
習字の筆は、使った後の手入れ次第で長持ちするかどうかが決まります。正しく洗わないと毛先が広がったり根元が固まったりして、書き心地が悪くなることも少なくありません。子どもが使うものだからこそ、清潔で扱いやすい状態を保ちたいですよね。
本記事では、習字の筆を洗う前に知っておきたい基本ポイント・筆の種類ごとの洗い方・乾かす方法・固まった場合の対処法・長持ちさせる保管とメンテナンスのコツを解説します。筆を綺麗に保ちたい方は、ぜひ参考にしてください。
まず初めに、習字筆を洗う前に知っておきたい基本ポイントをご紹介します。実際に筆を洗う前に、用意するもの・筆の種類ごとの洗い方の違いを理解しておきましょう。
作業をスムーズに進めるために、あらかじめ必要なものを用意しておきましょう。筆を洗うために用意するものは、以下になります。
・深めの容器:根元までしっかり洗えるよう、筆全体が浸かるものを選びます。
・ぬるま湯(人肌程度): 墨をゆるめるために必要です。30〜40℃が目安です。
・きれいな水:墨を洗い終わった後、筆をすすぐために必要です。
・厚手のタオル:洗った後の水気を取るために使用します。毛を押し付けずに拭ける綿素材やマイクロファイバーなどがおすすめです。
・キッチンペーパーや使い捨ての紙:細筆の拭き取りに便利です。
・陰干し用スペース:風通しの良い場所をあらかじめ確保しておくと、洗った後の乾かし作業がスムーズです。
筆を洗う前にしっかり準備を整えておくことで、子どもと一緒に安心して取り組めます。
筆には太筆と細筆があり、毛量やコシが異なります。
太筆は毛量が多く、根元に墨が残りやすいため、もみ洗いで墨を落とし、丁寧にゆるめながら洗う必要があります。力を入れすぎると毛が広がったり、形が崩れる原因になるため注意しましょう。
細筆は毛が細く繊細なため、強くこすったり押し付けたりするとすぐに形が崩れてしまいます。そのため、水に浸すのではなく、水を含ませた紙で優しく拭き取る方法がおすすめです。
このように、筆の種類に合わせた力加減や洗い方を意識しましょう。

習字の筆は、種類によって洗い方が異なります。まずは、毛量の多い太筆の洗い方をご紹介します。
まずは、容器やボウルに人肌より少し温かい30〜40℃前後のぬるま湯を準備します。お湯の温度が高いと、筆の根元に使われている接着が弱くなってしまうため、40度を超えない程度の温度にしましょう。一方、冷水では墨がゆるみにくいため、ぬるま湯が適しています。
太筆は毛量が多く、見えない差し込み部分まで墨が入り込みます。ぬるま湯に筆先をそっと浸すことで、固まった墨が少しずつ溶け出し、筆の固さが抜けていきます。筆がカチカチに固まっている場合は、無理にほぐそうとせず、数分ほどお湯につけ置きしてみましょう。つけ置いた後は、毛先を軽く揺らして、墨が自然にゆるむのを待ちます。
毛先が柔らかくなったら、墨を落とす工程に入ります。根元から毛先の方向を意識しながら、指の腹で優しくもみ洗いしましょう。力任せに洗うと毛が広がったり裂けたりするため、円を描くように軽くほぐすイメージを持ってください。
筆の毛は見えている部分だけでなく、内部の奥深くまで植え込まれています。そのため、墨が落ちたように見えても、実際には差し込み部分に墨が残っていることがあります。墨が残ったまま使い続けると、根元が固くなったり、毛が割れたりする原因になるため、表面だけで洗い終えず、根元の墨が取れるまで地道にほぐすことが大切です。
もみ洗いが終わったら、きれいな水で墨をしっかり流します。根元に汚れが残らないように、上下の角度を変えながら十分にすすぐのがコツです。流水でも溜めた水でも問題ありませんが、溜めた水の場合は途中で水を入れ替えるとより清潔に仕上がります。
すすいだあとは、水気を軽く切ります。筆を強く握って絞る必要はありません。毛をまとめたまま、すっと水を押し出すイメージで優しく絞りましょう。
水気が取れたら、最後に穂先を整えます。指先で軽くなでて形を真っ直ぐに揃えると、美しい先端が保てます。また、筆の毛を整えるために筆櫛を使用するのもおすすめです。乾かす際は、筆先を下に向けて吊るすか、筆先が浮いた状態で横に寝かせる方法が安全です。
また、穂先の形を整えずに乾かしてしまうと、毛先が割れたりクセがついたりしやすくなります。 洗ったあとの形づくりで筆の寿命が変わるといっても過言ではないので、丁寧に整えることを意識しましょう。
細筆・小筆は毛が細く、形が崩れやすい繊細な筆のため、太筆のようにぬるま湯へ浸ける洗い方は向いていません。ここからは、細筆・小筆を傷めずに洗う方法をご紹介します。
細筆を洗う際は、水を含ませた紙で穂先をそっと拭き取る方法がおすすめです。細筆は、根元付近を軽い糊で固めて作られていることが多く、水に長くつけるとその部分がゆるんでしまうためです。半紙やキッチンペーパー、ティッシュなど、吸水性のある紙を使用します。紙に少量の水を落とし、湿り気のある部分の上で筆先を軽く寝かせるように動かします。押し付けるのではなく、紙の水分が自然に墨を吸い上げてくれるイメージで扱うと、毛への負担が少なくて済みます。
