む、印象に残った場面を話す、分からない言葉を調べるなど、家庭で取り入れやすい方法から始めてみましょう。
すべてを毎日行う必要はないので、子どもの好みや気分に合わせて、無理なく続けられる形を探してみてください。
リラックスしながら、親子で楽しんで取り組める方法で読解力を育てていきましょう。