また、細筆は、使い始めは糊で固めたままの「固め筆」の状態が普通です。使用後の洗浄も、糊部分をゆるめ過ぎないために 、洗うのではなく紙で墨を取るのが基本になります。軸と穂先の境目には墨が溜まりやすいため、筆を軽く回しながらゆっくり拭き取りましょう。墨の色が薄くなり、紙につく色が薄いグレーになったら拭き取り完了の合図です。
拭き取りが終わったら、穂先を指で軽く整えましょう。毛をねじったり押しつぶしたりすると、形が崩れる原因になります。あくまで毛の向きを整える程度の、控えめな力加減が大切です。筆櫛を持っている場合は、筆の表面に優しく通すと、毛の細かな乱れが整い、乾いたあとに扱いやすくなります。
毛を整えたあとは、筆先を乾かします。(筆を乾かす方法は次の章で解説します)また、洗った後に筆を使う際は、十分に穂先が乾いているか確認してから使うこともポイントです。毛が湿ったままだとカビなどの原因になるため、注意しましょう。
洗った筆は、乾かし方次第で形が崩れたり毛が傷んだりします。まず「水気を軽く絞って形を整える方法」を確認し、次に「吊るして陰干しする方法(直射日光・ドライヤーはNG)」を覚えましょう。
洗い終わった筆は、まず 毛を傷めないように軽く手で絞り、余分な水分を取ります。その後に毛先を整え、元の形に戻すよう整形しましょう。力を入れすぎると毛が曲がるため注意が必要です。ある程度水が切れたら指で穂先を整え、使う前と同じ形に戻しましょう。この筆の整形のひと手間で、乾いたあとの穂先のまとまりが大きく変わります。根元など水気が残りやすい部分も丁寧に整えましょう。
筆は吊るして陰干しし、自然乾燥させるのが基本です。直射日光やドライヤーは毛を痛める可能性があるため避けましょう。風通しの良い陰で、穂先を下にして乾かすのが理想的です。太筆と細筆も乾かし方は同じです。筆先を上に向けて立てて乾かすと、根元に水分が溜まってカビや腐敗の原因になるため避けましょう。
風通しのよい場所で自然に乾かすのが基本ですが、早く乾かしたい場合はタオルで水気をしっかり取ったあと、弱めの送風(冷風)を当てます。短時間で乾かそうと、直射日光やドライヤーの熱風を当てるのは避けましょう。筆の毛質と接着部分にダメージを与えてしまうため、注意が必要です。

書道の筆は、使い終わったあとに墨を十分に落としきれていないと、乾いた際に毛が固まってしまうことがあります。以下より、筆が固まってしまった際の対処法をご紹介します。
固まった筆を無理にほぐそうとすると、毛が切れたり根元が傷んだりしてしまいます。まずはぬるま湯につけ直して、乾いた墨をゆるめる作業から始めましょう。
ぬるま湯につける際は、以下のポイントを確認してください。
・温度は、人肌程度(約30〜40℃)が目安
・熱湯は毛質を傷めたり、筆の接着部分を弱らせるため絶対にNG
・長時間つけっぱなしにすると毛の油分が抜けてしまうので、必要最低限の時間で
再度ぬるま湯につけて筆をふやかすことで、固まった墨が溶け出し、毛先が動きやすくなります。
ぬるま湯で筆が柔らかくなってきたら、指先で穂先を少しずつほぐしていきます。
・毛を引っ張らない
・ねじらない
・強く押し付けない
以上3つのNGに注意しつつ、元の形に戻るよう優しく扱うのがコツです。
固まり具合が強い場合は無理にほぐそうとせず、「ぬるま湯につける」→「優しくほぐす」→「墨や汚れが出たら軽くすすぐ」の工程を繰り返すことで、徐々に柔らかさが戻ります。じっくり時間をかけることで、毛先のまとまりや弾力が回復することも多いので、丁寧にケアしてみてくださいね。
筆は乾いた後の扱いで寿命が大きく変わります。最後に、筆を長持ちさせる保管とメンテナンスのコツをご紹介します。
筆が乾いたあと、穂先を整えてから保管することで長く良い状態を保てます。筆がしっかり乾いたら、指先でそっとなでるように毛先を元の形に戻しましょう。強くつまんだり無理に曲げたりせず、軽く整える程度で大丈夫です。このひと手間が、次に使う際の書き始めの滑らかさや穂先のまとまりに大きく影響します。
筆の保管で気をつけたいのは、乾いたあとでもキャップをつけないことです。一見キャップをしたほうが形が保てそうですが、内部に湿気がこもりやすく、カビや根元の劣化につながる原因になります。
筆を保管する際は、風通しの良い場所で、穂先がつぶれないように立てておくのが理想です。書道セットの中に入れておく場合でも、キャップを外し、なるべく湿度の少ない場所に置くようにすると筆が長持ちします。特に、竹軸タイプの筆は湿気に弱いため、密閉状態を避けることが大切です。
習字の筆は、お手入れ次第で見た目も書き心地も長持ちさせることができます。洗う前の準備や洗い方、乾かし方、固まってしまったときの対処法や保管の方法など、基本のポイントを押さえておくと安心です。
筆を丁寧に扱うことは、子どもにとって道具を大切にする心を育むきっかけになります。本記事でご紹介したお手入れ方法を取り入れて、筆を綺麗に保ちましょう。